目次
- 「傾聴」基本9か条――まずは基本を身につけよう!
- 傾聴で重要なこと――台無しにする要因を取り除く
- 傾聴の応用編――「信頼」と「信用」のちがい
- 傾聴を深めるなら、人間心理を知ろう
はじめに
今回は「信頼関係を築きたい」というお悩みについてです。
信頼関係を築くには、「傾聴」スキルを身につけるのが一番です。
カウンセラーを目指す人は、必ず「傾聴」を学び、練習します。
私は傾聴を知らなかった頃、知らないうちに相手を傷つけたり、“よかれと思って”言ったことが相手の負担になったりしていました。
カウンセラーを目指さなくても、「傾聴」ができる人は、まちがいなく信頼されます。
部下は仕事のモチベーションがアップするでしょう。
子供同士の喧嘩を鎮めることができるでしょう。
隠し事をせずに話してくれるようになるでしょう。
妻の怒りが爆発することはなくなるでしょう。
あなたに会えるのを楽しみにしてもらえるでしょう。
すれ違いが起きなくなり、心穏やかに過ごせるでしょう。
では、「傾聴」について学んでみましょう!
「傾聴」基本9か条――まずは基本を身につけよう!
「傾聴」の基本を、9か条にまとめました。
「できているつもり」でも、実はできていないことがほとんどです。
身近な人に、あなたはできているか尋ねてみましょう。
1、否定しない
人はそれぞれ価値観がちがいますから、「私は、この人の言うようには思わない」と感じる瞬間が多々あるでしょう。
しかし、それはあくまで「価値観がちがうだけ」です。
あなたの思うことも正しいですが、相手の思うことも正しいのです。
「思いを否定された」と感じたら、また次も相談しようとは思いません。
相手を否定するのは、「私を嫌いになってください」と宣言しているようなものです。
2、アドバイスしない
「アドバイスをするのは良いことだ」と勘違いしている人が多いのですが、アドバイスはしないようにしましょう。
「正論」とは、頭だけで考えて「~すべき」と思う理屈です。
たいていの正論は、本人もわかっています。
「わかっているけど、できない」のが人間というもの。
アドバイスすることは、相手を追い詰める危険性があることを知っておきましょう。
3、話をさえぎらない
簡単なようで、なかなかできないことです。相手が話したり考えたりしている時に、口をはさまないようにしましょう。
話の途中で結論が見えたり、自分の考えを言いたくなったりするかもしれません。
話をさえぎるのは、「あなたの話は聞きたくない」というメッセージになりかねません。
4、目を見る
どんなに忙しくても、スマホを見ながら、パソコンを打ちながら、腕組みして目をつぶったまま、話を聞くことがないようにしましょう。
メラビアンの法則を知っていますか。
態度55%
声の調子38%
言葉7%
「○○しながら」話を聞くことは、「あなたの話は聞きたくない」と態度で伝えているようなものです。
5、あいづちを打つ
相手の話にあいづちを打ちましょう。
人は話しながら、相手の反応を見ています。
あいづちがないと、銅像に向かって話しているようなもの。いえ、それよりも質が悪いかもしれません。
あいづちを打ってもらえるはずだと期待しているのに、その期待を裏切られるのですから、ガッカリします。
意外と、あいづちを打っている「つもり」になっているだけの人がいます。
しっかりあいづちを打たなければ、「話をちゃんと聞いてもらえなかった」と思われてしまうでしょう。
忙しくて手が離せないのなら「ごめん、今は手が離せないんだ。15分後でもいいかな」と伝えましょう。
6、「気持ち」を理解する
「気持ちを理解する」とは、相手が大変だと感じていることを「すごく大変なんだね」と受け止めることです。
あなたがもし「その程度のことで…」と思ったとしても、相手にとっては「大きな問題」だから、困っているのです。
自分の身の上に起きてはじめて、「こんなにつらいことだったのか…」と思うものです。
「あなたの立場なら、私も同じように感じると思う」と伝えてこそ、寄り添って話を聞いていることになります。
「その程度のことで…」と思うときは、「自分の想像力が足りていないのかもしれない」と謙虚に再考してみてください。
あなたの想像力を発揮して、相手の「気持ち」をくみ取りましょう。
7、「あなたはそう感じるんだね」と相手の言葉を復唱する
まったく同じように感じる人間などいません。
それでも、人は「同じように感じている」と思うと安心するのです。
ただ、「同じように感じるよ」と言うのは嘘になるので、お勧めしません。
「あなたは○○と感じたんだね」と、相手の言葉を復唱するのが良いでしょう。これが基本の復唱です。
慣れてきたら、復唱の応用にチャレンジしてみましょう。信頼関係をもっと深めることができます。
たとえば…
妻「今日は、隣の奥さんにマウンティングされたの!ムカつく!」
あなた「そっかぁ。隣の奥さんに、マウンティングされたと感じたんだね。それはムカつくよね」
応用は、同義語・類義語を使って「相手の気持ちを、本人よりも正確に」いろいろな表現をします。
さらに「感謝のことば」を伝えられたら、あなたは傾聴のベテランです!
妻「今日は、隣の奥さんにマウンティングされたの!ムカつく!」
あなた「そっかぁ。隣の奥さんに自慢されて、腹が立ったんだね。すごく嫌な気持ちになったでしょ。奥さん同士の付き合いは苦労が多いよね。いつも家族のためにご近所付き合いをしてくれてありがとう」
言葉を復唱してもらうだけで「わかってもらえた!」と感じるものです。
逆に、復唱しなければ「本当にわかってもらえたのだろうか」と不安を残すことになります。
8、「事実」より、「その人にとっての現実」を大事にする
しかし、
認知症の人が「サイフを盗まれた!」と騒ぐとき、「事実」ではないかもしれません。
でも、本人が見ている世界では、サイフを盗まれたと“感じる”のが「その人にとっての現実」なのです。
事実だけを伝えようとすると、その人にとっての現実を否定することになります。
「サイフを盗まれたかどうかは、私は判らないのだけれど、サイフを盗まれたと感じるなら不安だし、つらいよね」と、相手の“気持ち”を代弁して、伝えてみましょう。
9、解釈しない
恋人に遅刻されたとき、あなたは心の中でこんなことをつぶやくのではないでしょうか。
「一体どういうつもり!?」
「私のことが大事じゃないの?」
「そんなに楽しみにしてなかったんだ」
「約束を守るのは大人として最低限のマナーでしょ」
これらはすべて、あなたの「解釈」です。
憶測や決めつけであって、事実ではありません。
「事実」と「あなたが感じたこと」を伝えるだけでじゅうぶんです。
「事実」とは、実際に見聞きしたこと、数値で表せることです。
「10分、遅れたね」
「15時に約束していたよね」
「遅刻するのはこれで2度目だね」
「事故に遭ったんじゃないかと、不安だったの」
「忘れられたのかなと考えちゃって、悲しかった」
傾聴で重要なこと――台無しにする要因を取り除く
一気に距離を近づけようとすると、相手は逃げたくなるものです。
信頼関係は、カンタンに築けるものではありません。
相手の気持ちよりも自分の思いを優先して無理をすると、積み上げた信頼関係を台無しにするリスクがあります。
じっくりと「傾聴の基本9か条」を守ってやりとりを続け、「この人は私を否定しない」という安心感をつくるほうが効果的です。
「不信をつくらないこと」に集中しましょう。
傾聴の応用編――「信頼」と「信用」のちがい
「信頼しても、信用するな」という言葉があります。
仕事で「信用する」と言うとき、「この人は今まで実績があるから、うまくやるだろう」というニュアンスがあります。
しかし、信用とは、ある意味「任せきりにする」「表面的な、その人の言葉を信じる」ことでもあります。
「信用していたのに」というのは、その人に任せきりにしておいて、結果だけを期待していたけれど、結果が出なかったから「がっかりした」ということです。
その人にすばらしい未来があることを、心から思い描くこと
人間はだれでも、可能性があり、力が備わっています。
信頼とは、その人には力が備わっているのだから「備わっている力を最大限、引き出せるようにサポートする」ということです。
言葉は似ていても、意味は真逆ですね。
信頼という言葉は、たいてい「信頼関係」と使います。
信頼関係は、相手に任せきりにするのではなく、お互いに築くものです。
メンタルヘルスにおいても、「信頼しても信用するな」という考え方は重要です。
体調を崩し始めていても「大丈夫です」と言う人はたくさんいます。
その表面的な言葉を鵜呑みにし、“信用”して本人に任せていたらどうなるでしょうか。
誰からのサポートも無いまま、悪化し、取り返しのつかないことになりかねません。
サポートしながら「その人には回復の力がある」と“信頼”したらどうでしょうか。
「大丈夫と言ってはいるけれど、本人も気づいていないだけで、かなり疲労が蓄積しているかもしれない」と考え、表面的な言葉を“信用はしない”のです。
サポートがあれば、回復しやすくなります。
人の表面的な言動だけを見るのではなく、心の動きを見るようにしましょう。
傾聴を深めるなら、人間心理を知ろう
傾聴を深めるなら、人間心理を学びましょう。
たとえば仏教には、人の心を深く洞察した言葉がたくさんあります。
1つ例を挙げますと…
「心で思っていることと、口で言っていることは、それぞれ異なって、真実でない」という意味です。
「信頼しても信用するな」とお伝えしたのも、心と口が異なるからです。
「心口各異 言念無実」とは、意識して本心を隠す時だけではありません。
本人も気づいていない心です。
あなた自身も気づいていない心があります。
あなたはまだ知らない「すべての人に共通している人間心理」があるのです。
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