はじめに
「コミュニケーションが苦手…」というお悩みについてです。
コミュニケーションが苦手といっても、無口な人からよくしゃべる人までピンキリ。よくしゃべる人でも、「私、コミュ障」なんて言いますよね。
日本人は2万語もの言葉を小学校卒業までに学びます。日常会話レベルならたったの1000語で足りるそうです。ということは、あなたも日常会話に必要な語彙力はもっているはず。
「コミュニケーションが苦手」と言うとき、あなたの実際の悩みは、心のふれあいがうまくできないことではないでしょうか。日本人の50%くらいは対人恐怖っぽいところがあると言われたこともあったそうです。
(『世界一やさしい精神科の本』斎藤環・山登敬之著、2011年5月)
あなたが今やるべきことは、コミュニケーション能力を高める努力より、「心がふれあう方法」を学ぶことです。安心感を得れば、苦手なコミュニケーションも克服できます。
【目次】
- コミュニケーションが苦手な原因は「嫌われる不安」
- コミュニケーションの不安は、キライな気持ちの「投影」から生じている
- 「投影」をやめて自分の気持ちに気づけば、コントロール感を取り戻せる
- 嫌われるより、自分の本心にウソをつくほうがダメージは大きい
- 自分の心を知れば、幸せが見えてくる。あるがままで本当の幸せになれる
コミュニケーションが苦手な原因は「嫌われる不安」
「コミュニケーションが苦手だなぁ」とあなたが思うのは、どんなときですか?
「私が思っていること、伝わらなかったな」
「誤解されたかな」
と感じたときではないでしょうか。
もっといえば、
「嫌われたかも」
と不安になったときではありませんか。
『嫌われる勇気』(岸見一郎著、2013年12月)がベストセラーになりました。アドラー心理学では、対人関係の悩みにおいて「課題の分離」を勧めます。他人があなたのことを嫌うかどうかは、他人の自由。あなたにコントロールできることではありません。
「嫌われる不安」は、あなたの課題です。
コミュニケーションの不安は、キライな気持ちの「投影」から生じている
「嫌われたかも」と不安に思うクセがあると、自分を肯定する気持ちが下がります。好かれない私。嫌われやすい私。コミュニケーションが苦手な私。
誰かと接すると「やっぱりコミュニケーションが苦手…」と感じてしまうので、人としゃべりたくなくなります。なおさら「心のふれあい」がなくなってしまいます。
どうすれば「嫌われたかも」という不安にならずに済むでしょうか。
それには、自分の「怒り」に気づくことです。
「心のふれあい」がうまくいかなかったとき、「なんでちゃんと受け止めてくれないのよー!」「私が思った通りに反応してよ!」と怒りの気持ちが出てきます。
「私、べつに怒ってなんかない」とあなたは思うでしょうか。
人間の基本的欲求に「わかってほしい」という気持ちがあります。「わかってもらえなかった」と感じるとき、欲求が満たされず「怒り」になります。幼いうちは「お母さんがわかってくれない!」と怒りを表現できますが、大人になるとストレートに表現できなくなっていきます。
怒りが出せないと、「嫌われてるんじゃないか」という不安に変換されます。
これを心理学では「投影」といいます。自分の感情を、相手というスクリーンに映し出した状態です。
脳は、自己と他者を区別できないと言われます。本心は「私はイライラする」と思っていたのに、「あの人は私にイライラしている」と変換され、不安になってしまうのです。
「投影」をやめて自分の気持ちに気づけば、コントロール感を取り戻せる
私はこの「投影」をしょっちゅうやっていました。今でもたまにあります。「あー、いま投影してる。相手が応えてくれないから不安になってる」と客観的に見るようにしています。
私のことを嫌いになる人はいる。それは仕方のないことです。でも過剰に「嫌われるんじゃないか…」と不安になっていたら、コミュニケーションが怖くなります。
不安にさえならなければ、「まぁ、相性の合わない人はいるよね」「今はどうしてもお互いに好きになれないんだな」くらいに考え、諦めがつきます。
私の場合、「投影」するクセの原因はわかっています。母親との関係です。
あなたは幼いころ、「お母さんのこと好き?」と聞かれて「うん大好き」と答えた覚えはありませんか。
幼い子供なら普通ですが、私は高校生になっても聞かれていました。本心は「もう、めんどくさい。イライラする…」と思うのに、「うん大好きだよ」と答えてしまう。母は、自分が愛されているか不安で、常に確認しないと気が済まなかったようです。それは母の課題です。
子どもにとっては、反抗期になれば、親の言うことがうっとおしくなるもの。親の要求には応えられない、自分の気持ちを自覚してこそ、やがて自分の感情をコントロールできるようになっていきます。
でも私は、母に反抗できませんでした。母が悲しい顔をするのが怖かった。「なんでこんなに育ててやってるのに、なんで嫌いなんて言うの!」と言われるのが嫌だった。だから自分の気持ちより、親の気持ちを優先していました。
2019年秋のドラマにもなった『凪のお暇』(コナリミサト著)では、親の感情に振り回されて、自分の感情を表現できず、空気を読んでばかりの主人公が描かれていました。「マンガ大賞2018」では堂々の1位、コミックは累計250万部(2019年9月時点)突破しています。
親に反抗できず、大人になっても引きずっている悩みに、共感する人が多いのだなと思います。あなたはどうでしょうか。
自分にウソをつき続けると、そのうち自分の感情がわからなくなってしまいます。
「私は母の言葉がイヤだ」という自分の怒りを封印したせいで、母に「投影」し、「私は愛されない」と思い込んでしまいました。さらには「母親さえ私を愛してくれない。他の人から受け入れられるなんてことありえない」と内心は思い込んでいて、コミュニケーションがぎこちなくなっていました。
でも「私は愛されない」というのは間違いでした。母は不安感が強く、子供よりも自分優先な行動が多かったけれど、それは愛情表現のスキルが足りなかっただけ。親にスキルさえあれば、私はちゃんと愛される存在です。
嫌われるより、自分の本心にウソをつくほうがダメージは大きい
自分は好かれない。自分なんていないほうがいい。
それ、あなたの勘違いです。自分の怒りを「投影」してしまっているだけです。
あなたは嫌われていない。実はけっこう好かれている。
「そんなことない。私、ほんとうに嫌われてるもん。」
そんな声が聞こえてきそうですね。
実際のところ、言ってしまえば、嫌われてもいいんです。どうあがいても嫌われることはあります。
どうせ嫌わていると思うなら、あなたの思っていることを言ってください。わざわざトゲのある言葉を使わなくていいので、「私、そういうのはイヤ」と伝えてください。
どうしても直接言えないなら、誰にも見せない紙に、ガーッと書き出してください。とにかく表現することです。
他人から嫌われること
よりも
自分の本心にウソをつくこと
のほうが
ダメージが大きいんですよ。
自分の本心に気づくようになると、だんだん、ラクになってきます。
自分を肯定する気持ちがあれば、誰から嫌われていようとも「私は存在する価値があると思えるようになってきます。地盤のような自信が出てきます。すると、なぜか言葉も出てきます。
それに、たとえたくさんの言葉にならなくても、信頼関係は築けます。信頼関係は、言葉の数ではないですから。
≪親しくなりたい人以外≫
うまくコミュニケーションをとれる必要はありません。むしろコミュニケーションが苦手なことをアピールして「私、コミュニケーションが苦手なんで。ごめんなさい」と言って離れることもできます。コミュニケーションが成立しないから、いがみ合うこともありません。お互いに傷つくのは最小限で済みます。
コミュニケーションが苦手なことを、上手に利用しちゃいましょう。
≪親しくなりたい人≫
「そんなあなたもOKだよ」と思ってくれる人と親しくなれます。「コミュニケーションが苦手なんだけど…」と伝えたら、相手は「そうなんだ」と思って受け入れてくれるでしょう。
あなたが心をひらくことができる相手なら、長続きします。あくまで「あなたが、親しくなりたい人かどうか」が大切です。
自分の心を知れば、幸せが見えてくる。あるがままで本当の幸せになれる
「あなたの感情」に、もっと目を向けてください。
「あなたの本心」を、もっと見つめてください。
あなたが自分の心を理解できるようになれば、自信がつきます。なぜなら「嫌われてる」「私って存在価値ない」なんて複雑な考えになる前に、「あー、私いまイライラしてる」だけで終わるからです。
仏教では、人はみな「煩悩のかたまり」だと言われています。煩悩の代表は次の三つです。
(2)怒り(イライラ)
(3)愚痴(ねたみ、うらみ、憎しみ)
これがあなたの本心です。
今は自分の本心がわからなくて悩んでいても、仏教を聞くと、自分の心が見えてきます。仏教は心について詳しく教えられています。「15通の手紙」の中で、5通目に「【自分の心を知れば、幸せが見えてくる】あるがままで本当の幸せになれる」と書きました。
「15通の手紙」をきっかけに、自分の心を見つめてみてくださいね。
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