こころ

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レジリエンス(折れない心)の鍛え方②挫折からの立ち直りを妨げる「永続化」の克服法

こんにちは、ライターのゆうです。

仕事の失敗や、人間関係のトラブル、愛する人との別れなど、人生に挫折や悲嘆は絶えません。

その挫折や悲嘆としっかりと向き合い、そこから力強く立ち直る力をレジリエンスといいます。

レジリエンスは大きな挫折・悲嘆だけでなく、小さなストレスを乗り越え、日々を健康に過ごすためにも必要です。

そのレジリエンスはあらかじめ決まっているものではなく、立ち直りを妨げる「3つのP」への対処法を学び、身につけることで高めることができます。

「3つのP」とは

  • Personalization(=自責化)
  • Pervasiveness(=普遍化)
  • Permanence(=永続化)

です。

何か悪い出来事が生じたときに、「このサイテーな出来事は全部自分のせいだ(=自責化)、何もかもがサイテーだ(=普遍化)、このサイテーがずっと続いていく(=永続化)」と思ってしまうと、立ち直るまで多くの時間を要し、最悪の場合は精神的な病を患うことになります。

反対に、この「3つのP」にうまく対処できれば、すばやく立ち直れるだけでなく、人間的に成長することもできるのです。

前回は「自責化」への対処をご紹介しました。

今回は、「永続化」への対処法についてお話しします。

いちばん手こずる「永続化」の克服

「3つのP」への適切な対処法について、フェイスブックのCOO シェリル・サンドバーグ氏の実体験をもとに書かれているのが『OPTION B(オプションB)』です。

不慮の事故によって最愛の夫を失い、悲嘆に暮れていたシェリル・サンドバーグ氏は、友人の心理学者 アダム・グラント氏に助けを求め、グラント教授の確かなデータにもとづくアドバイスによって立ち直ることができたのです。

「3つのP」の中でも、「悪いことがずっと続いていく」と思う永続化が、シェリル氏は「いちばん手こずった」と言っています。

これはシェリル氏に限ったことでなく、感情予測の研究で「人はネガティブなできごとの影響が、実際より長く続くと予測しがちである」ことが明らかになっているため、あらゆる人にあてはまるといえます。

たとえば、恋人との別れを経験してしまった場合、気持ちの落ち込みがどれくらい続くかを予測してもらうと、実際に立ち直るまでよりも、もっと多くの時間が立ち直りには必要だ、と思うそうです。

短い時間で立ち直れるはずなのに、「まだまだ時間がかかる」と思い込むと、症状はなかなか回復しなくなってしまいます。

そんな永続化を克服するには、どうすればいいのでしょうか?3つの方法をご紹介します。

永続化を克服する3つの方法

①禁止ワードの設定

1つ目の方法は、自責化への対処と同じように、永続化のサインとなる言葉を使わないことです。

どんな言葉が永続化のサインとなるでしょうか?

「けっして」とか「ずっと」のような言葉を使っていると、永続化を強く意識することになります。

そこで、「けっして」とか「ずっと」をNGワードとし、代わりに「ときどき」「最近」という言葉を使うようにしましょう。

「私はずっとひどい気分だろう」「この悲しみが癒えることはけっしてないだろう」ではなく、「私はときどきはひどい気分になるだろう」「悲しみが最近は、以前と比べてちょっと癒えたかもしれない」と置き換えることで、立ち直りの兆しが見えてくるのですね。

②認知行動療法を試す

これも、自責化への対処のところでご紹介した「書く」ことを取り入れた方法です。

自分の今の思いを言葉にして書いていきます。そうすると、永続化のサインが次々に現れてくるでしょう。

シェリル氏の場合は、彼女を苦しめた思いの1つが、「父親を失った私の子どもたちは幸せになれないのではないか?」というものでした。

その思いに対して、「反論」を書き加えることで、それが思い込みであったことに気づき、元気づけられるのです。

適切に反論するときのポイントは、「証拠はあるか」「別の考え方はできるのか」と問いかけることです。

「父親を失った私の子どもたちは幸せになれないのではないか?」という思いに対し、「ではその証拠はあるのか」と問いかけてみましょう。

すると、その証拠があるどころか、シェリル氏は「親を失っても幸せに生きている子どもたちをたくさん知っている」という事実に気がつき、思い直すことができたのです。

あるいは「別の考え方はできるか」と問うことも有効です。

「父親を失った」のは事実であり、変えることはできません。しかしそこにばかり目を向けていては、気落ちしてしまうでしょう。

そこで、変えられる部分に目を向けてみます。

「いまの私が子供たちにできることは何か」「実際に子供たちはどう思っているのか」ということに着目すれば、気持ちを切り替え、前向きな行動へとつながっていくでしょう。

これは、仕事での失敗や人間関係でのトラブルにも同様に使える方法です。

「そもそも自分の思いの証拠はあるのか?」「変えられるところはどこだろうか?」と問いかけ、反論してみてください。

③「考え得る最悪の事態」を想像する

3つ目の方法について、シェリル氏はこう語っています。

私の立ち直りにもっとも役立ったことのひとつは、「考え得る最悪の事態が起こっていたら」と想像することだった。

現状と、考え得る最悪の事態とを比較することで、気持ちを落ち着かせることができるのです。

実際にシェリル氏は、「主人と2人の子ども、3人とも失っていたら…」と想像したその瞬間、子どもたちが元気に暮らしていることに途方もない感謝の念が湧いてきた、と言われています。

もちろん現実がつらいことに変わりはありませんが、「もっとひどいことが起きていたら…」と思い浮かべることで、気持ちが落ち着ついたり、シェリル氏が語るように感謝の念さえも起こり得たりもするのですね。

このように、実際とは異なるストーリーを「反事実」といい、脳は常に反事実を創り出しています。

仮に、「自分はもっと幸せになれるはずだったのに」という反事実を創り出せば、不幸な現状とのギャップで、ますます落ち込むことになります。

反対に、最悪の事態を想像することは、現状を前向きに受け止めるのに有効なのですね。

解決方法を得たきっかけは、仏教で説かれる真理

シェリル氏が、3つの目の解決方法を得たのは、「仏教で説かれる真理がきっかけだった」とも語られています。

それは「苦諦(くたい)-人生は苦なり」という真理です。

仏のさとりを開かれたお釈迦さまは、「人生は苦なり」とおっしゃり、人生には避けることのできない苦しみがあると言われました。

その苦しみとは「四苦」(生苦・老苦・病苦・死苦)です。

「確かにそれらは避けることはできないかもしれないが、そんな先の苦しみを考えても暗くなるだけだ」と思われる方もいるでしょう。

しかしシェリル氏は、こう語っています。

老、病、死は避けることができない。
この世には喜びもあるが、どんなに手を尽くしてもいつしか消えてしまう。
私たちはこの真理を受け入れるとき、苦悩が和らぐ。

暗くなるどころか、苦悩が和らぐと言われているのです。

それは、老・病・死という、やがては直面する非常に大きな苦しみと比較すれば、今の苦しみは大きなものではないと感じ、その苦悩が和らぐ、受け入れることもできる、ということでしょう。

コーピング(ストレスへの対処法)の1つに、「大きな視野で物事をとらえる」という方法があります。

人生という大きな視野からいまの苦しみを見つめることで、相対的に小さなものとしてとらえることができるのですね。

最後に

永続化への対処として、

  • 禁止ワードの設定
  • 認知行動療法を試す
  • 「考え得る最悪の事態」を想像する

をご紹介しました。

挫折や悲嘆、また日々の小さなストレス、悩みを解消するために、ぜひ日常で取り入れていただければ幸いです。

最後にお伝えしたいのは、老・病・死の苦しみと比較することで、いまの苦しみを和らげることはできるのですが、老・病・死のそのものがやってきた場合はどうするか、ということです。

それらは必ずやってくる苦しみであり、避けることはできません。

実は、この老・病・死の苦しみがありならも、それでも「人間に生まれてよかった」と喜べる幸せがあることが仏教で教えられています。

お釈迦さまが厳粛な事実を明らかにされたのは、その本当の幸せを教えられるためだったのです。

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この記事を書いた人

ライター:ゆ う

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