人間関係

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従業員の主体性を取り戻した物流会社社長の「心の経営」とは?

こんにちは、佐藤です。

あなたは、普段、職場で人と接するとき、どのようなことを心掛けていますか?

私は過去に相手にメールでお願いをするとき、相手に伝わるようわかりやすい文章を心掛けて送っていたのですが、あまりに素っ気ない文章のため相手に「思ったことを何でも言う冷たそうな人」という印象を与えていました。

何がいけないんだろうと悩んでいたとき、友人から紹介してもらった本が、『社長の仕事は社員を信じ切ること。それだけ。』(著者:宮田博文、出版社:かんき出版)でした。

私自身の仕事観が一変した本書の内容をご紹介します。

失われた主体性、助け合いの精神。数字に囚われた経営の限界

『社長の仕事は社員を信じ切ること。それだけ。』の著者・宮田博文さんは、「人に思いやる会社」として各新聞に取り上げられている宮田運輸物流会社の社長です。

この本は、会社経営の困難を乗り越えてゆく中で、社員への接し方について著者自身に表れた変化の物語です。

平成24年4代目の社長に就任した宮田さんは、25年後の70周年には「売上高300億円、従業員2000人の規模に成長させる」と目標数値を打ち出します。

明確な目標に向け、従業員を引き締め、管理しながらビジョンを達成する事業体をイメージしていましたが、従業員の主体性は消えていきました。

従業員は効率よく仕事をこなすだけの存在になり、助けようとも人の役に立とうとすることもなくなります。

その最中、ある従業員が運転していたトラックがスクーターと接触し、スクーターに乗っていた男性が亡くなってしまいます。

この事故をきっかけに社長は、「社員は評価し、管理する対象」ではなく、「1つの命」として見るようになり、従業員やお客様の「心」をベースにした経営へと切り替えました。

そして、本書のタイトルにもあるように、従業員の主体性を生み出すためには、「リーダーが従業員を心の底から信じること。それだけ」という結論に至ります。

「結果を出したい」私に欠けていた大切な視点

本書では、経営者や現場のリーダーが何よりも最初にすべきことは、誰もが優しい心、「人助けをしたい」という想いを持っていると信じること、人の心を信じ切ることだと書かれています。

この本を読むうち、会社員だった頃の苦い記憶が駆け巡っていました。

当時、私は、講座でCAD商品の紹介をする仕事をしていました。

CAD(computer aided design)とは、コンピュータ支援設計とも訳され、パソコンを用いて建物や車といった機械、部品の設計図が描けるソフトウェアです。

実際にお客さんを会社に招き、お客さんに商品に触れてもらいながら紹介するスタイルでした。

講座を始める前には準備が必要です。CAD製品が正常に動くか確認したり、お客さんに紹介する資料作成、アンケート作成など。

講座は他の社員と協力して行います。

会社のため、お客さんのために一緒に仕事をしてきましたが、一緒に働く仲間としての意識は低かったと思います。

人を信じることよりも結果を出したい気持ちのほうが当時は強かったのです。

成果を出すことが善いことだと思っていた私は、

「本当にあの人は書類を明日までに作れるのだろうか?」

「もっとこうすればいいのに、何で違うやり方なんだろう」

とばかり考えるだけで、本書に書かれているように他の社員を、一緒にいる相手を信じていませんでした。

その結果、講座の準備をする際、人と協力するのを億劫に感じる気持ちが強くなり、仕事が苦痛な時間になっていきました。

社員が生まれ変わった経営

そんな私がこの本を読んで、特に心に残ったのが、「中国地方で事故を起こした運転士に対して、事故現場に駆けつけた事務所の所長が、最初に言ったのが『生きててくれて、ありがとう』という感謝の言葉だった」というエピソードです。

もし、自分が事故を起こした運転士の立場だったら、どうでしょう?

事故を起こした責任が重くのしかかる他、これから先どうなるんだろうという不安で一杯になるかもしれません。

そんな精神状態で「何で事故を起こしたんだ」と問い詰められても、精神的に責められるだけで、冷静な受け答えは難しいのではないでしょうか。

運転士は、「事故現場に最初に所長が来てくれたことも嬉しかったですし、『ありがとう』と言われたことが忘れられません」と話したそうです。

一方的に事故原因を調べることを最優先するのではなく、まずは相手を気遣うことが最終的には最高の再発防止策になります。

売上、利益の数字だけに着目していると忘れがちな気遣いですが、このように、宮田社長は、その見えない部分・社員の心にフォーカスしていきました。

その結果、従業員が

「自分のやっていることにどんな意味があるのか」

「全体の流れの中に自分がどう参画しているのか」

「その仕事の結果が誰かを助けるものなのか」

がわかり、心の底から「やろう」と主体性を発揮するようになったのです。

普通は、会社を経営するために人を雇い、使っていくと考えます。

ですが、そうではなく、「人が成長し、自信を持ち、笑顔になっていく。会社はそのためにある」という価値観が浸透していったのです。

言辞施(ごんじせ)|相手を思いやるねぎらいの言葉

この本を読んで、私も日常生活で心掛けるようになったことがあります。

それは、どんなに些細なことでも、人に何かをしてもらったときは「ありがとう」と言うことです。

相手を心から思ってやったことは、必ず相手から前向きな反応が返ってきます。

事がうまく進まないとき、ついつい相手のせいにしたり、不平不満の言葉を言いたくなるかもしれません。

そうならないためにも、まず相手を信頼し、温かい言葉遣いに心掛けることがとても重要だと知らされました。

仏教に、「無財の七施」というものがあります。

お金や物、人より秀でた才能や能力がなくても、思いやりの心さえあれば、誰にでもできる七つの施しです。

そのうちの一つに、優しい言葉やねぎらいの言葉を伝えることを「言辞施」(ごんじせ)といいます。

今、多くの経営者が効率やコスト重視の経営に限界を感じているそうです。

ロボットのようにただ言われたことを効率よくこなそうとするだけでは、お互いに助け合うことも、人の役に立とうとすることもなくなります。

目標や数値ばかりを気にして人を疑い、コントロールしようとしていては、経営も人間関係も行き詰まってしまうでしょう。

相手にやさしい言葉をかけることを大切にし、より良い人間関係を築いていきたいですね。

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この記事を書いた人

Webライター:佐 藤

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