病気

病気

若者のオーバードーズ(OD)回復の道のりと支援方法

目次

  1. オーバードーズ(OD)をする人に共通する心理「不安」「苛立ち」
  2. オーバードーズ(OD)をする人の味方になるコツ!「状況」と「感情」を分けて「感情」を受け取る
  3. オーバードーズ(OD)潜んでいるトラウマやフラッシュバックの存在に気づく
  4. オーバードーズ(OD)への「適切な関わり」とは
  5. オーバードーズ(OD)精神論になっていませんか?環境との相性が解決のカギ
  6. 植物が少しずつ成長していくように、オーバードーズ(OD)からの回復も、ゆっくりとしたもの

はじめに

こんにちは、心理カウンセラーの月見草です。

今回はこんなお悩みについてです。

娘が薬を大量に飲んでいるようです。
親として、止めようとしますが、言うことを聞きません。
一体どうしたらよいのでしょうか。

若い人の市販薬の乱用は増えています。

2014年度までは、10代の薬物乱用のうち「市販薬」の乱用は0%でした。
それが2016年から一気に拡大し、2022年には薬物のうち65.2%が市販薬を占めています。
(出典;厚生労働省「全国の精神科医療施設における薬物依存症の治療を受けた10代の患者の『主たる薬物』の推移」)

「オーバードーズ(OD)」と言われます。

オーバードーズ(OD)=薬の過剰摂取のこと

「薬物乱用」というと、覚醒剤や大麻などの薬物を使用するイメージだと思いますが、処方薬や市販薬であっても、治療でない目的で使用したり、大量服薬したりすれば「薬物乱用」になります。

乱用されているのは一般的なかぜ薬やせき止めなどです。
麻薬や覚醒剤と似た成分がごく少量含まれており、大量服薬すると、一時的に気分が落ち着いたり、高揚したりします。

薬局で大量に購入すれば怪しまれますが、最近はネットで簡単に購入できてしまう背景があります。

市販薬といっても依存性があるので、やめたほうがいいのはもちろんですが、ただ「やめなさい」と言っても、やめるのが難しい理由があります。

若者がオーバードーズ(OD)してしまう心理と、対策方法を一緒に考えていきましょう。

オーバードーズ(OD)をする人に共通する心理「不安」「苛立ち」

オーバードーズ(OD)には、必ず「不安」や「苛立ち」があります。

うまく生きられない苛立ち
他の人と同じようにできない苛立ち
やりたいことが見つからない苛立ち
なぜ苛立っているのかも、わからない苛立ち
自分の将来がどうなるかわからない不安
学校や会社で孤独になるのではないかという不安
陰で、悪く言われているのではないかという不安
災害や事故に巻き込まれるのではないかという不安
叱られている人を見て、自分も叱られるのではないかという不安
今この不安な気持ちが、どこから来ているのか分からない不安

周囲が、つらい気持ちに寄り添おうとしても、本人さえ「なぜ苛立つのか」「なぜ不安なのか」わからないことも多いのです。

聞かれるとよけいに困って、イライラをぶつけてくることもあります。

◆もし本人が何かを話してくれたときは

もし本人が話してくれたら、それは「言語化」できている証拠です。

回復の順序は「行動化」「身体化」→「言語化」→ 回復へと進むので、
言語化できたときには、それを褒めることが大切です。

回復の順序
「行動化」「身体化」→「言語化」→ 回復

「話してくれてありがとう」と伝えましょう。
そして、言葉にしたことを決して否定せずに、受け止めてください。

いや、本人の言っていることは間違っているから、正してやらないと。

多くのやり取りの中で、こう思うこともあるでしょう。

しかしそれは、気が利いているようで、間が抜けています。
本当に今、言うべきことでしょうか。
ますます追い詰めることにならないでしょうか。

せっかく「言語化」に進んだのに、「やっぱり話しても無駄だ」と感じてしまったら、「行動化」「身体化」に戻ってしまいます。

「言語化しても無駄だ」→ 「行動化」「身体化」→ 悪化

つい「正しいことを理解させねば!」と思うかもしれません。
ですが、大切なことは「気持ちを受け取る」ことです。

「あなたの気持ち、受け取ったよ」ということを、言葉でしっかり伝えましょう。

苦しんでいる人にとって必要なのは「正しさ」ではなく「味方」です。

オーバードーズ(OD)をする人の味方になるコツ!「状況」と「感情」を分けて「感情」を受け取る

言葉は「状況の説明」「感情」によって成り立っています。

「状況の説明」……人によって言うことが異なる。

同じ状況を見ているようで、人それぞれ、見えているものが違います。
よって「事実」ではないこともあるのです。

しかし「感情」は、誰が何と言おうと、本人の感じていることが「事実」です。

「感情」……本人の感じていることが「事実」

話を聞いているあなたが「状況」と「感情」を分けて、「感情」を受け取りましょう。

「状況」と「感情」を分けて、「感情」を受け取る。

話を聞く上で、「状況」は事実と異なっていても、間違っていてもいい。
事件の事情聴取や、仕事ではないのですから。

家族や大切な人とのコミュニケーションにおいて、多くの場合、言葉は「気持ち」を伝えるための手段です。

大切なのは、「気持ち」を受け取めてくれる「味方」になることです。

オーバードーズ(OD)こんな落とし穴にご注意!話の聞き方

「状況」を説明しているように見えて、実際は、本人が「つらい」「苦しい」ということを表現しているだけのことがよくあります。

言葉は「気持ち」を伝えるための手段なのだけれど、そのやり方がわからない。
とくに若者にはよくあることです。

その結果、話し手が「伝えたいこと」と、聞き手に「伝わったこと」が、異なってしまいます。

本人から「気持ち」を表現する言葉が出てこないとき、それは翻訳しなければなりません。

「状況説明」を「気持ち」に翻訳する。

「状況」を表す言葉に囚われず、本人の「気持ち」を受け取りましょう。

難しく感じるかもしれませんが、「気持ち」に焦点を当てようと思うだけで、「見方が変わり・味方になれる」のです。

例1)おまえのせいでこうなった
 →(翻訳後)もっとうまくやりたいのにできなくてつらい

「そうか、ごめんね。つらかったよね」

例2)死にたい
 →(翻訳後)今がものすごくつらい

「ものすごくつらいんだね。でも死んでも苦しみはなくならない。どうすれば少しでも楽になるか、一緒に考えよう」

例3)放っておいてくれ
 →(翻訳後)すごく傷ついてる

「うまく聞いてあげられなくてごめんね。でも、あなたの味方だから」

例4)おまえは昔から○○だ
 →(翻訳後)嫌だった

「嫌な思いをさせてごめん」

例5)どうせ私なんか
 →(翻訳後)苦しい。助けて!

「苦しいよね。一緒に考えよう」

オーバードーズ(OD)潜んでいるトラウマやフラッシュバックの存在に気づく

オーバードーズ(OD)には、トラウマやフラッシュバックが潜んでいる場合があります。

叱責や孤独、喪失、恐怖など、「自分でコントロールできなかった」と感じた経験は、トラウマになることがあります。
脳は「コントロールできないことは危険だから覚えておかねば」と、何度もフラッシュバックを起こします。

すでに危険から離れていても、脳の中では何度も何度も繰り返されているので、その危険を毎日体験し味わいます。
そのたびに、「コントロールできない」感覚に陥り、苦しみます。

トラウマ・フラッシュバック……「過去の苦しかった出来事」ではなく、毎日毎日「今まさに苦しんでいる」状態

オーバードーズ(OD)によって、一時的に、その苦痛を緩和できるから飲むのです。

しかし、トラウマやフラッシュバックを治すための薬ではないため、やがてごまかしていた苦痛が復活します。
薬は同量では効かなくなってくるので、どんどん量が増えていきます。

・内臓に負担をかけて機能低下
・意識障害や呼吸困難

こうなると、もっと大きな苦痛へと膨らんでしまいます。

ですから、放っておいていいことではなく、薬を止めるように促す「適切な関わり」をする必要があります。

「不適切な関わり」をすると、ストレスからますます薬を増やすことがありますので、「適切なかかわり」を心がけましょう。

「適切な関わり」を始めるのに、遅すぎるということはありません。
気がついたときから、やり直すことができます。

オーバードーズ(OD)への「適切な関わり」とは

薬を飲むと、一時的にでも苦痛が緩和される。

これが今の状況です。
もし、いきなり薬を止めたら、苦痛だけが残ってしまいます。

「とにかく薬はやめなさい」と言うのは、あまりにも酷です。

薬の量は徐々に減らし、ほかのことで苦痛を緩和できる方法を一緒に考えましょう。たとえば……

バッチフラワーレメディ

バッチフラワーレメディは、自然に咲く植物の力を凝縮したエッセンスです。
1936年、イギリス人の医師・細菌学者であったエドワード・バッチ博士は、特定の感情や精神状態をなだめるのに特定の草花が有効であることを体系付け、38種類のフラワーレメディを完成させました。

アロマオイル・練り香水・ハンドクリーム

カレーの臭いがすると、よだれが出るように、
レモンの香りを嗅ぐと、スッキリした気分になるように、
「この香りがあると、こんな気持ちになれる」
という香りを1つ用意しましょう。

いい気分の時、穏やかなときに、何度もその香りを嗅いでおくといいですよ。

テーマソング

思い出の曲を聞くと、20年も昔のことが一瞬で思い出される。
そんな経験はありませんか?

気分が切り替わる曲を、いくつかスマホに入れておきましょう。
元気なときに、何度も聞いた曲がオススメです。

触り心地の良いぬいぐるみ

むにゅっとした肉球、ふわふわとしたぬいぐるみ。
「味方がいる」と思えるだけで、穏やかな気持ちになれるでしょう。
幸せな思い出のキーホルダーなどがいいですね。

アンカリングの発火

香り、音楽、ぬいぐるみを対策として挙げましたが、これらは心理学における「アンカリングの発火」という手法です。

アンカリングとは……(特定の気分を)思い起こさせてくれる意味づけ
アンカリングの発火とは……特定の気分を思い起こすこと。

アンカリングがうまくいくと、自分の好きな時にアンカリングの発火ができるようになります。

注意点が2つあります。

1、「これが無いと不安になってしまう」という心境になる。

アンカリングは、あくまで気分の切り替えのきっかけづくりです。
なくても大丈夫。思い出すだけで効果があります。

2、逆効果のアンカリングをしてしまう。

あまり思い入れのない香りや音楽を新たに使おうとして、「不安なときにこれさえあれば…」と使い続けていると、安心感や元気よりも、「この香りを嗅ぐときはいつも不安だなぁ」というアンカリング(意味づけ)がなされてしまいます。

元気なときに聴く好きな曲。
安全な場所で嗅ぐいい香り。
普段から「いい気分」を思い起こすものを使う必要があります。

※関連記事はこちら


オーバードーズ(OD)精神論になっていませんか?環境との相性が解決のカギ

オーバードーズ(OD)を解決しようとするとき、精神論になっていませんか?

精神論とは……その子の考え方・気持ちの問題で、本人だけで解決できると思うこと。

実際は「その子の問題」ではなく、「その子と環境との相性の問題」であることが多いです。

「不適切な関わり」とは
・その子だけを責める
・ODを止めろと言うだけ
・本人だけで何とかさせようとする

「その子の問題(精神論)」だと勘違いしている。
「適切な関わり」とは

「その子と環境の相性の問題」だと考える。

環境調整できないかを考えてみましょう。

いや、環境なんてそう簡単に変えられないよ。

そう思われるかもしれませんが、その子のことを本気で考え、根気強く探せば、できることは必ず見つかります。

環境(人的な要因)

・学校や職場の環境が合っていないのでは。
・友達のストレスのはけ口にされてしまっていないか。
・家族のストレスのはけ口になっていなかったか。

環境が少しでも変われば、しばらくして、オーバードーズ(OD)が減ってくることがあります。
具体的に、環境へのアプローチ方法を考えましょう。

例)学校を変える。フリースクールや定時制など。
例)家族の会に参加してみる。
例)一緒にできる趣味や楽しみを探す。

環境(物理的な要因)……勉強や仕事の量が多すぎる

ほかの子は普通にできるのに……

そう思われるかもしれませんが、親には欲目もあり「これくらいできるでしょ」と押し付けてしまっているかもしれません。
本人にとっては処理しきれずにコントロール感を失っている可能性があります。
その場合は物理的な量を減らしましょう。

勉強ができる子なので、本人に任せていたのですが……

はたから見れば、勉強ができる子や、仕事をこなしている人でも、持ち味である真面目さから、プレッシャーを感じやすく、ひといちばい苦痛に感じていることがあります。

その場合は、たとえできることであっても、本人が焦りを感じない量に減らしましょう。

本人(感覚的な要因)……感覚過敏や、体の不調などを抱えている

・まわりが気づいていない感覚過敏
目に見えない体の不調

こういったものが、イライラを引き起こしていることもあります。

本人は、感覚過敏や不調を「言ってもどうにもならない」とあきらめていて、すぐに話してくれないかもしれません。

できるかぎり責めるのを極力減らし、「あなたの味方」「なんでも聞かせて」と伝え続けることで、やがて話してくれるようになるでしょう。

話してくれたら、「そのくらいのことで…」と決して言わず、つらさを受け止めましょう。

感じ方は、人それぞれちがいます。
感じ方に、正しいも間違いもありません。

感覚過敏や、体の不調を抱えながらでも、なんとかやっていける環境を模索しましょう。

本人(性格的な要因)

オーバードーズ(OD)の背景には、

まじめな、いい子で、
自分でコントロールしようという気持ちが強く、
責任感が強くてプレッシャーを感じやすい。

といったこともあります。

人間関係や物理的な環境要因によって、本来のその子の「良いところ」が隠れてしまったために、「自己信頼を回復するための苦肉の策」として、薬を飲んでしまうことがあります。

また、本来のその子のペースではないことが続き、コントロール感を失ったために、無意識に「コントロール感を取り戻そう」として、薬で気持ちを落ち着かせようとする場合もあります。

そうしているうちに、本人も止められない薬物依存に陥っているのですが、

もともとは、生き延びるためにやった行動
もっといえば、自分らしく生きるためにやったこと

方法はまちがっていますが、苦痛を緩和して「生きようとする」ことはまちがっていません。いま必要なのは、

・その子の「良いところ」が活かせる環境
・その子のペースでやれる環境

こういう環境がととのってくれば、オーバードーズ(OD)は必要なくなります。

植物が少しずつ成長していくように、オーバードーズ(OD)からの回復も、ゆっくりとしたもの

すぐには薬物依存から抜け出すことは難しいかもしれませんが、
人間がもつ「生きる力」を信じ、「回復する力」を引き出しましょう。

生活はうまくいっていますか。
食事、睡眠、心の栄養。1つずつ見直してみましょう。

まずは食事。

栄養のあるものを食べれば、気持ちも落ち着いてきます。
「不安」や「苛立ち」の原因は、ビタミンやカルシウムなどの栄養不足からきていることもあります。
女性ホルモンが関係しているなら、漢方や婦人科系のサプリメントが効く場合もあります。

そして睡眠。

昼も寝てしまってもいい。
だるくてどうしようもないから寝ているのです。
栄養のあるものを食べて体力がついてきたら、ゲームでも買い物でも、なにか行動したくなってきます。
自然な形で、昼に活動量が増えると、夜の睡眠の質が上がります。
睡眠がうまくいくと、気持ちも落ち着いてきます。

心にも栄養を。

食事と睡眠が安定してきたら、心にも栄養を。
安心できる人や、友達と交流することが、心の栄養になります。

すべての結果は、因と縁が合わさって生じます。
因とは本人の行い、
縁とは環境や他人
です。

スパッと治る、ガラッと変わるというよりも、
植物の芽が出て、ほんの少しずつ大きく成長していくように、
人の心の回復も、ゆっくりとしたものです。

昨日と今日とでは、あまり変わらないように見えても、数か月後にはきれいな花を咲かせる植物と同じです。

人の心の成長は数年単位かもしれませんが、日々、変わっています。

植物の成長のためにできること

じゅうぶんな栄養を与え、
過剰にならず不足しない量の水を与え、
暑すぎず寒すぎない環境を整え、
必要な日光の当たる場所に置くことです。

つまり、縁を整えることです。
その植物が持った力(因)と結びついて、成長します。

人の心の回復のためにできること

おいしい食事を、おいしいと感じられるように。
温かいお風呂に入って、スッキリして気持ちいいと感じられるように。
じゅうぶんな睡眠をとり、できるところから心地よいと感じる活動を増やしていく。

そうやって縁を整えていくうちに、
本人が持っている力(因)と結びついて、得たい結果へ向かっていきます。

おわりに

心と体が元気になってきたら、
知ってほしいことがあります。

最初に書いたような、「不安」や「苛立ち」を思い出してください。

うまく生きられない苛立ち
他の人と同じようにできない苛立ち
やりたいことが見つからない苛立ち
なぜ苛立っているのかも、わからない苛立ち
自分の将来がどうなるかわからない不安
学校や会社で孤独になるのではないかという不安
陰で、悪く言われているのではないかという不安
災害や事故に巻き込まれるのではないかという不安
叱られている人を見て、自分も叱られるのではないかという不安
今この不安な気持ちが、どこから来ているのか分からない不安

こういった「不安」や「苛立ち」は、
健康な人も、心のどこかに抱えています。

自覚はなくとも、

死ぬのが怖い
死んだらどうなるか分からない不安

こういう不安のない人はいないでしょう。

仕事が忙しいから、やることがあるからと、「不安」や「苛立ち」を、ごまかしたり気晴らししたりしながら生きています。

しかしそれは、根本解決ではなく、あくまでごまかしや気晴らしです。

オーバードーズ(OD)とちがって、健全なかたちでごまかしているのですが、「ごまかし」であることには変わりありません。

ごまかしたくなる「不安」や「苛立ち」を、心の奥底で抱えているという点では、オーバードーズ(OD)してしまう人と同じ。

どうにもならない「老い」や「病気」や、やがてやってくる「死」と向き合うとき、

「不安」や「苛立ち」の根本解決をしていなければ、誰でも苦痛に直面しなければなりません。

根本解決をするための、仏教です。

「老い」や「病気」や「死」と無関係な人はいませんから、だれにとっても大事な根本解決の方法を仏教では教えられています。

      ↓↓↓↓

月見草のカフェ勉強会・おしゃべり会も開催中です。ぜひお会いしてお話ししましょう。
      ↓↓↓↓

この記事を書いた人

ライター:月見 草

人生の目的が5ステップで分かる
特典つきメールマガジンの登録は
こちらから

詳細を見る

関連記事

人生の目的とは 生きる意味やヒントを見つけるための特集ページです。

生きる意味やヒントを見つけるための特集ページです。