会社で頑張っているのに、周囲から認められない
こんにちは、高松です。
私は仏教講師として活動していますが、特に20代から50代までの人と接することが多く、講座が終わった後、ご縁のあった人とよく食事に行きます。
先日その食事の席で、ある20代の女性・Rさんから悩み相談を受けました。この悩みはRさんに限らず、よく受ける相談の一つです。個人に限定されない形で紹介したいと思います。
会社に入って2年半になります。
新人の頃は、右も左も分からないので、必死に頑張ってきました。
仕事も覚え、これから自分の力を発揮できるはずと思っているのですが、いまだに上司や先輩からあまり認めてもらっていないことが、上司や先輩の態度から伝わってきます。最近入った後輩との差がほとんど感じられません。
どうしたら認めてもらえるのでしょうか。
特に上司からパワハラやセクハラを受けたという悩みではなく、認めてほしいのに認めてもらえないというお悩みです。このようなことは皆さん、口に出して言わなくても、よくあるのではないでしょうか。
私たちは、よいと思ってやったことがよくなかったり、反対によくないだろうと思っていたことが結果的によかったりと、自分の判断基準があてにならないことが多いですよね。そこで何でもそうですが、分からないことは専門家に聞くのが一番いいのです。
仏教を説かれたお釈迦様は、私たちが幸せになる方法をご存じなので、一人一人の悩みに対して教えを説かれたのでした。その記録がお経であり、7000冊余りの膨大な数となったのです。「ですから、いまRさんが悩んでいることの解決方法も、お釈迦様はすべてご存じなのですよ」とお話しして、私はまず次のように問いかけました。
他人の評価は何によって決まるのか
「Rさんは、どうして認められたいのですか?」
「それはそうじゃないですか! 認められた方が気分がいいし、仕事に対するストレスもかなり減るし、色んなことも任せられるようになるし。私はみんなに認められたいんです」
「そうですよね。認められている人たちの中にいると居心地はいいですよね。反対に自分のことを分かってくれない、認めてくれない人の中にいると、息が詰まってしまいますよね」
こう答えると、Rさんは繰り返し、頷きました。
「では、Rさんは、どんな人のことを素晴らしい人だと認め、評価しますか?」
私は今度はこのように質問を投げかけました。
Rさんはしばらく考え込んだ後、次のように答えてきました。
「えーと、やっぱり、みんなに気を配って、仕事も真面目に頑張ってて、時間も守る、部下に優しい、こういう人じゃないかなあ?」
「なぜそう思ったのですか?」
私は重ねて聞きました。
「なぜ?って、うーん、やっぱり気を配ってもらえると働きやすくなるし、仕事を真面目にやってくれれば、会社の業績が上ることに繋がるし、会社の業績が上れば、私のボーナスにまで反映するし、優しい人となら一緒にいたいし……」
「なるほど、そうですね。ところでRさん、いまRさんが言ったことには共通点があるのですが、それ分かりますか?」
「???」
Rさんは困惑の表情を浮かべていました。
他人の評価はその人の都合によって変わる
「Rさん、私たちはね、人の評価は自分の都合によって、よくなったり、悪くなったりするんですよ」
私がこのように話をすると、Rさんは、またまた困惑の表情を浮かべました。
「いま言ったことは、どういうことかというとですね、私たちは人の評価を自分の『都合』でよく言ったり、悪く言ったりしているんですよ」
いまだによく分からないという表情を浮かべていましたので、例え話をいたしました。
「ある奥さんが、夜遅く1人で家にいた時の出来事です。『ピンポーン』とチャイムが鳴ったので、こんな遅くに一体誰だろうとドアホンから覗くと、宅配便業者の帽子を深くかぶった男が部屋の外で待っていました。単身赴任中の主人が何かの荷物を送ってきたのかなと思い、ドアを開けたところ、そこにはナイフを持った男性が立っていました。Rさん、この宅配業者はナイフを届けに来たのでしょうか?」
「違います。強盗です(笑)」
「そうですね。いやー、こんな時に強盗とは困ったな。よく考えたら、こんな時間に宅配便なんかが来るはずないじゃないか、うかつだった。どうしようか?」
こうやって困っていた時に、なんと、そこにちょうどパトロール中の警察官がやってきたのです。
「こんばんは! 最近、宅配業者を装って強盗がここらで頻繁に出ておりますので情報提供お願いします、あっ!」
ここまで例え話をしてからRさんに質問をしました。
「Rさん、この時に奥さんの立場だったら、警察官をどんなふうに思いますか?」
「なんていい人だと思います!」
Rさんは即答しました。
「そうですよね。タイミングバッチリですものね。では、この強盗は、警察官のことをどのように思いますか?」
「? えーと、なんで今くるんだ、コノヤローって感じですか?」
「そうですよね。いい人だとは思いませんよね」
「はい、それはありません」
「ではこの『警察官』はいい人ですか、悪い人ですか?」
「えー、そりゃあ、やっぱりいい人なんじゃないですか?」
「だけど、強盗は悪い人だと思ってますよね」
「だけど、強盗はよくないことだから、強盗は悪い人です」
Rさんは私が何を言おうとしているのか分からないという表情を浮かべていました。
「Rさん、この話には続きがありましてね、この奥さん、次の日、買い物に行った時に駐禁をとられて、罰金をとられたんです。しかもそれを見つけた警察官が、昨日助けてくれた警察官だったんですよ」
「うっ、微妙ですね」
「奥さんは、駐車場が一杯だったとか、そんなに長く停めていないとか、言い訳を頑張ったんですけど、全然聞いてもらえなかったそうです。この警察官は、いい警察官と思えますか?」
「思えません」
「そうですよね。でも昨日は、いい警察官と言っていたのですよ。なんで、今日はそうは思えないのですか?」
沈黙しているRさん。私は話を続けました。
「これはですね。私の『よい人、悪い人』の判断基準は私たちの『都合』なのですよ」
今日ほめて明日悪く言う人の口 泣くも笑うもウソの世の中
「確かに!」
Rさんの表情が、急に明るくなりました。私が言おうとしたことを納得してくれたようでした。
「あの有名な一休さんが、こんな歌を詠んでいます。
『今日ほめて明日悪く言う人の口 泣くも笑うもウソの世の中』
なるほどなって思いません?」
Rさんはすぐさま、
「思います、思います。そっかあ、なるほどねぇ! 確かに好き嫌いとか変わるのは、私の都合だったんですね。都合は変わりますもんね。なるほどー!」
「はい、だからいま、自分が『この人好き』と思っていても、嫌いになることはよくあるし、反対もありますよね。これ全部、私の都合だったんです。これは、私が変わるように、相手のほうも変わるのですよ。心はコロコロ変わるものですだから『ココロ』と言われるんですね」
「そういうことか、仏教には本当に様々なことが教えられているのですね」
「はい、そうなんです。仏教は『法鏡(ほうきょう)』といわれます。『法鏡』とは、真実を映す鏡ということです。鏡に近づけば近づくほど、自分の姿がハッキリしてくるように、仏教を聞けば聞くほど知らされてくるのが本当の自分の姿です。自分の姿が正しく分からないと、本当の幸せにはなれません。ちょうど、病気の正しい原因が分からなければ、正しい治療ができないのと同じです」
ここまで聞いたRさんは目を輝かせていました。
「なるほどー! そういうことなんですね。これは仏教聞いたほうが絶対いいですね。これからもいろいろと聞かせてくださーい!」
相手の評価は相手の都合、だから相手は何を望んでいるのか
「ここまで聞いてきて、Rさんの質問に対する対処方法は分かりましたか?」
「うーん、多分、分かったような気がするけど……」
自信なさそうにRさんは答えましたので、このように私は答えました。
「上司や先輩が、どんなことを望んでいるのかを正しく知ることが大切です。そういう努力は今までしてきましたか?」
「いえ、全く」
「では、その種まきを変えることから始めていきましょう」
「なるほど、分かりました。相手にとって都合のいい存在になればいいのですね!」
「うーん、言い方が悪いですが、相手の望んでいることを実現する人になれば、相手の評価は必ずよくなりますからね。頑張ってくださいね」
「はい、頑張ります。先生、ありがとうございました」
その後、Rさんから聞いた話では、人間関係が今では順調で、逆に後輩へアドバイスをしているそうです。
「相手の都合を知れ」
と。
(関連記事)
人生の目的が5ステップで分かる
特典つきメールマガジンの登録は
こちらから