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最近、インターネットでこんなつぶやきを見かけました。
そこに書かれていたのは、「昨日は、何時間 生きていましたか」という言葉でした。
調べると、34年前、昭和60年、PARCO(パルコ)のCMに使われた有名なコピーでした。
大都市圏には必ずといってよいほどある、PARCO(パルコ)。日本の最先端のファッションブランドが幾つも入っています。
“PARCO”はイタリア語で“公園”という意味。
公園に人々が集まり、ゆったりとくつろぐように、皆が楽しめる空間にしたいという思いから、PARCOと命名されたそうです。
その広告は斬新で、多くの人が行き交う駅前など、目立つ場所に掲げられ、常に時代を牽引してきました。
見る人の心をざわつかせるような、心に残るグラフィックやキャッチコピーが多いのが特徴です。
YouTubeには、そのコピーが使われた、当時のCMが残っていました。
最初にバイオリンの音色が響き、高層ビルが並ぶ、その横を流れる大きな川が映ります。
アメリカ・ニューヨーク州を流れるハドソン川です。
川には、スーツ姿のビジネスマンが1人、漂っています。
クロールで泳いでいるように見えますが、前に進む気配はありません。ただ流されている様子が淡々と映り続けます。
そこへ、突然、「昨日は、何時間 生きていましたか」と、視聴者に問いを投げて終わるのです。
意表を突く奇妙なこの問いは、閉じたフタを開けるように、複雑な思いを呼び覚まします。
「えっ?当然みんな24時間でしょ。でも、あらためて聞かれると、生きるって何だろう」
「周りに流されていた時間、つぶした時間は、死んでいた時間かも」
「本当に『生きた時間』を過ごしたのは、どれほどあっただろう」と。
このCMの原案を創り、川を漂うビジネスマンを演じたのは、ミュージシャンの内田裕也さんでした。
内田さんは、「ロックンロール!」と叫びながら破天荒な人生を泳ぎ続け、先日亡くなりました。
口癖である「ロックンロール」には、反体制文化としてのロックを日本に定着させようとした内田さんの信念と、負けじ魂が集約されているといわれます。
そのこともあわせると、CM中、懸命に泳ぐ内田さんの姿は、より深く考えさせられます。
やがて必ず死なねばならないのに、なぜ苦しくても生きねばならないのでしょうか。
CMの、水に流される様子は、世間に流され、自身の欲望に流される生き方に見えます。
そして、「昨日は、何時間 生きていましたか」という問いは、流されて生きる日常を突き破り、「やがて散る命、生きる目的に向かう時間こそ、生きたと言えるんじゃないか」と、心に響いてきます。
同じくパルコの名コピーの一つには、「死んだらどうなるのだろう。考えていたら涙が出ちゃった」というものもあります。
考えてみれば、100パーセント死なねばならない私たち、「生きたその先」こそ考えねばならないはずですが、日々の生き方に精いっぱいで、それしか考えていません。
私たちが普段忘れている、そんな大切なことを思い出させてくれるからこそ、34年たった今も、私たちを強く引き付ける名コピーなのでしょう。
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