はじめに トラウマ(PTSD)とフラッシュバック、知っていますか
「トラウマになる」というと、よほどひどい体験をした人だけのことだと思われるかもしれません。
たしかに、トラウマになる代表的な出来事は、死別、震災や災害、交通事故など、よほどひどい体験が挙げられます。
大きな衝撃を受けるので、「同じような危険に備えるために、覚えておかなければ」と、心身が記憶しておく出来事を「トラウマ」と言います。
(専門的には、トラウマ=出来事・体験そのもの、PTSD=トラウマが原因でおきるストレス障害。わかりやすくするために、PTSDの状態になっていることも含めて「トラウマになる」「トラウマ」と表現しています)
トラウマになったり、PTSDになったりするのは、どんな人も、本能的にもっている機能です。精神的に弱いからなるものではありません。トラウマと無関係だと思っている人でも、きっかけによっては起こりうることです。
知っておいていただきたいのは、よほどひどい(非日常的な)体験以外でも、日常の出来事でもトラウマの原因になることはある、ということです。失恋をした、叱られた、緊張した、いじめを受けた、など。本人にとって、気持ちが強く揺さぶられることであれば、どんなきっかけでもトラウマの原因になることはあります。
また「トラウマ」と関連が深いものに「フラッシュバック」があります。
「フラッシュバック」とは、トラウマの症状の1つです。トラウマとなる状況が、鮮明に思い出されて、イヤーな気持ちになる状態です。トラウマとなる状況を、頭の中で、何度も何度も再生されるような感じです。思い出そうとして思い出しているのではなく、似たようなきっかけに反応してしまうのです。
トラウマになった状態が、1カ月以上続いている場合、「PTSD」というストレス障害になっている可能性があります。
だから、周囲の人に「そんなことくらいで」「いつまでも引きずっていないで」「くよくよするな」と言われることでも、実は、トラウマの症状だった、PTSDになっていた、ということがあります。
今、あなたが「私のつらい状態は、トラウマなのだろうか。PTSDだろうか」「これはフラッシュバックが起きているのだろうか。どうすれば克服できるの?」と思っているのなら、ぜひ読んでいただきたいと思います。
【目次】
- トラウマ(PTSD)とフラッシュバックの関係
- トラウマ(PTSD)とフラッシュバックのしくみを理解するヒント「因縁果の法則」
- トラウマ(PTSD)のしくみ・フラッシュバックのしくみ
- トラウマ(PTSD)を克服する方法
1.トラウマ(PTSD)とフラッシュバックの関係
トラウマ(PTSD)になっていると、次のような心身の症状が出ます。
(専門的にはトラウマ・PTSD・ASDといった区別がありますが、わかりやすくするため、ここでは省略しています。詳しくは文部科学省「心の外傷とその対応」)
トラウマの症状の中でも、特に、フラッシュバックについては、「よくわからない」「これってフラッシュバック?」と思われるのではないでしょうか。
私自身、フラッシュバックを体験していたころ、ずいぶん長い間、フラッシュバックだとは思いませんでした。
フラッシュバックとは、思い出したくもないのに、頭の中で場面が再生されてしまって、不快な気持ちになったり、心身の症状が出ることを言います。
フラッシュバックの主な心身の症状は次のようなものです。
「これくらいのことは、フラッシュバックとは言わないだろう」と思えることでも、フラッシュバックの場合があります。思い出したくもないのに、同じ状況を思い出しては、身体が反応するならば、フラッシュバックかもしれません。
2.トラウマ(PTSD)とフラッシュバックのしくみを理解するヒント「因縁果の法則」
トラウマ(PTSD)やフラッシュバックについて理解するには、仏教の「因縁果の法則」が、とても大きなヒントになります。
「因縁果の法則」とは、どんなことにも例外なく「因」「縁」「果」があるという法則です(下図)。
縁……きっかけ。外部で起きること。
果……結果。自分の心身に起こること。
因と縁が合わさることで初めて、果が起きます。
因があっても縁がなければ果は起こりません。
縁があっても因がなければ果は起こりません。
なぜ、「因」「縁」「果」の法則を知ると、トラウマ(PTSD)やフラッシュバックの克服につながるのか、と思われるかもしれません。
一言でいうならば、「因」「縁」「果」を知っていると、「因」か「縁」を取り除くことによって、「果」を変えることができるからです。
3.トラウマ(PTSD)のしくみ・フラッシュバックのしくみ
トラウマのしくみ
トラウマのしくみを順にみていきましょう。
トラウマの原因となる要素 <因=自分の心>
そのために自分の心身が判断し、記憶して備える本能的な心のはたらき
トラウマの原因となる要素 <縁=外部のきっかけ>
【日常的】失恋、叱責、緊張、いじめ、失敗、など
トラウマになったら起きること<果=自分に起きること>
自分に起きた「果」は、新たな「因」となって、次なる「果」を作り出します。
ここでは、トラウマになったことが、新たな<因>となって、次なる<果>フラッシュバックを作り出します。
フラッシュバックのしくみ
フラッシュバックが起きる要素 <因=自分のトラウマ>
フラッシュバックが起きる要素 <縁=外部のきっかけ>
フラッシュバックの症状 <果=自分に起きること>
【心】
【体】
頭の中で何度も再生されることで、記憶が強化されます。心身の症状が出ることで、さらに脳は「危険だ」と思い込みます。
繰り返しになりますが、因縁果の法則は、因が縁と結びつき、結果を起こします。結果がまた因となることで、連鎖が起こります。自分に起きた「果」は、新たな「因」となって、次なる「果」を作り出します。(下図)
ここでは、フラッシュバックを繰り返すことが、新たな<因>となって、次なる<果>トラウマの強化へとつながります。
「因」か「縁」を変えない限り、負の連鎖が続いてしまいます。つまり、PTSDのように、症状が長期化することになるのです。
4.トラウマ(PTSD)を克服する方法
回復(果を変える)のためには、2つの方法があります。
(1)因を変える
(2)縁を変える
まず、得ようとしている結果(回復の目安)から、確認しましょう。
トラウマからの回復の目安 <果>
得ようとしている結果を間違えると、いつまでも結果にたどり着くことができません。つまり、「恐怖や不安を完全に消し去ろうとする」ことは、できません。
少しずつ恐怖や不安をやわらげ、普通の生活ができる程度までもっていくことが、回復の目安です。
トラウマから回復し、克服する方法 <因>と<縁>
(1)因を変える
→思いはだんだんと変化する。毎回、吐き出し切ってしまうとよい
→状況を理解したり、対処できるようになる
(参照記事 コーピングとは)
(2)縁を変える
(余計なアドバイスや、説教をしてくる人には決して話さない。誰に、どこまで話すかは、自分の選択)
(相性のいいカウンセラーがよい)
(話を聞いてくれる医師がよい)
○環境を変える
私がトラウマやフラッシュバックについて、目を背けずに向き合うようになったきっかけは、仏教の「因縁果の法則」を知ったことでした。
「因縁果の法則」は「縁」を略して「因果の法則」とも、「因果の道理」とも言われます。
「因」や「縁」を変えれば、かならず「果」は変わります。すぐに劇的に変わらなくても、少しずつ、行動しただけ、かならず変わっていきます。
因縁果の法則をより深く学ぶことで、苦しみの連鎖を無くし、幸せの連鎖をつくっていくことができます。大げさかもしれませんが、自分の人生を、自分で切り開いていくことができるのです。
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