生と死

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スピリチュアルペインを根本から解決するには?

こんにちは、齋藤勇磨です。

平成29年、1年間で亡くなった人は、約134万4,000人。日本は多死社会に突入したと言われています。

例えば、死亡原因のトップであるガンで死亡する確率は、男性25%(4人に1人)、女性16%(6人に1人)。高齢社会になるに従い、ますます増加すると考えられています。

年々、ガン治療は進化を遂げ、治癒や延命を目指して新しい治療法が現れています。また痛みを和らげるケア技術も進歩し、苦痛の多くが緩和されるようになりました。

しかしそれでもなお、医学ではどうすることもできずにいるのが、「スピリチュアルペイン」と呼ばれるガン終末期の患者の苦しみです。

富山県内の病院で働く消化器内科医・新田英二さん(仮名)は、「実はそれは、ガン患者のみならず、生きているすべての人が抱えている問題なのです」と語っています。

私たちすべてが抱えている問題とは、なんでしょう?新田医師にインタビューしました。

スピリチュアルペインって何?

――スピリチュアルペインとは何でしょうか?

スピリチュアルペインとは、「私の人生は何だったのか」「生きている意味はあるのか」など、人生の意味が分からず苦しむことで、終末期の患者さんがよく訴えられる苦しみです。

WHO・世界保健機関によると、私たちの感じる苦痛には、大きく分けて、以下の4つがあるそうです。

・身体的苦痛:痛み、息苦しさ、だるさ、動けないこと
・精神的苦痛:不安、うつ状態、恐れ、いらだち、怒り、孤独感
・社会的苦痛:仕事上の問題、人間関係、経済的な問題、家庭内の問題
・スピリチュアルペイン:人生の意味、罪の意識、苦しみの意味、死の恐怖、価値観の変化、死生観に対する悩み

例えば、今日、ガンが進行した人には、様々な苦痛に対応する緩和ケアが行われます。終末期医療の進歩は著しく、専門トレーニングを受けた医師や看護師が増えています。

ガン告知を受けた人には、身体的苦痛、精神的苦痛、社会的苦痛があるといわれてきました。

1つ目の身体的苦痛とは、文字どおり、通常の身体の痛みや日常生活の支障を言います。早期のガンでも、「ガンそのものの治療」を受けている方の3人に1人は痛みが出てきます。終末期がんでは、3分の2以上の患者さんに痛みが現れます。

がんの痛みのほとんどが、一日中続く持続性の痛みです。50%は強い痛みで、30%は耐え難いほどの痛みです。この身体的苦痛には、鎮痛薬などの医療処置が有効です。

2つ目の、不安や恐れなどの精神的苦痛にも、医療者が主にケアに当たります。抗うつ剤や抗不安剤が効果的でしょう。

3つ目の、社会的苦痛とは、病気のために仕事を失い経済的に苦しくなったり、 社会や友人と縁が切れたりすることによる痛みです。これらの苦痛については、ソーシャルワーカーなどが相談に乗ることができます。

しかし、多くのガン終末期患者の観察研究により、これらとは別の、スピリチュアルペインと呼ばれる苦痛があることが分かってきました。

スピリチュアルペインは魂の奥底からの叫び

――具体的に、スピリチュアルペインとはどのようなものでしょうか?

スピリチュアルペインとは、魂の奥底から噴き上がってくる心の叫びです。生命の根元にかかわる深いレベルの痛みであり、効果的な薬はありません。生きる意義に対する問い(私は何のために生まれてきたのだろうか)、希望がないという訴え(どうせ自分はもう長いことないのに、頑張ってもしかたがない)、孤独感の訴え(こんな私を誰も助けてはくれない)、死後の問題(私は死んだらどうなるのか)などの悲嘆として現れます。

私たちは普段、自分が死ぬということを忘れて生きていますが、死は、すべての人の確実な未来です。その死に直面した時、今まで気づいていなかった深い疑問が頭をもたげてきます。

例えば、これらは、ある病院で、ガン終末期患者が語ったスピリチュアルペインを一覧にしたものです。

生きる意義に対する問い

  • 私はなんのために生まれてきたのだろうか
  • 私にはは生きた価値があったのだろうか
  • どうしてこんな病気になってしまったのだろうか。まだやりたいことがあったのに……

苦しみに対する問い

  • 私だけがなぜこんなにつらい思いをしなければならないのか
    • この苦しみにはどういう意味があるのだろうか

    希望がないという訴え

    • どうせ自分はもう長いことないのに、頑張ってもしかたがない
    • 身の回りのことも片付いたし、もう何もすることがない

    孤独感の訴え

    • 世間から自分だけ取り残されてしまい、寂しくてならない
    • こんな私を誰も助けてはくれない

    罪悪感の表出

    • 私が悪いことをしたから、こんな病気になったのか
    • これはきっと天罰だ。許してほしい

    別離への寂しさ

    • 家族ともう二度と会えなくなるのか
    • 母親を残していくのが心配だ
    • せめて子供が成人するまでは生きたかった

    家族に迷惑をかけているという思い

    • こんなに迷惑をかけなければならないなら、いっそ早く死んでしまいたい
    • 迷惑をかけてまで生きていたくない

    死後の問題

    • 死んだら私はどうなるのか。無になるのか

    (柏木哲夫氏による)

これらの問いは、患者さんにとって、とても深刻なのですが、“家族に心配をかけたくない”“医師の手を煩わせたくない”などの理由で、なかなか口に出せないのです。

スピリチュアルペインを根本から解決するには

――これらのスピリチュアルペインは、どうすれば解決できるのでしょうか。

身体的ケア、精神的ケア、社会的ケアだけでなく、スピリチュアルケアの必要性が強調されています。

最近も、NHKの『クローズアップ現代+』が特集していました。人生の最も重要な問題として、正面から取り上げられつつあるのです。

――番組では、このような終末期患者の心を専門的にケアする「臨床宗教師」の取り組みを通して、すべての人に宗教が必要であると訴えていました。

一般的には、傾聴と呼ばれる、患者さんの思いにただひたすら聞き入り、相手の思いを認めるコミュニケーションが勧められています。

治療者は患者に寄り添い、本人が、ガンとともに生きる意味を見つけられるようギリギリいっぱいまでサポートしますが、おのずと限界があり、根本的な解決にはなりません。

そもそも、その方の人生をよく知らない人が答えられる問いではありません。このような根源的な問いに答えられるのは究極的にはご本人しかいないのです。

――最後は一人ひとりが、この問いに答えねばならないのですね。

「やがて死なねばならないのに、なぜ、生きるのか――」。この魂の叫びは、ガン患者だけではなく、また死を目前にした人だけでもなく、自覚はしていませんが、生きているすべての人が本来抱えている問題なのです。しかし、それを知る人はほとんどありません。

――この大きな問題に、どこからアプローチしたらよいのでしょうか。

私は、まず仏教を勉強してみるのがよいと思います。

最近、ベストセラーとなった『サピエンス全史――文明の構造と人類の幸福』の著者、イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏も、本の最後に「仏教は幸福の問題を重要視し、2500年にわたって、幸福の本質と根源について、体系的に研究してきた」と仏教に期待を寄せています。

仏教では「死んだらどうなるか分からぬ心」を「無明の闇」とか「後生暗い心」といわれ、苦しみの根本と教えられています。

そして、その暗い心が一瞬で消え、日本晴れの明るい心に晴れわたる方法が、詳しく教えられていますから、関心のある人は、ぜひ学んでほしいと思います。

――ありがとうございました。

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この記事を書いた人

ライター:齋藤 勇磨

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