
日常で、仕事や人間関係で思わぬ壁にぶつかったりトラブルに巻き込まれたりし、どうしても挫折してしまうことがあると思います。
避けられない以上、大切なのは、そこからいかにすばやく、力強く立ち直れるかであり、それを決めるものがレジリエンス(折れない心、立ち直り力)といわれています。
レジリエンスのある人は挫折や悲嘆からも早く立ち上がることができます(しかも人間的にも成長します)。
反対にそれがなければ、立ち直りまで時間がかかり、ひどい場合には精神的な病をわずらいかねません。
ストレスが蔓延するいまの社会では、特に求められている力だと感じます。
ではどうすればレジリエンスを高めることができるのでしょうか?
ベストセラー書と仏教から、レジリエンスを高める方法について学びたいと思います。
立ち直りへの大きなヒントが得られるベストセラー『オプション B』
『OPTION B(オプションB)』(日本経済新聞出版社)という本があります。
この本は、フェイスブックのCOO シェリル・サンドバーグと、その友人の心理学教授 アダム・グラントによって書かれ、人生の喪失や困難への向き合い方、逆境の乗り越え方が紹介されています。全米でベストセラーとなるほど、大きな反響がありました。
きっかけとなったのが、シェリルさんが、最愛の夫を不慮の事故で失ってしまったことです。
ご主人を失った悲嘆と、残された二人の子供たちの将来への恐れで苦しむ中、友人であったグラント教授に助けを求めます。
グラント教授は確かなデータにもとづく悲嘆から回復する方法を彼女に伝え、シェリルさんはそこから着実に立ち直っていったのです。
同じように喪失を体験され悲しみに沈まれている方、逆境に襲われて人生の挫折に苦しまれている方には、特に共感と励ましがもたらされ、立ち直りへのヒントが得られると思います。
この本のタイトルである「オプションB」とは、オプションA(=最善策)に対する言葉です。
仕事の失敗や突然の病、愛する人の死によって、幸せになるための最善策が取れなくなってしまうことがあります。
その際の次善策が「オプションB」です。
たとえば、仕事での失敗をいつまでも後悔し、自分を責め続けるのではなく、失敗から教訓を学んで次の機会でそれを生かすこと、突然の病にかかったことをずっと嘆き続けるのではなく、「自分にとって本当に大切なこととは何かを真剣に考える機会が得られたのだ」という面に注目することなどが「オプションB」といえるでしょう。
そのオプションBをとことん使い倒し、すばやく立ち上がれるようにする力が「レジリエンス(立ち直り力)」です。
レジリエンスはあらかじめ決まっているものではなく、鍛えることができるとグラント教授は言われています。
では具体的にどうすれば鍛えられるのでしょうか?
その鍵となるのが、立ち直りを妨げる「3つのP」です。
「3つのP」とは何かを知り、その適切な対処法を学び、身につけることが、レジリエンスを高めることになります。
立ち直りを妨げる「3つのP」
立ち直りを妨げるものに3つあり、その頭文字をとって「3つのP」といわれています。
それは
- Personalization(=自責化)
- Pervasiveness(=普遍化)
- Permanence(=永続化)
の3つです。
何か悪い出来事が生じたときに、「このサイテーな出来事は全部自分のせいだ(=自責化)、何もかもがサイテーだ(=普遍化)、このサイテーがずっと続いていく(=永続化)」と思うことが3つのPであり、それらが立ち直りを妨げてしまいます。
逆にいえば、つらいできごとが「自分ひとりのせいではない(脱自責化)、すべてではない(脱普遍化)、ずっとではない(脱永続化)」と気づけば、立ち直りが早くなるのです。
『オプションB』には
と書かれています。
また、3つのPへの対処は大きな悲嘆や挫折はもちろんですが、日々の小さな挫折やストレスにも効果的です。
生命保険の外交員で、3つのPに対処できている人は、同僚の2倍以上の販売成績をあげ、在籍期間も2倍長かった、という調査結果も出ています。
「セールスを断られたのはすべて自分のせいだ。何もかもがうまくいっていない。この先もずっと断られるのが続いていく」と思えば、その思いがまたセールスでのパフォーマンスの低下を招き、悪循環に陥ってしまうのですね。
これでは仕事へのモチベーションも下がり、離職にもつながってしまいます。
反対に「断られたのはタイミングが悪かったせいだ。あの案件はうまくいっている。今日がダメでも明日があるさ」と気持ちを切り替えることで、意欲的に仕事を続けられるでしょう。
それではこの3つのPにどう対処していけばいいのでしょうか。
今回は「自責化」への対処についてご紹介します。
自責化から解放される方法
①禁止ワードを設定する
まず簡単にできる方法として、自分を責める言葉の使用を禁止することです。
自分を責めてしまう言葉とはどんなものがあるでしょうか?
たとえば、「ごめんなさい」「すみませんが」「残念ながら」が当たります。
本当に迷惑をかけてしまったことは謝罪すべきですが、何もかもに「ごめんなさい」や「すみません」と言っていては、自分が悪くないことさえ自分が悪いと思い込み、落ち込みや悲嘆につながってしまいます。
「ごめんなさい」や「すみません」ではなく、「ありがとう」「おかげで助かりました」、「残念ながら」ではなく、「努力した、がんばれた」という言葉に変換していきたいですね。
②自分への思いやりをもつ
過剰に自分を責めてしまう人は、「自分への思いやり」を持つことが勧められています。
自分への思いやりについて、心理学者のクリスティーン・ネフは
と言っています。
大切な友人が失敗をして落ち込んでいたら、たとえば、就職活動でうまくいかず、3社連続で面接に落ちてしまった友人がいたら、どう声をかけるでしょうか?
「なんて情けないやつだ!」と相手を責めたり、「ほんと、あなたってダメな人ね」と蔑んだりすることはないでしょう。
「君自身が悪いわけじゃない。今回はたまたま、評価されなかっただけだ。君の良さを認めてくれる会社が必ずあるよ」と言って、励ますのではないでしょうか?
このように大切な友人にかけるような言葉を、あなた自身にもかけてほしい、ということですね。
『オプションB』には、
とも書かれています。
人間であれば、どんなに気をつけていても失敗することはありますし、重大な過ちを犯してしまうこともあるでしょう。
しかしそのことで「自分は最低な人間だ」と自己否定すれば、立ち直ることができなくなってしまいます。
「落ち度のあるのは当たり前」という自己認識が心の負担を軽くしてくれるのです。
自己を冷静に省みる―諦観(たいかん)
あるカウンセラーの方から聞いたお話です。
「仕事でうまくいかず、失敗すると、自分が全部悪かったんだと自己嫌悪に陥り、落ち込んでしまいます」
こんな悩みを抱える、真面目で責任感の強い女性がいらっしゃいました。
何かトラブルがあると彼女は、自分のミスだけでなく、上司の指示間違いや取引先の勘違い、後輩や仕事仲間の失敗もすべて、“私の責任、全部自分が悪い”と自分を責めていたそうです。
そこで彼女に、事実を整理して反省のポイントをまとめてみるよう促すと、「キチンと取引先の要望をスタッフに伝えていなかったり、うまく進んでいない状況を上司に伝えていなかったり、説明が言葉足らずだったり。そこが私の反省点です」と、冷静に答えられたといいます。
「悪いところだけ反省すればいい」と気づくと、いつも必要以上に自分を責めていたのだと分かって、明るい自己を取り戻せたといいます。
「自分はダメ」「サイテーだ」などの自分を全面否定する発言はマイナスにはなっても、決してプラスにはなりません。
「失敗は誰にでもあること」と受け止めたうえで、失敗の原因を過剰に見ることなく正しく見て、着実に前進していけばいいのですね。
仏教に「諦観」という言葉があります。
これは「あきらかにみる」ということで、「あきらめる」の語源ともいわれています。
「あきらめる」と聞くと、うやむやにしてしまう、いい加減な状態で放置する、というようなネガティブなイメージがありますが、語源となった「諦観」の意味はその真逆です。
悪かった結果の原因を、うやむやにすることなく、正しくみる、ことです。
自分がすべて悪いと思い込むのでもなく、私は悪くないと責任転嫁するのでもなく、悪かったところを誤りなく見て、改善していくのが「あらきかにみる」姿勢ですね。
自己への思いやりを持つ方法
ただ、ネガティブな結果がなかなか頭から離れず、たびたび落ち込んでしまうこともあると思います。
そんなときに試していただきたいのが「ジャーナリング」です。
ジャーナリングとは、自分に宛てて文章を書くことをいわれます。
『オプションB』で、“書くことは、自己への思いやりを身につける強力なツール”であると紹介されており、シェリルさんもジャーナリングによって自責化から解放されたといわれています。
ジャーナリングについて、まず参加者に失敗や屈辱的な出来事を思い出してもらい、次に、同じ失敗をした友人をなぐさめるつもりで、自分宛てに手紙を書いてもらうという実験がされました。
その結果、ジャーナリングを行った参加者は、たんに自分の長所について書いた対照群に比べて、幸福感が40%高く、怒りの度合いが24%低下したそうです。
実際に言葉として書き出すことで、冷静に物事の因果関係を見ることができること、ネガティブな出来事の中にもプラスの面を見出だせること(この失敗があったことでもっと大きな失敗を避けることができた、ちょっとしたことでは動じなくなった、精神的に強く慣れたなど)、自分の外に記録することで内側の重荷を降ろせたことなどが、この好結果につながりました。
「諦観」の具体的な方法としても、このような物事の流れを書く行為をぜひ取り入れていただければと思います。
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