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奈落の底に突き落とされた! IT時代の寵児を支えた仏教の教訓とは

こんにちは、齋藤勇磨です。

今回、インタビューに応じてくださったのは、日本橋でシステム開発の会社を経営する東京都の佐藤信次郎さん(67)です。佐藤さんの会社は、電話とコンピューターをつなぐ独自の顧客支援システムで、いまや業界でも注目の企業ですが、「一時は奈落の底に突き落とされました」と佐藤信次郎さんは述懐します。一体、何があったのでしょうか。

地域貢献に開発した機器を転用。爆発的人気のあのサービスに

起業のきっかけを教えていただけないでしょうか。

27年前のことです。技術系の会社を退職し、第2の人生を模索していたとき、新聞のニュースで孤独死の多さを知りました。

統計によると、1年間に亡くなる人の数は約125万人。そのうち、孤独死は約3万人だそうですね。

そうなんです。特に東京都では、一人暮らしの高齢者の実に約64パーセントは、近所付き合いがほとんどないか、あいさつをする程度で、孤独死の数が増えている、ということでした。「せっかく、日本の高度経済成長を支えてきた団塊の世代なのに……。何か力になれないか」と思ったのが始まりです。調べてみると、独り暮らしの高齢者は、外出や会話の機会が少なく、相談相手もいないと分かりました。ましてや、悩みが深刻になれば、自分をよく知る身近な人だとかえって相談しづらいといいます。これでは孤独死が増えるのも無理はありません。
「会話が増えるような機器を開発すれば、役に立つのでは?」と思い、プライバシーを守りながら、多人数で同時に通話ができる装置を友人に頼んで開発してもらいました。

それは喜ばれそうですね。

喜び勇んで、地域の福祉サービスに生かしてもらおうと某市役所に持ち込んだのですが……。

が、何か問題があったのですか?

ここだけの話、窓口の担当者から、こう話を持ちかけられました。
「佐藤さん。この機器の導入には、大きな経費がかかります。よければ、有名な市議会議員の先生を紹介しますので、一度、お話ししてみますか?」
担当者が言うには、ある政治家との〝私的な裏交渉〟が必要だというのです。

ええ~!

正直、そんなことには関わりたくないので、やっぱり、やめようと思いました。でも、「すでに試作機は造ってしまったしなあ……」と思っていたのです。

「ダイヤルQ2」の栄光と転落

そう思っていた時、その装置を少し変えれば、当時流行し始めていた有料の電話サービス「ダイヤルQ2」を提供できることが判明したのです。
ダイヤルQ2とは、電話で情報を得られる有料サービスのことで、インターネットの未発達な90年代に流行しました。
0990で始まる番号に電話をかけると情報提供の番組につながるというもので、当時は、ニュースや人生相談、健康相談から、経済や教育、生活など、音声によるたくさんの有料情報が提供されていました。

確か、阪神大震災のときにも、募金の方法として活用されていましたね。

そうですね。大災害が起こると、被災地救援のためテレビ局が用意した番号を字幕で示して視聴者に呼びかけます。視聴者がかければ、所定の金額が回収され、自動的に義援金が集まるわけです。
当時、ダイヤルQ2のサービスは、アメリカ製の機械を輸入して使っていたため、導入に膨大なコストがかかっていました。せっかく導入しても故障が多く、維持管理に莫大な費用がかかっていたのです。そこで、例の装置を転用して売ると、これが大ヒット!国内の、故障の少ないサービスが、アメリカ製のものより安く使える、と話題になり、またたく間に広まりました。

ジャパンドリームですね。実際、どれくらいで売れたんですか?

具体的には言えませんが、最初に開発した装置の値段の、10倍近くで売れるようになりました。

10倍!

当時は、渋谷・道玄坂の一等地に会社を構えていました。

金が人を変えた――。アリが蜜に群がるように

ただ、ダイヤルQ2の名を一躍高めたのは、“アダルト業者”でした。居ながらにして確実な集金ができる利点を生かして、悪用し始めたのです。未成年の長時間利用で高額な料金が保護者に請求され、社会問題にもなりました。

せっかく世のため人のためと思って開発した機械だったのに……。

そうなんです。収入が増えるほど、罪悪感にさいなまれるようになりました。しかも、資産が増えると、急に人が集まってきました。どの人も最後には必ず、「お金を少し貸してほしい」「資産を倍にする方法がある」と言うのです。金が無ければ簡単に断れるのですが、困ったことに、あるのです。断り切れずに出資すると、一銭も返ってきませんでした。稼いだ金は、次々にだまし取られて泡のように消えていきました。
そのうち、しだいに会社も逆風にさらされるようになります。NTTが規制を強めたため、うまみをなくしたアダルト業者たちが去っていき、加えて、インターネットが台頭すると、見る影もなく衰退していきました。
「金の切れ目が縁の切れ目」とはよく言ったもので周囲に集まっていた人たちも、手のひらを返すように離れていきました。〈金は人を変える――〉。そう痛感しましたね。

つらい時期ですね。

誰も信じられず、神仏にすがらずにおれませんでした。最先端技術を扱う会社を経営しながら、皆には内緒で、毎朝、神社に足を運び、30分以上かけて祈願していました。
あの時の自分は、どうかしていました。やっぱり、いざとなると、迷信にすがってしまう。人間とは、弱い者ですね。

読めば読むほど、分からない

そんな時ですね。転機が訪れたのは。

そうです。インターネットで見つけた、分かりやすい仏教サイトの内容に感動し、仏教講座に参加するようになったのです。

仏教!仏教と言ったら、普通、お寺に行って聞くものだと思うんですが……。

自分は、初めはそこまで熱中して勉強しようとは思っていませんでしたからね。ネットなら、気軽に学べるかな、と思い、参加してみました。

本を読んで勉強しようとは思われなかったのですか?

読みましたよ。有名な仏教学者の本を何冊も読みました。ただ、読めば読むほど、分からない。何遍も読めば分かるのかな、と思って繰り返し読むんですが、やっぱり理解できないんですね。
また、わかりやすい言葉で書いてある本は、内容が曖昧で、こちらの知りたいことが書かれていないな、と感じました。

宗教と聞くと、ちょっと「アヤシイ」というイメージを持つ人もいますが、参加に抵抗はありませんでしたか?

まあ、オウム真理教事件などが頭によぎりましたが、まあ、「一度体験してから判断しよう」と思って、参加させていただきました。

実際に参加されて、どうでしたか。

驚いたのは、若い人が多かったことです。何となく、「自分と同じくらいの年代が多いだろうな」と、勝手に思い込んでいたのですが。でも、ネットから参加申し込みをしているんだから、よく考えてみれば、当たり前ですよね。あと、内容は、当初思っていたものと全く違うものでした。とても新鮮でしたね。分かりやすい構成で、理論的に話が進むのです。「確かにそうだよな」と頷ける内容ばかりでした。

人生を変えた、江戸の有名商家のエピソード

その中に、こんな話が出てきたのです。
若い頃、大きな商家で働いていた京都の紀伊国屋亦右衛門は、非常に才気があり、主人にかわいがられていました。

あるとき主人に「おまえに金100両を与えるから、好きな商売をして1千両にしたら帰ってこい」と命じられます。亦右衛門は、初めから大きな商売をしては失敗するかもしれない。小さなことから始めて確実に利益をあげていこうと考え、最初は紙くずを買ってチリ紙にすき直して売り始めます。そうして3年間で300両でき、5年間でついに千両をつくりました。

喜んで主人の元に帰って報告すると、主人は感心して「才能のあるヤツだとは思っていたが、驚いた。今度はその千両で1万両作ってこい」と言われました。5、6年してまた1万両をつくって亦右衛門は帰りました。主人は大喜びで、今度は10万両にしてこいと言います。3年後にそれも亦右衛門は達成します。ますます欲が深まった主人は、さらに100万両儲けて帰ってこいと命じました。

この時、亦右衛門は「10万両を100万両にするのは、100両を1万両にするよりも簡単ですが、命あってのお金であります。どれだけあっても金はこれで十分とは思えません。人間の欲には限りがありません。限りない欲の奴隷に私はなりたくはございません」と主人の命令を断り、仏門に入ったといいます。

話の最後には「落ちてゆく 奈落の底を のぞきみん いかほど深き 欲の穴ぞと」という歌がありました。
「ああ、この亦右衛門と、私は一緒だ……。金のために苦しみ、金に振り回され、奴隷のような人生を送っている。こんな奈落に落ち続ける毎日は、もう嫌だ」。そう思って心機一転、新たな気持ちで頑張り始めたのです。

そうでしたか……。佐藤さんの会社は、新たな技術で特許を取得し、順調に業績が伸びているそうですね。

はい、おかげさまで。欲とは、恐ろしいものです。仏教を聞き、自己を見つめる時間こそ、今の自分にとってかけがえのない、大切なものになっています。

佐藤信次郎さんのインタビュー動画も、ぜひご覧ください!(約8分)

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この記事を書いた人

ライター:齋藤 勇磨



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