こころ

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「ダメとわかっているのにやってしまった…」をなくす|卑劣で衝動的な行動を回避する方法

こんにちは、ライターのゆうです。

喫煙や間食、夜ふかし、相手に余計なひと言を発してしまうなど、自分では良くないと思いながらも、ついやってしまう望ましくない習慣は誰にでもあるでしょう。

あるいは運動や専門分野の勉強、外国語の習得など、望ましいとわかっていながら取り組めない行動もあると思います。

そんな望ましくない行動をやめ、有意義なことに時間を使い、自分を良い方向に進ませるにはどうすればいいのでしょうか。

そのために知っていただきたいのが「トリガー」です。

トリガーとは、「私たちの考え方や行動に影響を与えるすべて」をいいます。

善いトリガーは望む行動へと私たちを後押ししますが、悪いトリガーが引かれると、たちまち望ましくない行動へと引き寄せられてしまいます。

ゆえにトリガーに関するメカニズムを知り、トリガーを味方につけることが、行動改善には不可欠ともいえるのです。

トリガーを味方につけ、行動改善を促す方法として以下の3つをご紹介しています。前回は1番目の「トリガーを分類する」についてお話しました。

  1. トリガーを分類する
  2. トリガーと行動の関係を知る
  3. “能動的な質問”の力を利用する

今回は2番目の「トリガーと行動の関係を知る」についてご紹介していきます。

※下記の内容は、世界的なエグゼクティブ・コーチであるマーシャル・ゴールドスミス氏の著書『トリガー 自分を変えるコーチングの極意』を参考にしています。

トリガーが引かれても、行動は「選択」できる

トリガーとは、行動の引き金となるものであり、引き金がひかれれば特定の行動をせずにおれなくなります。

肉の焼けるいい香りがしてくれば、食事制限をしているときでも、いい香りのする方向へ動き出したくなりますし、人から注意を受ければ反論したくなったり、自己弁護をしたくなったりするでしょう。

ではトリガーが引かれれば、私たちはそれにまったく抗えず、望ましくない行動の抑止はできないのでしょうか?

トリガーと行動との間には、何も入り込む余地がないのでしょうか?

このことについてマーシャル・ゴールドスミス氏は「私たちはトリガーに対して、自動的に何も考えず、習慣的に反応するわけではない」と語っています。

確かにトリガーが引かれることで、一定の方法で行動をしたい衝動に駆られます。

甘いものを見れば一口食べたくなったり、仕事のミスを指摘されれば言い返したくなったりしますね。

それを実際に起こせば食事制限の積み重ねがフイになったり、相手との良好だった関係にヒビが入ったりしてしまいます。

このようにトリガーは衝動に駆り立て、私たちに卑劣な行為を引き起こさせる可能性があるのです。

しかし同時に私たちは、衝動を抑えて一瞬立ち止まり、その衝動に従うべきか無視すべきかを選ぶこともできるのです。

それでは、悪いトリガーが引かれて、卑劣な行動へとつながる衝動が起きたとしても、適切に行動を選択するにはどうすればいいのでしょうか?

世界的コーチVS世界的経営者

衝動を抑えて好ましくない行動をいかに避けるかにあたって、ゴールドスミス氏は1つのエピソードを紹介しています。

それは、ゴールドスミス氏がコーチングをしているクライエント17名を招待したディナーでの出来事です。

ディナーは、翌日の集中セッションの前に、互いを知り合うための懇親会として開催されました。

その途中、ゴールドスミス氏がクライエントたちに、こう提案しました。

ここにいるみなさんにお願いがあります。

ディナーの間、「話の途中で口を挟まない」「批判的なことは言わない」と約束していただきたい。

それを破ったら、その場で、1回につき20ドルいただきます。

同意する方は挙手をお願いします。

すると、17名全員の手が挙がり、ゴールドスミス氏の提案は参加者全員に受け入れられました。

それから10分後、どのような光景が繰り広げられたと思いますか?

20ドル紙幣がテーブルの真ん中に積まれ、400ドル以上になったといいます。30分後にはさらに20ドル紙幣が置かれ続け、金額は2倍になりました。

ある時点で現金を使い切ってしまい、テーブルを離れ、銀行のATMに行った男性もいたそうです(その男性は世界的企業の元CEOです)。

ディナーに集まった人たちは、自制心のない怠け者の集団ではありません。社長やCEO、100万ドル以上の資産を持つ起業家ばかりでした。

しかし17人のゲストのうち16人は罰金の20ドル紙幣を取り出す羽目になったのです。

「口を挟まない」「批判的なことを言わない」という衝動を抑えて、不適切な行動を避けることがいかに難しいか、このエピソードからわかりますね。

唯一、不適切な行動を回避した人のとった方法とは?

この結果を聞いて、1つ、疑問に感じたことがあるかもしれません。

それはクライエント17人中、たった1人、20ドルを払うことなくディナーを終えた人は、どのようにして衝動を抑えられたか、ということです。

その1人は弁護士のレニーという人でした。レニーさんはどのようにしてルールを遵守したのでしょうか?(ディナーが終了するまでひと言も発しなかったわけではありません。ほかの参加者と同じように会話をしていました)

レニーさんは「途中で口を挟まない、批判をしない」と書いたインデックスカードを取り出し、水の入ったコップの下に置いて目に見えるようにしたのです。

答えを知れば「そんな単純なことだったのか」と思われるかもしれませんが、ほかの16名が全員罰金を払うハメになったことを思えば、効果は絶大ですね。

インデックスカードというトリガーによって、衝動を抑え、状況を認識し、その場に応じた適切なふるまいを選択できたのです。

ポジティブ心理学者のマーティン・セリグマン氏は、ネガティブな思考に陥らないために

  • 大きな鈴を鳴らす
  • はがき大の紙に〝ストップ〟と赤で大きく書いて持ち歩く
  • 手首にゴムバンドを巻いておいて、反芻(同じことを繰り返し否定的に考えること)が起きそうになったときはパチンとはじく

などの対策を立てたことで、多くの人が習慣的な思考パターンを断ち切っていると語っています。

気をそらせる方法を見つけ、ぜひ習慣化してみてください。そうすれば衝動に駆られて行動することの多くを避けられるでしょう。

卑劣な行動を防ぐ自問自答「AIWATT(エイ・ワット)」

衝動を抑える方法で、ゴールドスミス氏自身が実践していることとして紹介されているのが「AIWATT(エイ・ワット)」です。

「AIWATT」とは、自分への問いかけの頭文字をとったものです。

Am I Willing At This Time
To Make The Investment Required
To Make A Positive Difference
On This Topic?

衝動に駆られたとき、ゴールドスミス氏は常にこう問いかけ、前向きな選択ができるようにしているといわれています。

「私は、今、この案件でポジティブな違いが表れるように必要な投資をする気があるか?」という意味です。

こう自問することで、

「言わなくてもいいことを言って、相手を傷つけよつとしているだけではないか?」

「余計なことをやって、ネガティブな結果をもたらすことにならないか?」

と冷静さを取り戻し、卑劣な行動を防ぐことができるのです。

ゴールドスミス氏は、「この問いかけは、この何十年の間に、私が価値があると思ったアドバイスから得たものだ」と語り、その価値あるアドバイスの1つが仏教の教えであるとも言っています。

ゴールドスミス氏に影響を与えた仏教の教えとは、ある農夫についてのエピソードです。

若い農夫が収穫した農作物を村へ運ぼうと、舟で川の上流へ向かっていると、前方に別の舟が見えました。

流れに乗って彼の舟に向かって急速に近づいてきます。

彼は前方の舟をよけようとして猛烈な勢いで櫓を漕ぎましたが、避けられそうにもありません。

たまらず彼は舟に向かって叫びます。

「向きを変えろ!おいらの舟にぶつかるぞ!」

ところが舟は方向を変えることなく、ものすごい音を立てて彼の舟にぶつかってしまったのです。

彼は激怒して「このバカもん!こんなに川幅の広い川でなんでおいらの舟にぶつかってくるんだ!」と声を張り上げ、舟の中をのぞいて、この事故の責めを負う人間を探しました。

が、誰もいないことに気づいたのです。

彼は、係留を解かれて流れに乗って下ってきた空の舟に叫んでいたのでした。

このエピソードをとおしてゴールドスミス氏は「不運な出来事が起これば、腹を立てて誰かを責め、犠牲者を気取ることができるが、それは空の舟に向かって叫んでいるようなものだ」と言っています。

空の舟に向かって叫んでいても、得られるものはなし
自分にとって悪い結果が起きたとき、都合の悪い出来事が生じたとき、衝動に駆られ、相手を責め立ててしまうことがあります。

しかし相手を責めたとしても、相手は相手で「自分こそ正しい」と思っているのであり、相手の態度は変わりませんね。相手は悪びれもせず、自分だけがイライラし、悩むことになります。
それはまさに空の舟に向かって叫んでいる状態といえるでしょう。

仏教では、自分に現れる結果の原因は自分の行いにある、と一貫して説かれています。

これを「自業自得」といいます。自分の行い(自業)が結果を生み出し、その結果を自分が受ける(自得)ということです。

「相手を責めたとしても、それは空の舟に向かって叫んでいるようなもので、意味がない。むしろ結果が悪化する。ポジティブな違いを起こすにはどうすればいいのか」と冷静になれれば、衝動を抑え、望ましくない行動を回避できます。

その気づきを与えてくれるのが「AIWATT」の自問自答です。

「私は、今、この案件でポジティブな違いが表れるように必要な投資をする気があるか?」

周囲のトリガーを調整するとともに、不意に引かれたトリガーへの対抗手段として、「AIWATT」の実践をおすすめします。

このような、心理学と仏教の視点から、役立つ内容を、ワークショップを開催してお伝えしております。東京近辺にお住まいの方は、ぜひ、下のボタンをクリックしてご参加ください。
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この記事を書いた人

ライター:ゆ う

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