参考;独立行政法人労働政策研究・研修機構
各国報告2:フランス法におけるモラルハラスメント:第65回労働政策フォーラム欧州諸国における職場のいじめ・嫌がらせの現状と取り組み(2013年2月28日)
今回は「モラハラ」についてです。
モラハラとは、「モラル(moral)=道徳的に正しい行動」+「ハラスメント(harassment)=嫌がらせ・迷惑行為」をつなげた「モラル・ハラスメント」の略語です。
モラルと言っても分かりづらいかもしれません。
モラハラ夫、モラハラ妻、モラハラ彼氏、モラハラ女…
モラハラは簡単に言えば「精神的な嫌がらせ」のことですが、目に見えないことなので判別が難しいと思います。
モラハラの説明の前に、まずは「ハラスメント」についてどのくらい知っているかチェックしてみましょう。
あなたはいくつ分かりますか。
知らないと、無自覚にハラスメントをしてしまうかもしれません。
チェックしてみましょう。(下にいくほど難しくなります。)
パワー・ハラスメント
「職権乱用による嫌がらせ」のことです。
この3つすべてを満たすものを言います。
厚生労働省の定義
セクシャル・ハラスメント
「性的嫌がらせ」のことです。
性的な事実関係を尋ねる
性的な冗談やからかい
性的なうわさを流す
食事やデートへの執拗な誘い
性的体験談を話すなど。
モラル・ハラスメント
「精神的な嫌がらせ」のことです。
後で詳しく説明します。
マタニティ・ハラスメント
「妊娠・出産・育児に関する、女性への嫌がらせ」のことです。
マタニティ(maternity)とは、母であること・妊娠中を意味します。
パタニティ・ハラスメント
「育児に関する、男性への嫌がらせ」のことです。
パタニティ(paternity)とは、父性を意味します。
男性社員が育児休業などの制度を使おうとしたとき、上司・同僚から嫌がらせを受けることです。
男性の育休取得率は増えてきていますが、3分の1以上の男性が5日未満しか休んでいません。
育児休業を取得しづらい雰囲気もパタハラにあたります。
ケア・ハラスメント
「介護する人への嫌がらせ」のことです。
介護しながら働く人の人事評価を下げる
介護休暇の取得を阻害するなど。
アルコール・ハラスメント
「飲酒に関する嫌がらせ」のことです。
一気飲みさせる
酔いつぶす
飲酒の強要
飲めないことをからかう
酔って迷惑行為をするなど。
スモーク・ハラスメント
「たばこに関する嫌がらせ」のことです。
喫煙を強制する
煙を吹きかける
受動喫煙させるなど。
スメル・ハラスメント
「においによって周囲を不快にさせる」ことです。
口臭や体臭
強すぎる香水や柔軟剤のにおいなど。
リモート・ハラスメント
「リモートワークにおける嫌がらせ」のことです。
Web会議に参加させない
部屋や服装をもっと映すよう強要する
カメラをONにするよう強要する
監視のように、逐一報告させるなど。
テレワーク・ハラスメント
「テレワークは無能」と言いふらす
在宅勤務であることへの文句など。
テクノロジー・ハラスメント
「パソコンやスマホに詳しい人による嫌がらせ」のことです。
わざと専門用語を使って困惑させる
苦手な仕事を大量に与えるなど。
ジェンダー・ハラスメント
ジェンダーとは、「社会的・文化的につくられる性差別」のこと。
ジェンダー・ハラスメントとは「性別によって社会的な役割を押し付ける嫌がらせ」のことです。
「男のくせに」
「女のくせに」
「男ならこうあるべき」
「女ならこうすべき」など。
リストラ・ハラスメント
自主退職に誘導する
会社に居づらくさせるなど。
ワクチン・ハラスメント
ワクチン接種はあくまで個人の判断ですが、「ワクチンを打たなければ解雇・配置転換」などと言うことです。
エンジョイ・ハラスメント
「楽しさを強要する嫌がらせ」のことです。
「仕事は楽しくやるものだ」
「この趣味は楽しいからやれ」など。
ハラスメント・ハラスメント
なにかにつけて「ハラスメントだ!」と騒ぎ立てることです。
仕事上、必要な注意をしただけで「パワハラですよ」と言うなど。
モラハラとは、言葉や態度などによって、巧妙に人の心を傷つけることを言います。
モラハラという言葉は、フランスの精神科医マリー・フランス・イルゴイエンヌ氏の著書『モラル・ハラスメント』(1999.12.1)によって広まりました。
モラル(道徳的、倫理的)に反する嫌がらせなので、広義には、先ほど列挙したハラスメントはすべてモラハラでしょう。
人権についての先進国フランスでは「ハラスメントといえばモラハラ」と認識されており、労働法典、刑法典及び公務員規程にモラルハラスメントの定義が定められています。
日本では、「パワハラ防止法」という法律でパワハラの定義が定められており、「ハラスメントの代表はパワハラ」と思われています。
日本においては、モラハラは「精神的な嫌がらせ」だけを指します。
身体的な暴力を含む場合、職場ならパワハラ、家庭ならDVと言われます。
モラハラは、パワハラやDVと違って、わかりづらいですね。
モラハラは、実際に身体的暴力をふるうものではなく、精神的に追い詰める行為です。
パワハラは、身体的暴力を含みます。
モラハラは、優位的な人からだけではなく、対等な関係でも生じます。
パワハラは、優位的な関係の人から受けるものです。
モラハラは、場所を問わず、家庭や恋人同士でも生じます。
パワハラは、職場で就業環境が害されるものです。
モラハラは、恋人や、夫婦の間で起こりやすく、周囲から分かりづらいものです。
モラハラは、精神的な嫌がらせなので、本人でさえモラハラかどうか判別が難しいと思います。
具体的な例をもとに、考えてみましょう。
モラハラ
人格を否定するような発言をした。
モラハラでない
遅刻や服装の乱れなど、社会的ルールやマナーを欠いた行動に対して強く注意した。
(社会生活を送る上で必要な範囲のため)
モラハラ
必要な情報の共有をしなかった。仲間はずれにした。
モラハラでない
新入社員を育成するために短期間集中的に個室で研修をした。
(業務上必要な範囲のため)
モラハラ
意図的に多すぎる業務、少なすぎる業務を与えた。
能力的にできないと思われる仕事をわざと割り振った。
モラハラでない
退職者が出たために、全員で仕事を負担した。
(業務上必要な範囲のため)
モラハラ
一切自分の非を認めず、何を言っても否定した。
(ほかに、暴言をはく、悪口を言う、貶めるようなことを言うなど)
モラハラでない
一通り話を聞いた上で、「これは違う」と思ったので冷静に反論した。
(一切反論してはいけないということではないため。)
モラハラ
挨拶をしても返さず、何日も無視する。
「お前はバカだから」「話にならない」と言って全く意見を聞かない。
(ほかに、舌打ち、ため息、監視する、束縛するなど)
モラハラでない
「疲れているから休ませて」と言って、たまに話を聞かないことがある。
(話を聞けないこともあるため)
モラハラ
(家庭で)生活費を渡さない。
(職場で)残業代の未払いがある。
モラハラでない
高級なプレゼントをねだって断られた。
(生活に必要不可欠ではないため)
モラハラ
休日の過ごし方を執拗に尋ねた。
恋人や友人関係を把握するために、すべて聞き出そうとした。
モラハラでない
休日の過ごし方について聞こうとしたが「プライベートのことなので控えさせてください」と言われたのですぐ聞くのをやめた。
(プライベートのことを一切話題にしてはいけないわけではないため)
モラハラは、気づかないうちに精神的に追い詰められていきます。
「この程度のことは、モラハラじゃないから我慢しなきゃ」と思っていても、あなたが精神的につらいのなら、適切な方法で対処すべきです。
対処法を列挙します。
「こんなモラハラを受けている」と相談しても、証拠がなければ退けられてしまいます。
明白な証拠があるのなら消去せず取っておきましょう。
モラハラを日常的に受けているのなら、いつ、どこで、どんな言動があったのか、事実を書き残しましょう。
モラハラが原因でメンタル不調になり、通院しているのなら、診断書をもらいましょう。
職場でのモラハラなら、企業のコンプライアンス相談窓口に相談しましょう。
2020年6月1日、改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が施行され、ハラスメント相談窓口を設置することが義務づけられています。
(大企業は2020年6月1日~、中小企業は2022年4月1日~義務化)
今はメールやWebフォームから相談できる窓口も増えています。
厚生労働省が案内している総合労働相談コーナー(労働基準監督署など)
「モラハラを受けるあなたが悪い」ということは決してありません。
しかし、モラハラを受けやすい「体質」はあります。
モラハラを受けやすいあなたの「体質」を変えなければ、この先もずっと繰り返すことになるでしょう。
心理学の一つであるゲシュタルト療法では、環境だけに原因があるのでもなく、個人だけに原因があるのでもない。実は「どちらもが病んでいる」と考えます。
あなたの現在の問題は、あなたが現在やっているやり方が生み出しています。
あなたの現在のやり方とは、
などです。
あなたの現在のやり方は、
という特徴があります。
ゲシュタルト療法では、「今、私は~に気づいています」という言い方で、「今・ここ」を認識します。
できるかぎり、今のあなたの気持ちや反応に注意を向けましょう。
そして、相手に直接 伝えて、コミュニケーションの道具にするのがゲシュタルト療法の手法です。
ゲシュタルト療法の最終目標は、「ゲシュタルトの祈り」のような生き方ができるようになることです。
ゲシュタルトの祈り
私は私。あなたはあなた。
私は私のために生き、あなたはあなたのために生きる。
私がこの世に生きているのは、
あなたの期待に応えるためではない。
また、あなたがこの世に生きているのは、
私の期待に応えるためではない。
私は私。あなたはあなた。
もし縁があって、私たちが互いに出会えるなら
それは素晴らしいことだ。
しかし出会えないのであれば、
それも仕方のないことだ。
相手の期待に応えるために、あなたが犠牲になるのはやめましょう。
また、相手が変わってくれることを期待するのもやめましょう。
あなたは、あなたの人生を生きること。
あなたの人生の目的を間違えないことです。
仏教には「業力」という考え方があります。
「業」とは、自分のやった行い(おこない)のこと。
「業力」とは、行いの力のことです。
ということです。
あなたの行いを変えないかぎり、同じような人が現れ、同じような運命に悩まされるでしょう。
あなたが少しでも、行い(業)を変えれば、未来の運命は変えられるのです。
人生を本気で変えたいのなら、あなたが自分の人生を生きるために、人生の目的を知ることです。
人生の目的が5ステップで分かる
特典つきメールマガジンの登録は
こちらから
生きる意味やヒントを見つけるための特集ページです。