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「ストレス=悪」は思い込み?ストレスが幸福感へ変わる“望ましいストレス反応”を起こす方法とは

こんにちは、ライターのゆうです。

ストレスと聞くと、どのようなイメージを持っているでしょうか。

かわいいフリー素材集を提供しているサイト「いらすとや」で検索してみると、

というイラストや、あるいはこのようなイラストもありました。

これは、「蛸は身を食う」ということわざからきていると思います。

蛸はどこかに閉じ込められると、ストレスから自分の足を食べてしまうという言い伝えがあるそうですね。

いずれにしても、ストレスは

・私達を思い悩ませるもの

・体に悪影響を与えるもの

・時には身を滅ぼすようなことさえ引き起こしてしまうもの

という、悪いイメージを持たれている方がほとんどでしょう。

しかしストレスに対する考え方(ストレスマインドセット)次第で、ストレスから悪影響を受けるどころか、相手に対する思いやりを強めたり、身体もより健康になったり、仕事に大きなやりがいを感じたりするなど、むしろストレスから多くの恩恵を得ることができるのです。

前回の記事では、このストレスはどこからやってくるのかという、ストレスの意味を見直すことで、ストレスを物事に取り組むエネルギーへと変えられる方法をご紹介しました。

今回は、身体に生じるストレス反応を変えて、恐れや不安を勇気に変える方法をご紹介していきます。

「ストレス=悪」は思い込み?ラットを用いたストレス実験の実態

ストレスには確かに悪い面もあり、過剰になれば、精神的にも身体的にも悪影響が出てきます。

ところが私達が普段感じているようなストレスは、それほど大きなものではないのです。

ストレスの影響を調べる実験では、よくラット(ネズミ)が用いられます。

実験中にラットに与えられるストレスは、

・突然何度も容赦なく電気ショックを与えられる

・水の入ったバケツに投げ込まれ、溺れそうになるまで泳がされる

・ケージのなかに1匹で閉じ込められる、または、ほかの大勢のラットと一緒にケージに入れられ、少ないエサを奪い合う

というものです。

自分をラットに置き換えれば、電気ショックを何度も与えられ、水の中では苦しみもがかされ、少量の食べ物を大勢の相手と奪い合う…。

とても普通の精神状態ではいられませんね。

このような過剰なストレスがかかる状況下では、身体に悪影響が出るのは当然といえるでしょう。

その一方で、私達が日常で受けているストレスについては、「悪影響のみ」という考えは思い込み、といわれているのです。

実際に、ストレスを感じるときに分泌されるコルチゾールというホルモンを、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症した患者に1日10ミリグラム、3ヶ月間投与したところ、PTSDの症状が減少したそうです。

また、カウンセリングの直前に患者にストレスホルモンを投与すると、不安症や恐怖症の治療効果が高まることも分かっています。

「ストレス=悪、悪影響のみ」であれば、あり得ない結果ですね。

ストレスは適正に管理され、ストレスに関する適切なマインドセットを持ったならば、身体をより健康にさせるものなのです。

マインドセットを変えれば“身体の反応”も変わる

ストレスへの適切なマインドセットを持つことで、なぜストレスから良い影響を受けられるのでしょうか。

それは、ストレスを感じたときに身体に生じる反応(=ストレス反応)が変化するからです。

ストレス反応と聞くと、呼吸が浅くなる、身体が震えてくる、心拍数が上昇するなど、緊張状態に陥って身体への負担が大きくなる、というイメージを持たれているかもしれません。

このようなストレス反応は、「脅威反応(あるいは闘争・逃走反応)」と呼ばれています。

危険を察知しときに身体に起こる反応であり、脅威に対して「闘うか・逃げるか」の準備をさせる反応です。

命を脅かすような危機からすばやく脱し、自分の身を守るためには、このような反応は欠かせません。

ただ、脅威反応は、長期的にみれば、心身に悪影響を及ぼすこともわかっています。

ではやはり、ストレスを感じることは身体に悪いのではないか、とも思いますが、実はストレスによって身体に生じる反応は、これだけではないのです。

ベストセラー『スタンフォードの自分を変える教室』の著者で、ストレスマインドセットにも詳しい心理学者のケリー・マクゴニガル氏はこう言っています。

ストレス時にあなたの体に起こる反応は、闘うか逃げるかだけではありません。

人間と同じようにストレス反応も、長い歴史のなかで進化し、現代社会に適応しやすいかたちに変化したのです。

マクゴニガル氏の語る現代社会に適応しやすいストレス反応とは、「チャレンジ反応」「思いやり・絆反応」のことです。

脅威反応だけではない!新たに発見されたストレス反応

チャレンジ反応

ストレスがあってもそれほど危険ではない場合、脳と身体は、脅威反応から「チャレンジ反応」へと切り替わります。

チャレンジ反応は、心拍数が急増して集中力は高まりますが、恐怖は感じない状態です。また、ストレスホルモンの中でも、免疫力を高めるホルモンが多く分泌されます。

ゆえにチャレンジ反応が生じれば、ストレスによって高いパフォーマンスを発揮でき、健康状態も良くなるのです。

思いやり・絆反応

ストレスを感じると、多くの場合、人とのつながりを求める気持ちが強くなることも分かっています。

この反応が「思いやり・絆反応」です。

ストレスは相手に対する思いやりを強めるどころか、攻撃的になったり、人から距離を取ろうとしたりするもの、と思われるかもしれません。

確かに脅威反応はそのような行動を取らせるのですが、ストレス反応はそればかりではなく、「思いやり・絆反応」が起これば、相手へのいたわりの気持ちが大きくなるのです。

人を信用するか否か、を基軸としたゲーム(トラストゲーム)を利用した実験では、プレッシャーと脅威を与えられ、ストレスが最大化した参加者と、そうでない参加者とに分け、相手を信用する態度にどんな違いがあるかが調べられました。

すると、事前に何もされなかった参加者が相手を信用し、信用に応えた確率が50%だったのに対し、ストレスを最大化させられた参加者が相手を信用し、信用に応えた確率は75%だったのです。

「ストレスは人を利他的にする」ことが、この実験からわかります。

このような反応が生じるのは、私達はストレスを抱くと、自分の大切な人たちに危機が迫っていると感じるため、つながりを求める気持ち、相手を思いやる気持ちが強くなる、と考えられています。

“望ましいストレス反応”を起こす方法

このように、ストレス反応には「脅威反応」「チャレンジ反応」「思いやり・絆反応」の3つがあることを見てきましたが、肝心なのは、望ましいストレス反応を身体に生じさせることです。

望ましいストレス反応を能動的に起こすことはできるのでしょうか。

嬉しいことに、研究の結果、「どのストレス反応が起こるか」は自分で変えられる、といわれています。

長続きすれば心身に悪影響がある「脅威反応」を、「チャレンジ反応」や「思いやり・絆反応」へと意識的に変えることは可能なのです。

「自分はどのように反応したいか」に意識を集中させると、それにしたがって、あなたの体の状態も切り替わる、といわれています。

チャレンジ反応に切り替える方法

困難な状況に陥ったとき、これは「自分の手には負えない状況だ」と思った場合、脅威反応が起こります。

反対に、「これは自分の力で対処できる」と思えれば、「チャレンジ反応」へと切り替えることができます。

「自分の力で対処できる」と思うには、自分の個人的な“強み”を認識することです。

・過去に同じような問題を乗り越えた経験を思い出す

・自分がどれだけ準備を重ねてきたかを考える

そうすると考え方がすばやく転換し、脅威がチャレンジに変わります。

たとえば、大事なプレゼンを目前にして緊張し、ストレスで身体が強張るような状況では、

「以前にはもっと大勢の前でプレゼンしたこともあったが、うまくいった」

「入念に資料をつくり、リハーサルも重ねてきたから大丈夫」

と振り返ることで、チャレンジ反応へと変えられるのですね。

思いやり・絆反応に切り替える方法

思いやり・絆反応に関しては、UCLAの科学者らによる研究によって、周りの人をいたわることによって、脳のスイッチが「恐怖」から「勇気」へと切り替わることがはっきりと認められました。

あなたが周りの人を助けようと決心するとき、体はいつでもこの状態になる、といわれています。

そこで勧められているのが、「1日にひとつ、誰かの役に立てる機会を見つける」エクササイズです。

・誰かに感謝の気持ちを伝える

・相手の話にしっかり耳を傾ける

・相手の言葉を善意に解釈する

などの誰かの役に立てる機会を見つけることで、体と脳の反応が切り替わり、勇気や希望やつながりを実感できるのです。

小さなことでもあっても、家族や友人、同僚に喜んでもらえる機会を見つけることで、自らもストレスからよい影響を受けられます。

ストレスへの反応を変え、自分も相手も幸せになれる「無財の七施」

思いやり・絆反応への切り替え方に関連し、ぜひ知っていただきたいのが、お釈迦様が教えられた、仏教の「無財の七施」です。

「無財の七施」とは、たとえお金や物を持たなくてもできる7つの施し(=親切、いたわり)のことです。

無財の七施は以下の7つです。

・眼施(げんせ)ー優しい温かいまなざしで、周囲の人を明るくすること

・和顔悦色施(わげんえっしょくせ)ー優しいほほえみをたたえた笑顔で人に接すること

・言辞施(ごんじせ)ー優しい温かい言葉をかけること

・身施(しんせ)ー身体を使って、世のため、人のために働くこと

・心施(しんせ)ー心から感謝の言葉を述べること

・床座施(しょうざせ)ー場所や席を譲ること

・房舎施(ぼうしゃせ)ー一宿一飯を施すこと

無財の七施を実践すれば、相手が喜ぶだけでなく、自分もまた幸せになれると教えられています。

ストレス反応の観点からも、これらの自分にできるいたわりの行動を見つけ、実践することで、ストレスの脅威反応が切り替わり、思いやり・絆反応へ変えられるといえるでしょう。

「こんな小さなことくらいで、なにか変わるわけでもない」という思いも出てくるかもしれませんが、たった一言でもいたわりの言葉をかけてもらったり、笑顔で接してもらえたりすれば、とても嬉しいものですね。

ストレスへの反応を変え、自分も相手も幸せになれるいたわりの行為を1つでも多く実践され、ストレスと上手に付き合っていただければと思います。

参考文献:
『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』(ケリー・マクゴニガル著 大和書房)

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この記事を書いた人

ライター:ゆ う

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