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いよいよ、平成が終わろうとしています。テレビや新聞などでも、平成の30年を回顧する特集が続いていますね。
平成は、いったいどんな時代だったのでしょうか?時代を象徴する4つのキーワードから迫ってみたいと思います。
「平成は戦争のない平和な時代だった」とよく言われます。
確かに戦争のない時代でしたが、果たして平和な時代だったといえるでしょうか。
『読売新聞』は、「平成は、過去でもっとも多くの年間自殺者を出した時代として記憶されるだろう」と評しています(3月17日朝刊13面)。
実際、平成に自殺で亡くなった人の数は約80万人です。
日清・日露戦争の死者数、約13万人と比較しても6倍以上であり、14年間連続で年間自殺者が3万人を超えた事態は、まるで“見えない戦争”でした。
生きるということは戦いであり、その戦いを放棄した人たちが80万人もあった。それが平成という時代の一側面であったのです。
空前ともいえる自殺の引き金となったのが、平成3年に起きたバブルの崩壊です。
大手銀行でさえ倒産し、連鎖的に中小企業も破綻しました。
自殺者の多くは経済的苦境が原因とされていますが、真因を突き詰めれば「苦しくとも、なぜ生きるのか」。その答えを持っていなかったことに尽きます。
平成は、その心の空洞を露呈した時代ともいえるでしょう。
バブルが崩壊し、有頂天気分から覚めた社会のムードを、ジャーナリストの池上彰さんは、こう振り返ります。
「そこはかとない不安、芥川龍之介が言う『ぼんやりした不安』の現代版のようなものが、世の中に充満していました」
そんな時期に多くの信者を獲得したのがオウム真理教です。
一見、仏教のような内容に、真面目な青年が引き付けられました。
ある信者は「自分の存在意義に、正面から答えてくれたのは教祖麻原だけだった」と漏らしていました。
平成7年、オウムによる地下鉄サリン事件は6千人以上の被害者を出し、社会に衝撃を与えます。
20世紀を代表する科学者・アインシュタインは、「人生の意義に答えるのが宗教」と言いました。
しかし、この事件で宗教界への信頼が大きく失われ、「不安定な時代、何を生きるよりどころとすべきか」という問いが一人一人の心に投げかけられました。
生きる目的を求める声は、事件をきっかけにかえって高まっていったのです。
確かなものは何もない、という時代の空気は、「人それぞれ自分らしい生き方を追究すればいい」という風潮に拍車をかけました。
「みんな違って、みんないい」と個性や多様性が重視されるようになり、人気グループ・SMAPの『世界に一つだけの花』(作詞・槇原敬之)が平成を象徴する大ヒット曲となったのも、「ナンバーワンより、オンリーワン。一人一人が輝けばいい」というメッセージに、多くの人が共感したからでしょう。
しかし、エッセイストの小島慶子さんは、「世の中が多様化すればするほど、生きづらい人が増える」と指摘します。
王道といえる生き方の基準がなくなり、一人一人が、生きる方角を”孤独に”考えさせられ、それが正しいかどうかも、確かめようがないからです。
東京工業大学の上田紀行教授は、「『生きづらさ』は、平成の日本人を物語るキーワードかもしれません」と著書『平成論』の中で語っています。
さらに、日本人の価値観を根底から揺さぶったのが、平成23年の東日本大震災です。
「平成を象徴する出来事は?」という世論調査で、最も多くの人が「東日本大震災」と答えたといいます。
この切実な局面に、人として真に大切なものは何か。震災直後、普段はとうとうと語る評論家も思想家も、伝えるべき言葉が見つからず、ただ沈黙するしかありませんでした。
「前を向いて生きよう」「立ち上がれ日本」と激励が飛び交いましたが、住んでいた家も町も、家族も流された人たちに、どれだけ力を与えたでしょうか。
自分だけ生き残った後悔から、後を追う人も多くありました。
3・11が提起したのは、「”前”とは一体どこなのか」という問いでした。
激動の平成を振り返ると、「苦しくともなぜ生きるのか」ということが問われ続けた時代だったともいえるでしょう。
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