はじめに
今回は「部下が急に喋らなくなった…」というお悩みです。
つい最近まで、わりと元気にしていたのに、部下が笑わなくなった気がします。
一体どうしたのかわかりません。どう接したらよいでしょうか。
もともと無口な人ならば問題ないのですが、部下が急に喋らなくなったというのは、なにか原因があり、問題が露呈する前ぶれである可能性があります。
問題が大きくなる前に、早めに対処しましょう。
部下が喋らなくなった時に考えられる5つの原因と、15の対処法をご紹介します。
目次
- 部下が喋らなくなった!考えられる5つの原因
- 部下が喋らなくなったとき、上司のあなたにできる対処法1~5(基礎編)
- 部下が喋らなくなったとき、上司のあなたにできる対処法6~10(情動解決)
- 部下が喋らなくなったとき、上司のあなたにできる対処法11~15(問題解決)
- 部下が喋らなくなったとき、上司のあなたにできる対処法 まとめ
部下が喋らなくなった!考えられる5つの原因
部下が喋らなくなった原因は、大きく5つ考えられます。
部下が喋らなくなった原因1、上司に対する信頼を失っている
☑ほかの社員とは話しているのに、上司にだけ喋らなくなった。
部下が上司にだけ喋らなくなったのなら、上司に対する信頼を失っているのかもしれません。
経験豊富な上司からすると、部下の行動は、抜け・漏れが目立ちます。
そこでつい、こんな言葉をかけていなかったでしょうか。
「どうしてこうなったの?」
「しっかりやってよ」
アドラー心理学では、これらの言葉は部下の気力を奪う「勇気くじき」だと言われます。
上司は励ましているつもりでも、受け取る側からすれば現状否定なので、心を閉ざすのです。
部下が喋らなくなったのは、勇気くじきが繰り返され、上司に対する信頼を失ったのが原因かもしれません。
部下が喋らなくなった原因2、うつ病などのメンタル不調に陥っている
☑会社ではほとんど誰とも口をきかないくらい、部下が喋らなくなった。
以前の部下はよく喋っていたのに、誰とも喋らなくなったのなら、部下がうつ病などのメンタル不調に陥っているのかもしれません。
メンタル不調になると、エネルギーが著しく低下するので、喋るのもおっくうになります。
部下が笑わなくなったのなら、メンタル不調によって、いつもなら楽しいことも楽しいと感じられず、人に笑顔をみせる気力さえなくなっている可能性があります。
その場合、上司として、ラインケアを怠ってはなりません。
慎重かつ迅速に対処する必要があります。
部下が喋らなくなった原因3、家庭やプライベートで深刻な問題がある
☑ときおり仕事の手が止まり、物思いにふけっているようだ。
上司は職場での部下しか知りませんが、部下には仕事時間と同じくらい、プライベートの時間があります。
夫婦関係、恋人との関係、子どもの問題、親の病気や介護、友人の死、生活の中心といえるほど没頭している趣味での行き詰まりなど…
プライベートで問題が起きている場合、頭の中がその問題でいっぱいになり、職場で喋らなくなることもあるでしょう。
部下が喋らなくなった原因4、仕事に対する意欲を失っている
☑部下の抱えている仕事の量が多すぎる。もしくは少なすぎる。
☑仕事の質が悪い。部下にとって難しすぎる。もしくは簡単すぎる。
☑希望の仕事ができなかった。希望の部署に行けなかった。
☑やりたくもない仕事を任されている。仕事内容にどうしても納得できない。
どれかに当てはまる場合、仕事に対する意欲を失っている可能性があります。
一時的な意欲の喪失なら、そのうち喋るようになるかもしれません。
しかし何か月も続くようなら、メンタル不調や転職につながることもあるので、注意が必要です。
部下が喋らなくなった原因5、公にしていないが転職が決まっている
☑上司との面談の際、部下は「こうしてほしい」と希望を出していたが、現状は変わらない。
いまの職場ではやりたいことができないと見切って、水面下で転職活動を進めているのかもしれません。
転職の話が具体的になってくると、うかつに口を滑らせるわけにはいかないため、部下が喋らなくなることもあります。
部下が喋らなくなったとき、上司のあなたにできる対処法1~5(基礎編)
心理学的に効果が実証されている15の対処法をご紹介します。
部下が喋らなくなったときの対処法1、飲み物・キャンディを渡す
単純でバカバカしいと思われるかもしれませんが、効果のある方法です。
医師を対象とした心理学実験では、キャンディを配ったところ、何も渡さない場合に比べてポジティブ感情が高まり、2倍の速さで正しい診断をし、思い込みにとらわれるのは半分以下でした。
たった一個の飴玉、一本の缶コーヒーが、部下のポジティブな感情を引き出し、脳を活性化させます。きっと言葉が出やすくなるでしょう。
部下が喋らなくなったときの対処法2、外の空気を吸いに行く
天気のいい日に20分間、外で過ごすと、ポジティブな感情が高まり、思考の幅が広がるという研究結果があります。
堅苦しい面談よりも、たまには一緒に外に出て、空を見ながら話をするのも良いでしょう。
部下が喋らなくなったときの対処法3、楽しかった日のことを話す
楽しかった日を思い出すだけで、生徒はよい成績をとり、ビジネスマンは効率よく交渉を成立させます。
現状が満足いかない状況であっても、新しい解決策やアイデアにつながりやすくなります。
部下が楽しかったエピソードを知っているなら、本題に入る前に話題にしてみましょう。
部下が喋らなくなったときの対処法4、話を聞くときは手を止める
上司は忙しいため、ついパソコンを打ちながら、回覧板に目を通しながら、携帯電話のメールを見ながら、部下の話を聞いてしまいがちです。
たしかに上司の耳に、部下の言葉は入ってきているかもしれません。
しかし、部下は「聞いてもらえた」という満足感は得られないでしょう。
部下が喋らなくなったのは、「どうせちゃんと聞いてもらえない」という諦めや、「自分は大切にされていない」という悲しさからかもしれません。
部下の話を聞くときは、手を止め、おへそを相手のほうに向け、目を見て、相槌を打ちながら聞きましょう。
部下が喋らなくなったときの対処法5、長く話すより、回数を多くする
部下と接する回数が増えるほど、あなたの好感度は高くなります。
心理学では「ザイオンス効果」といい、単純な接触でいいから回数を多くしたほうが、好感度がアップすることがわかっています。
挨拶はもちろん、「おつかれ!」「暑いね」「忙しいかい?」「調子はどう?」など、こまめに話しかけてみましょう。
部下が喋らなくなったとき、上司のあなたにできる対処法6~10(情動解決)
部下が喋らなくなったときの対処法6、傾聴力を身につけて聞く
部下が喋らなくなったことを心配するあなたは、部下思いのすばらしい上司です。
もし、助けたい気持ちがあるのに助けられずにいるなら、傾聴力の問題かもしれません。
傾聴力のない状態で話を聞くと、かえって状況をこじらせることさえあります。
☑「君のこういうところが問題だ」と言う(いつのまにか説教になる)
☑「もっとしっかりしなよ」と励ます(励ましているようで現状否定)
☑部下が話している言葉に、自分の言葉が被る(最後まで聞かない)
☑「みんなも耐えているんだ」と言う(暗に忍耐を要求)
☑「たいしたことないよ」と笑って励ます(悩みの過小評価)
☑自分の話を持ち出す(話のすり替え)
☑「こうしたら」「ああしたら」と助言する(求められていないアドバイス)
☑話を聞き終えたとき、なんだか自分がすっきりする
部下は口には出さないものの「相談しなきゃよかった」と思うことでしょう。
傾聴力を身につけるには時間がかかります。
傾聴力をテーマにした本を2~3冊読み、試行錯誤しながら身につけるのがベストですが、ひとまず傾聴力のない聞き方にならないよう意識しましょう。
傾聴力の重要なポイントは2つです。
「私は部下のために何をしてあげられるのか」だけを考える
部下が喋らなくなったときの対処法7、部下の存在を認める
人間には強い承認欲求があります。
部下がやっている仕事を、積極的に承認し、感謝したことはあるでしょうか。
「仕事なんだから、いちいち承認したり、感謝したりしていられないよ」
「私だって褒められたことなんてないさ」
そう思われるかもしれません。
しかし、物質的に恵まれた今の時代、必死に求めているのは「心の豊かさ」です。
もしあなた自身、もっと承認され、感謝されたらどうでしょう。
イヤな気持ちはしないはずです。
部下が喋らなくなった今、部下は心が満たされていないサインを出しているのです。
「君がこの仕事をしてくれるおかげで、助かっているよ」
「君がいてくれるから、安心して任せられるんだ」
大切なのは、感謝のことばを続けることです。
部下が喋らなくなったときの対処法8、部下の味方になる
「どうせ喋ったって、どうにもならない」
部下が喋らなくなった背景には、こんな心理があるのではないでしょうか。
このタイミングでさらに「やっぱり話さなきゃよかった」となったら、部下が殻に閉じこもるのに拍車がかかります。
せめて「とりあえず話してよかった」と部下が思えるように、徹底的に部下の味方になりましょう。
あなたは内心「そんなことくらいで?」と思ったとしても、部下は今のスキルでは解決できないから、深刻に悩んでいるのです。
部下の目線になりきって、「よくわかる。私もキミの立場なら、同じ悩みをもっていたと思う」と真剣に伝えましょう。
部下は「上司は自分の味方でいてくれる」と感じるはずです。
部下が喋らなくなったときの対処法9、聞く:話す=7:3を意識する
部下が喋らないからといって、上司ばかりが喋ってはいけません。
部下がふと喋ろうとした瞬間に、上司の言葉が飛んできたら、喋ろうとした気持ちはひっこんでしまいます。
「一緒に黙っていてもいい」くらいの気持ちで、部下の喋るペースに合わせましょう。
聞く:話す=7:3を意識すると、部下にとって心地よい会話になります。
部下が喋らなくなったときの対処法10、未来は明るいことを伝える
自分の人生は良い方向に行くと思うだけで、モチベーションが上がり、仕事の成果も上がることが実証されています。
これを心理学的には「自己成就予言」と言い、成功は「自分で予言した通りに成就する」という一面があるのです。
たとえ根拠のない自信でも、未来は明るいと思っていれば、人生全体が良くなるのです。
タイミングを見計らって「キミの未来は明るいよ」と優しく伝えましょう。
部下が喋らなくなったとき、上司のあなたにできる対処法11~15(問題解決)
部下が喋らなくなったときの対処法11、産業医を紹介する
部下が喋らなくなった原因が、うつ病などのメンタル不調のようだと感じたら、放置しておいてはいけません。
本人が傷つかないよう配慮した上で、「体調が悪そうだから、診てもらったら?」と伝え、以下のいずれかの対処法を取りましょう。
(1)社内の健康センター、産業医、保健師、カウンセラーの面談を申し込み、紹介する。
(2)外部相談窓口、EAP(従業員支援プログラム)を具体的に提示する。
(3)地域の労災病院、産業保健推進センターなどを紹介する。
(4)最寄りの精神科、心療内科、メンタルクリニックを紹介する。
具体的に部下が動くところまで、サポートしましょう。
部下が喋らなくなったときの対処法12、仕事を具体的に変更する
やる気のある部下なのに喋らなくなっているなら、仕事に対する不満が募って「このままでいいのか」と迷いが生じているのかもしれません。
部下のやりたい仕事を聞き出し、仕事を具体的に変更しましょう。
少しでもいいから変更する。そうすると部下は「現状はあまり変わらないけれど、とりあえず自分の気持ちは伝わっている」と希望をもつようになります。
ただし、「きっと疲れているのだろう」と憶測で判断して仕事を減らすのは、「自分はダメだから仕事から外された」と、かえって部下の自尊心を傷つけることがあります。
あくまで部下の思いを汲むことが大切です。
部下が喋らなくなったときの対処法13、部下に役割を与える
「部下は精神的に弱い」「暗い性格だ」「空気が読めない」「仕事ができない奴」などとレッテルを貼っていませんか。
部下の性格や人間性に問題アリと思っていると、部下を否定する態度がにじみ出てしまいます。
部下が仕事にやりがいをもてないのは、性格のせいではなく、機会が与えられなかったせいかもしれません。
もしメンタル不調などの問題がないのなら、プロジェクトリーダーを任せてみるのもよいでしょう。
「役割が性格をつくる」ということがあります。
人は役割を与えられると、それにふさわしい人間になろうとします。
負荷をかけすぎるのは問題ですが、仕事にやりがいがもてないから喋らなくなったのなら、役割を与えることでイキイキとし始めるでしょう。
部下が喋らなくなったときの対処法14、部下の強みを発見する
部下の仕事が遅いのは、できるだけ人に頼らず自分で考えようとしているからかもしれません。
部下の仕事が雑なのは、ちゃんと上司に確認してから進めようとしているからかもしれません。
部下に落ち着きがないのは、早く仕事に慣れようと必死なのかもしれません。
部下が仕事を断るのは、自分のキャパシティを自覚していて、これ以上引き受けると調子を崩すと分かっているからかもしれません。
部下の仕事が中途半端なのは、周囲に気を遣い、あれもこれも引き受けようとして手一杯だからかもしれません。
部下の持っている「資質」を見極め、「強み」を発見し、本人に伝えましょう。
部下は「私のことをわかってくれた」と感じ、心をひらくでしょう。
部下が喋らなくなったときの対処法15、仕事の意義深さを伝える
「こんな仕事、なんの意味がある?」
「つまらない仕事しか任せてもらえない」
「自分なんて、いてもいなくてもいいんじゃないか」
部下は頭の中で、否定的な言葉が駆け巡っているかもしれません。
カンタンな雑用も、いつか誰かがやらなければならない仕事が大半です。
その仕事をやってくれる人がいるから、ほかの人が快適に過ごせるのです。
部下がやっている仕事がいかに大切で、意味のあることかを伝えましょう。
意味を感じられないと、人はやる気を失います。
周囲がきちんと評価すれば、「他者貢献」という意味を見出し、「自己有用感」を持てるでしょう。
部下の笑顔が輝き始めるはずです。
部下が喋らなくなったとき、上司のあなたにできる対処法 まとめ
人を動かすには、自分が深い人生哲学をもっていることが重要です。
なんのために働くのか。なんのために生きるのか。
あなたは答えることができますか?
「職業に貴賤なし」という言葉があります。
給料に差があっても、社会的には地位が低くても、人間には等しく尊厳があるのです。
ところが、仕事ができない部下は煩わしく思う。
社長や上司にはペコペコ頭を下げる。
仕事を失ったら生きる意味さえ失う。
退職したら居場所がないように感じる。
そんなふうに、条件や立場に惑わされはしないでしょうか。
部下が喋らなくなったことをきっかけに、あなた自身がまず、働く意味、ひいては生きる意味を、深く考えてみませんか。
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