
春といえば、色鮮やかなチューリップを思い出す人は多いでしょう。
数多くの品種が存在し、多彩な形や色が目を楽しませてくれます。
視界いっぱいに咲く光景は圧巻です。
チューリップの生産で、世界の約90パーセントを占めるのがオランダです。
その有名な花市場は、過去に危機に陥ったことがあります。
最も知られている例が、1630年代の「チューリップバブル」です。
一体、何が起きたのでしょうか。
チューリップバブルの発端
17世紀オランダで、ある花が人々を熱狂させました。
その花の名は「チューリップ」です。
発端は、1593年にオランダに着任した植物学の教授が、トルコ原産の珍しい植物の球根を持ち帰ったことでした。
頭にターバンを巻いたような花の形で、ペルシャ語で「ターバン」を意味する言葉をその語源とします。
そもそも、オランダ語の国名「ネーデルランド」は「低地の国」という意味です。
北海沿岸にあり、国土の約27パーセントが海面よりも低いオランダは、浅瀬を堤防で囲み、中の海水を風車を利用してくみ出す「干拓」によって国土を広げてきました。
干拓地は養分が少なく、穀物の栽培には不向きです。
そこで、痩せたオランダの土壌でも栽培可能なチューリップに人々は注目しました。
そのチューリップの中に、「モザイク病」といわれる病気になるものがありました。
アブラムシを媒介とするウイルスによって、花弁に特殊な模様が入る、突然変異によるものでした。
当初、オランダ人の裕福な植物愛好家の間で話題となり、庭に植えて、観賞用として楽しんでいました。
しかし、この病気が逆にチューリップの人気を爆発的に跳ね上げ、大々的な投機の対象のきっかけとなったのです。
チューリップで大儲け!?
当時、オランダでは貿易で大儲けし、人々は新しい投資先を探していました。
そんな中、美しいチューリップが注目を集め始めたのです。
チューリップは、色とりどりの美しい花で、当時としては珍しい品種も登場していました。
さらに、チューリップの球根は、将来高値で売れるという噂が流れ始めました。
チューリップは、種だと花を咲かせるまでに約5年もかかってしまう上に、何色の花が咲くか分かりません。
それに対して球根は、秋に植えると春には花が咲くので、すぐに結果が現れます。
花を咲かせた後に「分球」と呼ばれる小さな球根を生み出します。
その分球を育てることで新たな球根となり、また分球を生産するのです。
ひとたび希少種の球根を手に入れてしまえば、適切な処理と手入れによって、分球を増やし続けることができます。
資産を文字通り「増やす」ことができるのであれば、これ以上の投資対象はありません。
まさに、「黄金の卵を産むニワトリ」だったのです。
そういった意味では、球根が投資(投機)の対象となるのは必然に思えます。
球根と家を交換!?狂騒の始まり
オランダは「黄金時代」と呼ばれるほど繁栄していました。
人々は裕福になり、美しいものへの関心が高まっていたのです。
そんな時代背景も、チューリップ人気を後押ししました。
希少価値の高いチューリップは、宝石のように高値で取引されるようになりました。
1つの球根の価値が平均的な労働者の年収の10倍にまで高騰し、中には、家が買えるほどの値段で売れた球根もあったといいます。
さらに、「先物取引」という仕組みが登場しました。
これは、まだ収穫されていない球根を、将来の価格で売買する取引です。
先物取引によって、投機熱はさらに高まりました。
短期間で多額の富を得られるといった話が流布すると、庶民も取引を始め、投機は過熱の一途をたどったのです。
『群衆の異常な妄想と狂気の記録』(チャールズ・マッケイ著)には、「貴族も、平民も、農民も、職工も、水夫も、人夫も、メイドも、煙突掃除人も、年老いたお針子までも、チューリップの熱に取り憑かれた」とあります。
ブームが最高潮に達した頃には、球根1つを4.8ヘクタールの土地と交換したという話や、球根を玉ねぎと勘違いして食べた外国人の船乗りが逮捕された、といった話まで出てきました。
チューリップバブル崩壊
しかし、熱狂は永遠に続くわけがありません。
オランダの熱狂を聞いて、周辺国からチューリップの球根が持ち込まれ始めました。
供給の増加に合わせて価格が下落し始めると、投機家はこぞって球根の売却を始めます。
そして1637年、ついにチューリップバブルは崩壊したのです。
球根の価格が暴落し、価格は100分の1以下になってしまいました。
何千人もの人が莫大な損失を抱え、市場は混乱し、オランダ経済に大きな打撃を与えました。
現代への教訓
「人類初のバブル」とされる、このチューリップバブルは、人間の欲が招いた悲劇と言えるでしょう。
人間は皆「108の煩悩の塊」と仏教で教えられます。
その1つが、無限に広がる「欲」の心です。
人生何事も「ほどほどがいい」と分かっていても、なかなか制御できないのは、この欲の仕業に違いありません。
今日でも、株を持っている人が、最も多く悩むのは「売るタイミング」といわれます。
「この程度の下げ方なら、また上がるんじゃないか」「もうちょっと待てば、儲かる」と思って手放すタイミングを迷っているうちに、大損してしまうことがよくあるといいます。
「もっともっと」と手を伸ばし、やがて取り返しのつかない事態に陥るのが、底知れぬ欲の恐ろしさです。
歴史上、数え切れないほどの人々が、この欲に殺されています。
チューリップバブルは、400年前のできごとですが、現代も変わらぬ、人間の実態を教えてくれているようです。
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