【目次】
- 「大切な人の自殺を止めたい」と悩んでいるあなたへ。ベストな対応を知れば、大切な人の自殺を止めることができるかもしれません。
- 「今は、どうしても自殺に踏み切ることはできない」という気持ちになった実例。自殺を止める、仏教のたとえ話。
- ただ、自殺を思い止まったところで、現実の苦しみは続いていく。自殺を止めることができてからの対処が大事です。
- 自殺を止めて、病院に通ってもらうことができたら、必ず回復していきます。人生の再スタートに、人生の目的を知ってほしいと思います。
「大切な人の自殺を止めたい」と悩んでいるあなたへ。ベストな対応を知れば、大切な人の自殺を止めることができるかもしれません。
「友人や家族に『死にたい』と言う人がいて、どうすれば自殺を止めることができるのか悩んでいます……。」そんな相談を受けることがあります。あなたがいま、「大切な人の自殺を止めたい」と悩んでいるのなら、希望の光が見えるように、私の知っていることを精いっぱい伝えたい。あなたの大切な人を守りたい。そう強く思っています。
あなたは、目の前に「死にたい」と言っている友人(家族)がいる状況で、どう対処していいのか、悩んでいることと思います。自殺を止めるために、どうしたらいいかわからない。冷静でいられない。
そう思うのも当然です。「死にたい」という言葉はとても強烈で、医師やカウンセラーでも、「死にたい」と言っている人を前にすると、心が強く揺さぶられるのですから。
本当に自殺してしまったらどうしよう。自分の言葉ひとつで、相手の明暗を分けてしまったら……。なんとかして自殺を止めなきゃ。何かを伝えなきゃ。でも、どうしたら……。いろんなことが頭の中を巡って、気持ちだけが焦ってしまうと思います。
そんな状況でも、医師やカウンセラーは、冷静に、できるかぎりベストな言葉をかけ、対応します。医師やカウンセラーだからといって、心の中でも冷静なわけではありません。動揺はしているけれど、自殺を止めるベストな「対応の仕方」を知っているから、冷静に対処しているように見えるだけなのです。
「死にたい」と言っている人に、どう対応するのがベストなのか。カウンセラーの立場で、自殺を止める対応の仕方をお伝えしたいと思います。ただ、医師やカウンセラーは、何年もかけて訓練し、何度も現場での経験をしています。それでも、100パーセント完全に自殺を止めることは難しい。
なぜなら、すべてのことは因(原因)と縁(きっかけ)がそろって結果になりますが、縁(きっかけ)はたった一つではないからです。いくつもの縁がそろって、本人の動機(因)と結びついてしまうことはあります。私たちは、一つの縁(きっかけ)になるにすぎません。
だけど、一つの縁になることはできる。それは、自殺という結果を招くすべての縁がそろうことを、防ぐことになるかもしれません。
微力ではあるかもしれない。だけど無力ではありません。あなたがベストな対応を知り、大切な人の自殺を止めることができる可能性もあるのです。どうか絶望せず、相手と、自分の力を、信じてください。
「今は、どうしても自殺に踏み切ることはできない」という気持ちになった実例。自殺を止める、仏教のたとえ話。
誰かにこの自殺したい気持ちを止めてほしかった。しかしその時の家族や友人の対応は、残念ながら、死にたい気持ちを和らげてくれるものは、ほとんどありませんでした。
それも今から思えば当然のことです。私はどちらかというとしっかりしていて、世話をするほうでしたから。まさか私がこうなるなんて、親も、友達も、先生も、誰も予想していなかったようです。
だから当然、まわりの人たちは動揺しました。「あなたらしくない」と何度も言われました。そして、まわりの人たちは口々に、必死に説得し、叱咤激励し、あらゆる思いつく言葉をかけました。
でもうつ病は、性格が別人のようになってしまう病気です。脳の分泌がうまくいかなくなる病気ですから、症状が出ているときは「別人モード」です。自分では何もできない。どうしようもできない。思うようにならない。死んでしまいたい。誰か自殺したい気持ちを止めて……。
カウンセラーとしてベストな対応を知った今では、私を思って言ってくれた人には申し訳ないけれど、「死にたい気持ち」を和らげるどころか、かえって自殺念慮に拍車をかける対応も多かったのです。
そんな中、当時「今は、どうしても自殺に踏み切ることはできない」という気持ちになったエピソードがあります。それは、自殺を止める、仏教のたとえ話でした。
「あるところに、毎日、荷物を満載した重たい車を引かねばならぬ牛がいた。牛は考えた。『なぜオレは、毎日こんなに苦しまねばならぬのだろう。』『そうだ、オレを苦しませている、この車さえなければ。』
そこで牛は猛スピードで突っ走り、大きな石に勢いよく車を打ち当てた。すると車は、木っ端みじんに壊れてしまった。『これでやっと、苦しみから解放される』と、牛は安堵した。
ところが、こんな乱暴な牛はまた車を壊すだろう、と飼主はこれまでの何百倍も重い、絶対に壊せない鋼鉄製の車を造ってきた。牛は、これまでとは比較にならない苦しみから、逃れられなくなってしまった。」
お釈迦様がたとえられた「牛車」は、人間の肉体です。死んでこの肉体さえ壊せば苦しみから逃れられる、と思っている女性に、自殺して肉体を壊しても、魂はもっと苦しい世界にゆくだけなのだよ、と言われたのです。
そう考えていると「早く死んでラクになりたい」という気持ちは薄れました。「もしかしたら、生きているほうがマシなのかもしれない」と思ったからです。お釈迦様のたとえ話は、見事に私の自殺を止めたのでした。
お経には「従苦入苦 従冥入冥」という言葉があります。「苦より苦に入り、冥(やみ)より冥に入る」と読み、「今の苦しみから、未来の苦しみに入る。今の暗い心から、未来も真っ暗な世界に入っていかねばならない」という意味です。
今の苦しみを解決しないまま、自殺したとしても、未来はまた必ず苦しみになってしまう。それどころか、苦しみは何百倍にもなるかもしれない。そう思ったら、とりあえず自殺は思い止まろう、という気持ちになりました。
そして続けて仏教を聞いてみると、「今の苦しみは、生きているときに解決してこそ、死後も明るい世界に行くことができる」と言われていました。
私はなんとなく「そうかもなぁ」と思いました。「死んだ後のことはわからない。だけど、自殺して苦しみが解決するわけじゃないかもしれない」。そして「今の暗い心のままで、自殺したところで、死んだらどうなるんだろう。」「どんなに苦しくても、今のまま自殺することはできない。」そう思うようになりました。
あなたの大切な人も、きっと目の前の苦しみで頭が一杯になっていると思います。この苦しみから逃れるには、自殺しかないと思っているかもしれません。今が苦しくていっぱいいっぱいの時に、自殺したその先(死んだ後)のことまで想定している人なんていないと思います。せいぜいこの世に残された人たちのことを考えるくらいで、自分の魂が、死んだ後にどうなるのかなんて、私も仏教の話を聞いてみなければ、思いもつかないことでした。
仏教で「死んだ後の世界のことも、考えてみなさい」と言われて、急に冷静になる自分がいました。
実は未来のことを考えると冷静になれる、というのは理にかなっていて、たとえば、カッとなって暴力をふるってしまう人でも「暴力行為のその先は?」というポスターが目に入った途端、ふりあげた拳が止まるそうです。暴力行為は一瞬でも、その後に待ち受けている世界は、何年もの苦しい牢獄生活。ようやく刑務所から出てきても、暴力行為をした事実が人の噂になって、苦しい娑婆生活が続くのか……。そんなふうに、ふっと冷静な思考に切り替わり、今の感情から一歩離れることができるのです。
私は「自殺したその先は?」と言われて、死後に受けねばならないかもしれない自分の苦しみに思考が切り替わったので、今すぐ自殺したいという衝動的な感情から、離れることができました。
ただ、自殺を思い止まったところで、現在の苦しみは続いていく。自殺を止めることができてからの対処が大事です。
ただ、この仏教のたとえ話を聞いてからも、現在の苦しみはすぐには消えません。かろうじて自殺を思いとどまっても、現実の苦しみは続いていきます。自殺を止めることができてからの対処が大事です。
死にたいと思うほどになっている人は、脳の分泌がうまくいかなくなっていて、いわゆる「脳の分泌の異常状態」です。「脳の分泌の異常状態」とは、楽しいと感じる分泌は少なく、苦しいことばかりが目についてしまう、この世は絶望的だという証拠集めをしてしまう、そして死にたくなってしまう、自殺を考えてしまう、という状態です。重要で覚えておいていただきたいことは、きちんと対処すれば、必ず回復する、ということです。
「脳の分泌の異常状態」のときに、やってはいけないことは次の2つだけです。
<やってはいけないこと>
- 新たな思考の努力を要求しない。
- 余計なプレッシャーをかけない。
いろんな本を読むと、まわりの人がやってはいけないことが山ほど書いてあって、周囲の人まで疲れてしまいます。そうなっては、大切な人の自殺を止めることはできません。
大切な人を守りたいなら、この2つだけ、心がけてもらいたいと思います。とはいっても、「たった2つでいいの?具体的にはどういうことかな」と思われるかもしれないので、補足で具体例を挙げておきますね。ただ、全部覚える必要はありません。上記の2つだけ、覚えておいてもらえたら、大切な人を守る、自殺を止める適切な対処ができます。
1、新たな思考の努力を要求しない。
例)
・なんでできないの?どうしたらいいの?これからどうするの?どうしたいの?
・自分でなんとかしなよ。あれがいけなかったんじゃない?こうしたら?
・考え方を変えたら?○○をやってみたら治るかも。やってみて。
などと言わない。
2、余計なプレッシャーをかけない。
例)
・こっちがウツになりそう。いつまで休むつもり?いつになったら治るの?
・早く良くなってね。意外と元気そうだね。これくらいやってよ。
・もうできるんじゃない?みんなも迷惑してる。いつ復帰するの?
などと言わない。
この2つを周りの人が実行するだけで、本人の自然治癒力で回復していきます。
死にたい、自殺しようとしている人も、外部からのプレッシャーがなくなれば、やっと少し脳を休めることができます。それでも、本人の頭の中は、罪悪感、自分を責める言葉、絶望だ、未来に希望はない、生きていても仕方ない、死にたい……などの言葉が、壊れたCDのように、同じところが繰り返しずっと再生されている状態なので、なかなか気持ちは休まりません。
だからできるだけ、気持ちをゆるめる言葉、苦しみを認める言葉、休養をうながす言葉をかけてもらいたいと思います。
<積極的にかけてほしい言葉>
・大丈夫だよ。なにも心配することないからね。
・死にたいと思うほど、今、とても苦しいんだね。
・追い詰められてしまうくらい、苦しい状況が続いていたんだね。
・あなたのように苦しい思いをしていれば、死にたいと思う気持ちが出てくるのも、不思議ではないよ。
・あなたの気持ちは、なにもおかしくないし、間違ってもいない。
・必ず回復する。けど時間はかかるかもしれない。ゆっくり回復していったらいいんだよ。
・ゆっくり休んでね。
これだけでも、自殺を止める対処法になっており、うつ状態も緩和されるのですが、「脳の分泌の異常状態」の回復は、スーッと回復していくことはなく、良くなったり、また落ちたり、元気そうになったり、また死にたくなったり、波がありながら少しずつ回復します。
波を一つ乗り越えても、またいつ大波がやってくるかわかりません。そして、その時は自殺の危険性も高くなります。また同じことを繰り返して自殺を止めるのは、とても大変なことです。
また自殺を止める必要がないように、自殺の危険を最小限にするためには、心療内科・精神科につなげてもらいたいのです。あなたが追い詰める言葉を使わず、気持ちを緩める言葉を伝えていくと、大切な人との信頼関係をつくることができます。信頼関係ができていれば、心療内科・精神科へつなげやすくなります。
どうして心療内科・精神科につなげる必要があるの?できれば病院には行かずに済ませたい。そう思われるかもしれませんね。でも、私は心療内科・精神科につなげることを強く勧めます。
ここまでの文章では、「医師」と「カウンセラー」とは、同じように対処スキルをもった人として紹介してきましたが、実際には全く違います。
カウンセラーは、話を聞いて気持ちをゆるめることはできますが、その先の助ける手段がありません。あなたの大切な人が自殺願望が強いときに、医師は気持ちを落ち着かせる薬を処方することができます。カウンセラーには薬を処方することはできません。
また、医師に診てもらっていれば、一刻を争うときに、入院して24時間体制で見守ってもらうこともできます。カウンセラーには、自殺を止めたくても、ごくわずかな時間に話を聞くことしかできません。力に限界があるのです。ましてや、あなたがどんなに大切な人を守りたくても、今まさに死にたい人の自殺を止めるには、力に限界があることを忘れないでください。医師でなければできないことがたくさんあります。
自分のできること・できないことを自覚しておくことが重要です。医師につなげずに、自己判断をすることは危険です。ぜひ病院につなげてもらいたいのですが、「病院に行ったほうがいい」と言われることに抵抗をもつ人もいます。今でこそ、心療内科や精神科は、ハードルが低くなってきましたが、人生の落伍者のように感じる人もいます。
「死にたいと思うほど、苦しい状態なんだね。あなたのように苦しい状態にある人は、だんだん、本来の自分でなくなって、脳の分泌がうまくいかなくなっていることがあるんだって。そのときに、症状の一つとして、死にたいという気持ちが出てくる人もいるんだけれど、病院に行って検査をして、薬を飲むと回復が早くなるそうだよ。」
というように、病人扱いせず、鬼気迫る感じではなく、おだやかに伝えると、うまくいくことが多いです。
自殺を止めて、病院に通ってもらうことができたら、必ず回復していきます。人生の再スタートに、人生の目的を知ってほしいと思います。
病院にきちんと通い、薬を自己判断せずに医師の指示通りに飲んで、必要な休養をとっていけば、必ず回復していきます。死にたいと思うこともなくなり、自殺を止めるという必要もなくなります。
骨折したら、病院に行き、薬を飲み、ギプスをして無理をせずに休養しますよね。骨が元に戻るまでのギプスの期間と同じで、脳の分泌が元に戻るまで、回復期間が必要です。そして、骨折から回復してもすぐに激しい運動はせずリハビリするように、脳の分泌が元に戻ってきても、仕事や家事をバリバリやったりせず、リハビリすること。時間をかけて、段階的に社会復帰すること。そうやっていけば、「自殺を止めるには…なんて考えてた時期もあったなぁ」というくらいに、大切な人は自殺のことを考えもしなくなります。穏やかな日々がやってきます。
そうやって回復してきたら、これからの人生に目的をもち、ある意味、一度死んだつもりで、人生を再スタートしたらいいのです。
再発防止のためにも、人生に目的があることを、ぜひ知ってもらいたいと思います。とても悲しい事実なのですが、重篤な自殺企図を止めることができて生き残った人の、およそ10人に1人は、将来、既遂自殺に終わってしまうと言われます。今回、波を乗り越えることができても、自殺の再発防止の対策をしていく必要があります。
自分なりの楽しみをもつこと、生きがいを見つけること、常にアクセル全開でなくメリハリをつけること、ストレス解消法を見つけること、などなど、日ごろからできるいろいろな自殺の再発防止の対策がありますが、一番は、人生の目的を知ることではないかと思います。
人生の目的を知るというのは、幸福の本質を知り、心から喜べる人生を送る本当の幸せを知ることです。幸せにつながると思ってやったことが、不幸な結果に終わってしまった、という後悔のない人生にするにはどうすればいいのか。そしてもっと言えば、人生にはつきものである、病苦や老いの苦しみ、大切な人との離別や死別といった悲しみも乗り越えて、生きる意味がある。どんな生きる意味があるのか。その生きる意味=生きる目的、人生の目的を知ることができます。
あなたがいま守りたい、大切な人が回復して人生を再スタートさせるとき、ともに笑顔で歩めるように、まずはあなたに人生の目的を知ってほしい。そう願って、15通の手紙を書きました。
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