【目次】
はじめに 「ポジハラ」とは?無理にポジティブにならなくていい
- 変わらない理由――少ないサンプルで決めつけているから
- 変わらない理由――変わるまで行動していないから
- 変わらなかったと感じても、絶対にムダにはならない
- 変わる気力がない。因縁が揃うまでは準備期間
- 動けなくても、変われる秘密
- 変わらないのは心が悪いから?やっぱりポジティブ思考のススメ?
はじめに
今回はこんなお悩みについてです。
行動しても、変わらなかったです。前向きになれません。
「ポジハラ」(ポジティブ・ハラスメント)という言葉があるくらい、ポジティブの強要は、圧力を感じて離れたくなりますよね。
心理学的には、ネガティブなことにも理由があると考えます。
無理にポジティブを目指すのは、かえって問題が生じる「ポリアンナ症候群」もあります。
詳しくはこちらの記事で紹介しています。
「前向きになれない」「ポジティブにならなきゃ」と自分をいじめる必要はありません。
ネガティブな自分は嫌、という気持ちも持っていらっしゃるようですから、そのネガティブが緩和されるくらいを目指して、今回は考えてみましょう。
(1)「性格は変わらない」と思い込んでいるから
(2)変えられる部分と、変えられない部分を区別していないから
(3)変わりたい理由が曖昧だから
(4)今あるものを活かさずに、ないものねだりしているから
(5)本音では「変わらなくてもいい」と思っているから
(6)少ないサンプルで決めつけているから
(7)変わるまで行動していないから
最初の5つはお話ししました。
今回は、最後の2つについて、お話しします。
(7)変わるまで行動していないから
変わらない理由――少ないサンプルで決めつけているから
統計学には「大数の法則」があります。
コインが5回連続で「裏」が出ていても、500回、1000回と投げる回数を増やすほど、裏が出る確率は50%に近づいていきます。
「私ってどんな人?」と質問したとして、たった2人の意見をうのみにするのではなく、100人の意見を聞けば、良い意見も同じくらいは出るはずです。
前向きになれないときも、大丈夫。
無理にポジティブに考えようとしなくても、サンプルを増やせば、自然と印象は変わるはずです。
ポジティブでもネガティブでもなく、より「現実的な」考えに近づくでしょう。
転職も恋愛も、たった1回、成功すればいいのです。
研究・工夫をすれば、たしかに早く成功するかもしれません。
ですが、それ以上に、ただ単にサンプル(行動した回数)が少ないだけかもしれません。
行動の回数を増やすだけでいいのです。
淡々と、回数をこなしていきましょう。
変わらない理由――変わるまで行動していないから
「変わるまで行動しなさい」と、無理に勧めるわけではありません。
行動しようとしても、どうしてもできないこともあります。
「行動しても、変わらなかった」
そう思われることも、あるでしょう。
実際、やってもやっても結果が出ないことはあります。
前向きになれないのも、当然です。
しかし、行動したその因が、消えてしまうことはありません。
あなたが幸せになるか、不幸になるか。
運命の因果関係を、端的にあらわされたのが「因果の道理」です。
悪い行いをすれば、不幸や苦しみを引き起こす。
自分に現れるすべてのものは、自分のやった行いによる。
因果の道理は、いつでもどこでも変わらない普遍的な法則です。
国や時代によって変わるとか、これだけは例外、ということは絶対にありません。
「道理」には、例外はないのです。
原因があれば、必ず結果が生じます。
原因なくして起きる結果は、万に一つ、億に一つもありません。
わかりやすく言うと、
まいた種は、必ず生える。
「種をまく」とは、「行動する」ということです。
行動を起こして、結果はない、ということはあり得ません。
変わらなかったと感じても、絶対にムダにはならない
相当、努力したのに、結実しなかった……ということもありますよね。
前向きに頑張ってきたけれど、もうダメだ。前向きになれない。
そういう時もあるでしょう。
もしかしたら、それはまだ、実る時期が来ていないだけかもしれません。
梅は酸い酸い十三年、梨はゆるゆる十五年
柚子の大馬鹿十八年、蜜柑のまぬけは二十年
林檎にこにこ二十五年、銀杏のきちがい三十年
表現には諸説ありますが、同じように種をまいても、果実という結果になるまで、時間に差があるということでしょう。
3年で実る桃や栗は、結果がわりとすぐ現れるので、わかりやすいですね。
しかし、柚子、蜜柑、銀杏などは、種をまき、芽が出て、木になり、実るまで、かなり時間がかかるため、大馬鹿、まぬけ、きちがいと言いたくもなるのでしょう。
仏教でも、行い(因)と縁が結びついて結果を生む時期には、早い遅いの違いがあることを、こう教示されています。
順次業……現在世の行いの結果が、次の生で現れるもの
順後業……現在世の行いの結果が、さらに後の生で現れるもの
このように、因果の道理は、現在世だけで完結せず、三世を貫く「三世因果」と言われます。
現在世……生まれてから死ぬまで
未来世……死後
スケールが大きくて、ピンとこないかもしれません。
しかし、種をまけば、必ず結果は現れます。
いつ結果が現れるかは、わかりませんが、100%結果が現れるのです。
私はよく「苦手なことを避けても、未来に、持ち越すだけ。いつか必ず壁にぶち当たる。今、克服してしまおう」と思っています。
年老いてから、同じ問題にぶち当たったら、もっと苦労するかもしれません。
現在世で逃げ切れても、未来世に持ち越すだけかもしれません。
「行動しても、変わらなかった」
そう感じたとしても、それは、短いスパンで、近視眼的に捉えているだけ。
あなたの行動は、絶対にムダにはならないのです。
変わる気力がない。因縁が揃うまでは準備期間
でも疲れていて、そこまでの気力が起きません。
今はまだ、いろいろなものが揃わないこともあります。
前向きになれないのは、「気力」や「条件」が揃っていないのでしょう。
仏教の言葉でいうと「機が熟していない」「因縁が揃わない」ということです。
「二千年蓮」を知っていますか。
千葉県検見川遺跡の二千年前の地層から、蓮の種が発掘され、開花したのです。
ふつう、蓮の芽が出て開花するまで、たった20日ほどです。
それなのに、土の状態や湿度、温度、日光……といった因縁が揃わず、二千年も種のままでした。
二千年も経ってから因縁が揃って、開花したのですね。
植物の種なら腐ってしまうこともありますが、行い(因)は絶対に消えないとお釈迦様は言われます。
体調や、環境、仕事、まわりの人など、因縁が揃わず、なかなか芽が出ないこともあります。
無理をして体を壊してしまっては、遠回りになることもあるので、因縁が揃うまでは準備期間です。焦らず、でもあきらめず、今できる行動でいいから、行動を続けたいものです。
行いの種は消えないので、「やってもどうせ無駄だ」「自分はダメだ」と思って不貞腐れることはありません。
動けなくても、変われる秘密
大変な中、よく頑張っていらっしゃいますね。
そういう時も、大丈夫です。
行いにも、3つあります。
心・口・体の行いです。
なかでも「心」の行いがもっとも重いと言われます。
口や体を動かしているのは「心」だからです。
口や体は、心の表現です。
さまざまな事情で、思うように行動を起こせないときもありますよね。
病気で入院し、自由に出歩けない。
介護で、時間もとれない。
年老いて、思うように動けなくなった。
そういう時でも、心の行いは、思い立った時、変えられます。
ほとんどの人が知らない「動けなくても、変われる秘密」。
それは、行いには「心」も含まれることです。
心の行いも、すべてあなたの行動のひとつであり、結果につながってゆきます。
変わらないのは心が悪いから?やっぱりポジティブ思考のススメ?
もちろん、「心」でどんな行いをしたかによって、結果は変わります。
しかし同時に「人間は、欲・怒り・愚痴の心いっぱいの、煩悩具足の凡夫」と仏教では言われます。
そういうことも、あるでしょう。
「心」の行いを、よくよく見つめると、弱音、愚痴、怯え、不安、身勝手、怠け、怒り、他人なんてどうでもいい、面倒くさい、自分さえよければいい……。悪い行いの、いかに多いことでしょう。
そう感じているのは、あなただけではないと思います。
すべての人は煩悩具足、と言われます。
有名な『歎異抄』には、そんな煩悩具足の「悪人」のために説かれたのが仏教だと書かれています。
これを「悪人正機」と言われます。
「悪いことをしてもいいんだ」とまちがえると、因果の道理の「悪因悪果、自因自果」で、必ず悪い結果があなたに現れます。
「善いことをしよう」と心がけて初めて、「悪い心がうごめいている」「悪いことばかりしてしまう」自己の姿が見えてくるのです。
「こんなにできているから」と自惚れたり。
そういう人は、悪い心をもつ自己の姿に、なかなか気がつかないかもしれません。
ポジティブになればいいというわけでもないのです。
「変わろうとしたけど、変わらなかった。ダメだった」
「ネガティブな自分を何とかしたいけど、どうしたらいいか分からない」
前向きになれなくても大丈夫。
そんなあなたのための、仏教です。
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