病気

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シリーズ 難病に折れない心(6) いざ、闘病の長いトンネルへ! その前に

こんにちは。難病のフリーライター 松井二郎です。

わたしはおしりに穴があいて、入院していました。

おしりに穴? はじめからあいているでしょと思われるかもしれませんが、その穴のすぐそばにもう1コあいてしまったのです。

痔瘻(じろう)という病気です。

わたしは二郎といいます。じろうが痔瘻になったわけですが、それはどうでもいいのですが、その穴を閉じる手術のあと。

「念のため精密検査を受けてください。この病気になる人は100人に1人の割合で腸に異常がありますので」

「えっ? はあ」

「検査は、おしりからカメラをいれて腸のなかを直接見ます。内視鏡(ないしきょう)検査といいます」

医師にすすめられるまま、その検査を受けることに。

大腸内視鏡検査を初体験

「これに着替えてください」

看護師さんから、検査着の上下を渡される。
テレビドラマでよく患者が手術室にむかうときに着ている服だ。

「パンツは穴があいているほうが後ろになるようにはいてください」

見ると、男性用下着を巨大化したようなパンツ。
えーと、この穴を後ろにして、と。

緊張しつつ検査室へ。

部屋には、これまたドラマでよく見るベッドと、その上にまぶしい照明、周りに難しそうな機械がいくつか。

医師1人と看護師さん2人に迎えられます。

医師が、

「ではベッドに横向きに寝てください」

いそいそ寝ると、そのベッドが上昇していく。
医師と看護師の目線の高さで止まりました。

看護師さんが後ろに回り込んで、

「失礼しますね」

検査着のパンツの穴が広げられる。

こ、これは。
パンツ丸見えどころか、おしり丸見え。

全員の視線がおしりに集中したのを感じる。

これってもしかして、とても恥ずかしい状態なのでは?

「いまからカメラを入れていきますが、このモニターに腸の内部の映像が出ます。麻酔をしているので頭がボーッとされてるかもしれませんが、見れたら、見ていてください」

見ます見ます! こんな機会そうそうないもんね~。

「では、入れていきます」

うっ。

ううっ!

痛くは、ない。痛くはないけど、カメラがにょろにょろ入ってくるのを感じる。

うおおお……っ!

あ、そうだモニターを見ねば。

〈へぇ~。キレイなもんだなぁ〉

初めて見る腸の中は思ったほどグロテスクではなく、なめらかな赤い絨毯(じゅうたん)のよう。

カメラは奥へ奥へと進んでいく。
うん。どこを見てもキレイ。べつになにもなさそう。

そりゃ100人に1人の異常なんてあるわけが、

「松井さん、ここ、見てください」

だしぬけに医師はモニターを指さし、

「白いものがプツッとあるの、わかりますか?」

は?

ああ、よぉーく見ると、たしかにゴミみたいな白いのがありますね。

「この状態というのは、ふつうではないんです。おそらく、クローン病の初期だと思われます」

くろーんびょー?

なに、それ。

「この白い斑点(はんてん)が、あちこちに点在しています。ここと、ここにもあります」

ほんとだ。
よく目をこらすと、白いものがまばらにプツッ、プツッと散らばっている。

「クローン病のことは、あとで詳しくお話しします」

原因不明のまま治療開始

検査を終え、渡されたパンフレットを手に持って病室に帰りました。

ベッドに寝転がりながらひらいてみると、

クローン病は、(中略)医学が進歩した今日においても、その原因は不明で根本治療は開発されていません。

(日比紀文監修『第2版 クローン病の正しい知識と理解』)

は?

(クローン病の)特徴的な症状は、腹痛と下痢で、約半数以上の患者さんでみられます。
さらに、発熱、下血、腹部腫瘤(しゅりゅう)、吸収障害に伴う体重減少、全身倦怠(けんたい)、貧血などの症状もよくみられます。
また瘻孔(ろうこう)、狭窄(きょうさく)、膿瘍(のうよう)などの腸管の合併症や、関節炎、虹彩炎(こうさいえん)、結節性紅斑(けっせつせいこうはん)、肛門部病変などの腸管外合併症も多く……

(同)

なに、これ。

ほとんど言葉の意味がわからないが、とにかく、おれはこれから病気のデパートになるの?

「パンフレットは読まれましたか」

「はい……」

診察室で医師の説明をうける。

「クローン病は、まだ治療法が確立していません。でも、進行を食い止める方法なら、かなり確立しているんです。薬を飲むことと、食事を制限することです。
これによって、病気ではあるけれども、ほとんど症状がない、という状態にすることができます。これを寛解(かんかい)といいます。逆に、薬を飲むのをやめたり、いろんなものを食べはじめると、症状が復活します。これを再燃(さいねん)といいます。
この再燃をいかに短くし、寛解の状態をいかに長く維持していくか。それがこれからの治療となっていきます」

それは、つまり、いわゆる、不治の病というやつ?

わたしが、それになった、と。

いまいち状況が飲み込めない。

病室に戻り、ベッドでごろごろしながらパンフレットを何度も読み返していると、

「松井さあん。お薬ですよー」

看護師がやってきて、枕もとのテーブルに輪ゴムで束ねた薬をドサドサ積み上げました。

うわっ、こんなにあるの!

「まずこれがペンタサといってクローン病の基本的な薬になります。1日3回、食後に2錠ずつ飲んでください。
これがプレドニン。痛みをおさえます。これは1日1回、2錠です。
あとこの粉薬は、胃薬になります。このプレドニンというのが、強いお薬なので、胃を荒らさないようにするためにプレドニンを飲む前に飲んでください」

看護師はいますぐ1回目の服用をするよう指示し、

「そのあとも忘れずに時間どおり飲むようにしてくださいね」

と言い残して去っていきました。

薬の山をしばらく眺める。

〈これはいよいよ病人になったな〉

やれやれ。100人に1人にビンゴとは。懸賞のたぐいには当たったことがないのに、どれだけ日ごろの行いが悪いのか。

それも、今回の痔瘻(じろう)という病気になった人が検査をすると100人に1人ということであって、何もない人が検査をしてクローン病がみつかる確率は3000分の1らしい。

薬の山の輪ゴムをはずす。

さっそくペンタサ2錠、胃薬1包、プレドニン2錠を順番に口に入れました。

最後の錠剤が、のどの奥をつたい、胃に落ちていくのを感じる。

〈ほんとに……これでいいのか?〉

なんだろう。

なんだか、すごく、違和感をかんじる。なんだろうなあ。なんだか、すごく、引っかかるんだよなあ。

もういちどパンフレットをひらいてみる。

「クローン病は(中略)原因は不明で根本治療は開発されていません」

原因がないのではない、あるけどわからないということ

どんなことにも原因があると前回書きました。
(前回の記事はこちら)

要約すると――
万が一にも原因なしに結果は出ない。何かが起きたからには、原因があるのだ。
まかぬタネは生えない。まいたタネは必ず刈り取らねばならない――。

原因がわからないのに、治療をする。

そうだ。しっくりこないのは、ここだ。

原因を取り除かないと結果は取り除けない。

原因を放置しているのに結果が出ないなら、それは結果を待ってもらっているということ。
借りたお金を支払わないでいるということ。

借りたものは返さなければならないのは自然の摂理だ。因果の道理だ。

再び薬の山を見る。

〈これ、一生、飲むんだよなあ〉

もしかしたら、わたしは何か取り返しのつかないことを始めようとしているのでは?

かぜやインフルエンザで1週間くらい薬を飲むのではない。
何十年と飲むのだ。胃に穴があく強い薬を。

その結果は?

トンネルの入口に立った気分だ。中をのぞくと、真っ暗闇。いきなり、そんなトンネルの前に連れてこられて、さあ進めと言われた気分。

このトンネルはどこへ続いているの?

クローン病は死ぬ病気ではないらしい。
だったら、どんなタネかわからないタネをまくよりは、何もまかないほうが、リスクが少ないのでは?

この状況も飲み込めないが、わたしにはこの薬も飲み込みにくい。

これはひとつの道だと思う。

ただ、道はこれひとつでないとも思う。

クローン病は原因不明、といっても、「原因がない」のではない。あるけど、わからないということ。

「原因はある」のだ。

だったら、治療法だってあるのだ。まだわかっていないだけのこと。

いや、待てよ。

そうなのか?
ほんとうに、まだ誰にもわかっていない?

ノーベル賞を受賞した本庶佑(ほんじょ たすく)博士のがん治療法もニュースになるまで世間に知られていなかった。

クローン病も、治す道があるのに、すでに発見している医師がいるのに、まだ広く知られていない。その可能性はない?

たとえ仮説であっても、原因はこうで、だからこの治療をすると言っている医師はいないのかな?

そしてわたしはその医師と出会うことになるのです。

つづく。

P.S.
病には原因があります。「人生は苦なり」という病にも原因があって、こちらはハッキリした治療法が見つかっています。

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この記事を書いた人

フリーライター:松井 二郎

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