姉妹の葛藤。金メダリストにもある、人には言えないイヤーな心
こんにちは、高松です。
ピョンチャン五輪のスピードスケート女子団体追い抜き(パシュート)で見事、金メダルを獲得した日本。特に高木菜那選手と美帆選手にとっては「姉妹」で手にした金メダルでした。
ここまでくるには想像を超える苦労があったに違いありません。「姉妹」だからこそ、以心伝心で分かることもあれば、「姉妹」であるが故に、周りから比較されるという、他人と違う悩みも大きかったと思います。
これは高木姉妹だけではなく、兄弟や姉妹のいる人なら皆、経験する心の葛藤ともいえるでしょう。
高木姉妹が金メダルを取るまでの2人の心の道程が語られていますので、私たちの心と照らし合わせながら見てみましょう。
(本文中の引用は『高木美帆&菜那「転べ」と嫉妬も…父が語る“本当の姉妹仲”』2018年02月21日web女性自身より)
なぜ葛藤を抱えるのか?兄弟、姉妹は常に周りから比べられる
スケートが盛んな北海道十勝地方・幕別町に生まれ育った菜那と美帆の姉妹は、小さいときから切磋琢磨してきました。
スケートだけでなく、サッカーやダンスなど、菜那がやることはすべて美帆もはじめます。でも美帆は器用で運動神経がいいから、どれも姉を追い越してしまう。それが悔しくて、菜那は夢中に練習していました
と父、愛徳さんは語っています。
察するに、お姉さんの菜那さんは、妹と比べられて、いつもつらい思いをしていたのではないでしょうか。
兄弟や姉妹で比べられる苦痛は、兄弟姉妹のいる人なら誰しも経験していることでしょう。「自分と兄とは違う!」「自分と妹とは違う、分かって!」と、どれだけ心で叫んでいるか分かりません。
姉妹の葛藤。互いに代表落ちを経験した2人は……
やがて、8年前のバンクーバー五輪では、中学生だった妹の美帆さんが代表入りします。
2人の恩師で、帯広南商業高校の東出俊一氏は、当時をこう語っています。
中学生の美帆が10年のバンクーバー五輪の代表になって、五輪選手に支給されるブレザーやウェアが自宅に届いたとき、菜那は悔しくて”全部燃やしてやろう”と思ったそうです。また応援にいったときも、心のなかで“転べ、転べ”と思っていたと。そんな嫉妬が菜那の原動力
そのバンクーバーで美帆さんは世界の壁の前に惨敗、さらに4年前のソチ五輪では代表落ちし、逆に菜那さんだけが出場することになります。先の東出俊一氏は、
美帆は感情を表に出さないタイプですが、14年のソチ五輪の代表から落選した瞬間、選出されて大喜びしている姉をすごい顔で睨みつけていましたね。あの落選で、姉のように強い思いが必要だと感じたようです
と回想しています。
これを読まれた方の多くは、この「嫉妬」こそ金メダルを取ることに大きな影響を与えたと思われると思います。
確かに金メダルに輝いたからこそ、めでたし、めでたしなのですが、実はこの「嫉妬」=「勝るをねたむ心」は、私たちを大変、苦しめる心です。
葛藤の正体は? 勝るをねたむ「愚痴」の煩悩
この「勝るをねたむ心」を、仏教では「愚痴(ぐち)」と説かれ、108の煩悩の中でも「欲」「怒り」と並んで特に恐ろしい「三毒の煩悩(さんどくのぼんのう)」の1つに数えられています。
愚痴とは「ねたみ、うらみ、憎しみ」の心をいいます。
欲を起こしてみても、怒ってみてもかなわないと分かると出てくるのが愚痴です。人の幸せが面白くない。反対に人の不幸が面白い。自分ながらイヤーになる悪魔の心です。
自宅の隣に4階建ての大きな家が建ったらどうでしょう。「立派な家を建てられましたねえ。毎日見て楽しませてもらっています」と口では言いますが、本音は「平屋の俺の横に、あんなでかい家を建てやがって。家が日陰になってしまったじゃないか。地震か台風で壊れてくれないかな」と苦々しく思う心がないでしょうか。
冷静に考えてみれば、隣の人が4階建ての大きな家を建てられたのは、その人が頑張ったからなんですけどね。私たちはその種まきを見ずに、結果だけを見て、ねたんだり、そねんだりしている場合がほとんどです。
仏教では、自分の運命のすべては、自分のまいた種まき(行い)の結果だと教えられます。ですから幸せになるのも不幸になるのも、すべて自分のまいた種なんですね。
しかし、その道理が分からない「愚痴」のために、ねたみ、そねみ、うらみで、さらに自分自身を苦しめるはめになるのです。
そして、この煩悩をもたない人は一人もありません。
葛藤を超えた姉妹のかげに、家族のやさしい気遣い
ねたみ、そねみが外にあらわになると、周りはとても気を遣うことになります。
ピョンチャン五輪では日本を熱くさせた高木姉妹でしたが、父、愛徳さんは次のように語っています。
これまでの五輪は、どちらかが出場できなかったから親としては複雑でした。今回は、何も考えずに、心の底から喜べましたし、思い切って声援を送ることができました
我が家ではスケートの話はしません。ふたりが競い合っているリンクとは違って、家のなかではリラックスさせたいですからね。だから、今回も、結果に関係なく“お疲れさま”というだけです
そんな家族の気遣いを痛いほど感じていた高木姉妹が、互いに五輪に出場できなかった悔しい経験をバネにつかんだのが、今回のビョンチャン五輪の切符でした。
姉妹で挑んだ女子パシュートは、365日のうち360日、メンバー全員が寝食をともにして練習を重ねたといわれます。そこには葛藤を抱えながら葛藤を超え、ともに同じ高みを目指す姉妹の姿がありました。そして、やさしい家族の気遣いも……。
どうすれば葛藤を超えることができるのか
私たちも「ねたみ、そねみ」の愚痴の煩悩は、死ぬまでなくなりませんが、どのような心であるのかを知って、その心と向き合っていくことが、明るい未来を切り開く第一歩となるでしょう。
女子パシュートで金メダルを達成した高木姉妹の8年間の物語は、そのことを私たちに示唆してくれます。
まとめ
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