病気

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なぜ生きる~障害を持つ子供からの贈り物~(2)300cc

こんにちは、増本です。

前回のお話は、こちらをごらんください。

今回は「300cc」のお話です。

重度の障害を持って生まれて来た我が子。

家に連れて帰りたい、家族で寝起きする暮らしがしたい。

その為に私たちがしなければいけないこと、それが300ccです。

300cc それが生命を維持するために絶対必要な水分量

母乳でもミルクでも水でも何でも良いから1日300cc、それが生命を維持するために、絶対必要な水分量、必ず飲ませなければならない生死の分水嶺です。

当時、コーラの一気飲みが流行った時代。

500ccコーラのペットボトルをいかに早く飲めるかを芸人さんたちが競っていました。

それに比べたら一日にたった300ccの水分くらいと思っていましたが、それは大きな間違いでした。

そもそも飲もうという気持ちがない赤ちゃんの口に水分を入れてもただこぼれるだけ、むせて、つらい思いをさせるだけ。

針の無い注射器、別名、注入型計量容器。

この注射器で何回水分補給を繰り返せば一日の目標水分量に達するか。5ccの注射器ならば目標60回と言う道具です。

抱きかかえた子供の口に注射器を添え、ただひたすらタイミングをはかる。

一日がこれだけで過ぎていく、あっという間の一日、気の遠くなるような一日。

なんと気の長い仕事だろう、ただただ妻の根気と愛情に頭が下がりました。

一口飲めたらいっぱい褒めてあげて下さい

そんな私の気持ちを見透かすかのように医師が説明してくれました。

「お父さん、水を飲むことくらいと思われるかもしれませんが、この動作は凄いことなんですよ。

適量を口に入れ上手にのどまで運び、肺への気道ではなく、食道の方に流し込む。

食べることも同じです。ちぎって噛んで砕いて送って飲み込んで。

こんな小さな口の中で物凄く絶妙なバランスとタイミングで複雑な動作が行われているのですよ。

一口飲めたらいっぱい褒めてあげて下さい」

飲む、食べる、そして生きる、今まで当たり前と思っていたことが何ともすごい、当たり前ではないことだったのでしょうか。

また一つ、この子のおかげで知らされました。

思考停止せず、ひとつひとつ冷静に着実に

当たり前でない一口、当たり前でない一日。ならばただ、諾々と流され生きる日々にしてはならない。

「頑張ってるね真一、お父さんも頑張るね」

子供に教えられる一方、九州に生まれ、お祭り騒ぎで育った私は、凄いと感じるとすぐに奇跡だ!神だ!と短絡思考の悪い癖。

そんな私をまた息子が見つめています。

「苦しいこと、辛いことは人間のせいで、よいこと嬉しいことは神様のおかげなの?」

「そんなことはないよね、それはおかしいよね、ごめんね、真一、馬鹿だよね、お父さんは」

何でもかんでも神を持ち出し、目を塞いでしまえば、原因究明もなければ、解決策にも至らない。

すべてのものごとは原因があって結果がある。直接的な原因は何?間接的な原因は何?ならば良い結果を生むには、悪い結果を防ぐには?

思考停止せず、ひとつひとつ冷静に着実に見つめていかなければ、こんなに頑張っている子供に叱られてしまう。

生まれて来た意味を、生きている目的を、生きていく方向をしっかり見据えた毎日にしなければ。

また一つ息子に教えられ、悔いなき人生への旅が続きます。

(続きは以下の記事に)

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