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戦国武将の転身~新たな才能を開花させた大久保忠行

こんにちは、齋藤勇磨です。

今回は、戦国時代を生き抜き、徳川家康に深く信頼された武将、大久保忠行の物語をご紹介します。

忠行は、家康がまだ若い頃に仕えていた家臣の1人でした。

しかし、ある戦で家康をかばった際に銃弾を受け、歩行が困難になってしまうという悲劇に見舞われます。

若くして戦場を離れなければいけなくなった忠行。

失意の中、彼はどのようにして人生を切り開いていったのでしょうか?

主君・家康との出会い

大久保忠行は、もともと今川家に仕える武士でした。

ある時、家康が今川家の人質として駿府に滞在していた際に、忠行は家康の馬の世話をする役目を命じられます。

忠行は、まだ10代の若者でしたが、真面目に馬の世話をする中で、家康の人柄に引かれていきます。

家康が今川家から独立を果たすと、忠行は家康の家臣になりたいと願い出ました。

家康は、忠行の誠実な態度と馬の世話をする腕前を認め、彼を家臣として迎え入れたのでした。

若き武将を襲った悲劇

家康の家臣となった忠行は、武芸に秀で、将来を嘱望される存在でした。

しかし、ある戦で家康をかばい、銃弾を受けてしまいます。

この傷が原因で、歩行が不自由になってしまった忠行は、戦線を離脱し、故郷の三河国上和田(現在の愛知県岡崎市)で療養生活を余儀なくされることとなりました。

戦場で活躍する仲間たちを横目に、焦燥感と無力感に苛まれる日々。

「このままではいけない。何か自分にできることはないか」。

忠行は、自らの境遇を嘆くだけでなく、前向きに生きる道を探し始めます。

意外な趣味が人生を変える

忠行には、武芸以外にも、ある意外な趣味がありました。

それは、餅菓子を作ること。

材料を工夫したり、新しい味を開発したりと、菓子作りに熱中することで、つらい日々を乗り越えていたのです。

そんなある日、家康が出陣するという知らせが耳に入ります。

当時の戦では、兵士たちは満足に食事をとることができず、乾飯(ほしいい)と呼ばれる保存食で飢えをしのいでいました。

「そうだ、殿に、美味しい餅菓子を差し入れよう!」

忠行は、自分の趣味を活かして家康を支えたいと考え、心を込めて作った餅菓子を陣中見舞いに送ります。

家康の信頼を勝ち取った餅菓子

忠行の心からの贈り物は、家康を大変喜ばせました。

家康は、忠行の作った餅菓子を陣中の兵士たちにも分け与え、その美味しさと心遣いに感謝したと言います。

その後も、家康は忠行の餅菓子を気に入り、何度も作らせたそうです。

なんと、家康は忠行の餅菓子を毒味役も通さずに食べたという逸話も残っています。

これは、家康が忠行の人柄と才能を深く信頼していた証と言えるでしょう。

家臣を「宝」とした家康

余談ですが、家康には、忠行以外にも多くの優秀な家臣がいました。

酒井忠次、本多忠勝、榊原康政、井伊直政といった「徳川四天王」をはじめ、それぞれが優れた能力を持つ家臣たちが家康を支え、天下統一を成し遂げました。

家康は、家臣一人ひとりの能力を高く評価し、それぞれの才能を最大限に引き出すことで、強固な組織を築き上げたのです。

こんなエピソードも残っています。

ある時、関白・豊臣秀吉が、諸大名の前で、
「わしは、天下の有名な宝を、ほとんど集めた」
と言って、指を折りながら刀や茶碗の名を挙げ、自慢を始めた。

やがて、徳川家康に向かって、
「そなたの、秘蔵の宝物は何か」
と問いかけた。

家康は、答えた。

「ご存じのように、私は三河の片田舎で育った武骨者ですから、珍しい宝物は持っておりません。

 ただし、私のためならば、火の中、水の中へも飛び込み、命懸けで働いてくれる部下を500人ほど持っております。

 この500人を召し連れると、日本中に恐ろしい敵はありませんので、この部下たちを第一の宝と思って、平生、秘蔵しております」

秀吉は、家康の言葉に感銘を受け、一言も返事ができなかったという。

家康は、家臣を「宝」と呼ぶほどに大切にしていました。

家臣の意見に耳を傾け、彼らの功績を正当に評価し、褒賞を与えました。

また、家臣の家族や生活のことも気にかけていたと言われています。

家康のこうした姿勢が、家臣たちの忠誠心と結束力を高め、長期安定政権の礎となったのでしょう。

菓子職人として、新たな道を歩む

さて、その後、家康が江戸幕府を開くと、忠行は江戸に呼び寄せられ、幕府お抱えの菓子職人として活躍します。

彼は、これまでの経験を生かし、様々な種類のお菓子を考案し、人々に喜びを与えました。

かつては戦場で武功を立てることを夢見ていた忠行。

しかし、彼は菓子職人という新たな道で才能を開花させたのです。

忠行の物語は、私たちに多くのことを教えてくれます。

人生には、思い通りにいかないこと、辛いこと、悲しいことがたくさんあります。

しかし、どんな逆境に立たされても、決して諦めず、前向きに生きることの大切さを、忠行は身をもって示してくれました。

「自分にできることはないか」

常にそう自問自答し、努力を続けることで、新たな道が開けることもあるのです。

「沈んで屈するな」。

忠行のように、不遇のときも努力を怠らず、周りの人に喜びを与えられるような生き方をしたいものですね。

この記事を書いた人

ライター:齋藤 勇磨

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