今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率
国立研究開発法人 防災科学技術研究所

今回はこんなお悩みについてです。
東日本大震災から、まもなく15年が経ちます。
今の中学生にとっては、東日本大震災は生まれる前のできごとです。
そう思われるかもしれませんが、日本に住むかぎり、巨大地震は必ずやってきます。
私は東日本大震災のとき、仙台市内に住んでいました。
ニュースだけではわからない体験をしたものです。
5年前も記事を書こうかと思いましたが、まだ気持ちに整理がつかず、書けなかったことを覚えています。
15年経った今、ようやく当時の記憶を「過去のこと」として言葉にできるようになったので、書いてみようと思います。
実体験からわかった「備えに本当に必要なもの」を感じ取ってもらえたらと思います。

まずは「地震と無関係な人はいない!」という事実の確認から。
地震大国・日本。
地震と無縁の人は少ないでしょう。
たとえ自分が被災しなくとも、ニュースを見て心を痛めた経験があると思います。
思っている以上に頻繁に、大きな地震が発生していると思いませんか?
震度6弱とは、10階級のうち3番目に大きな震度です。
日本ではいつどこで起きてもおかしくないと言われます。
地震調査委員会は、「今後30年以内に、震度6弱以上の地震が起こる確率」を示した予測地図を公表しています。
火事と比較すると分かりやすいと思いますが、
にも関わらず、火災保険・共済の加入割合は82%です。
「今後30年以内に震度6弱以上の揺れに襲われる確率」は、
地震調査委員会の平田直委員長は「震度6弱以上の揺れに襲われる確率が0%の地域は1つもない」と言及しています。
地震は、火事よりもずっと高い確率なのに、「ぼんやりとなんとなく」の備えになっていませんか?

記憶は書き換えられてしまっていることもありますが、私の脳裏に焼き付いている情景を思い出してみたいと思います。
私は大学卒業を控えた春休み中。塾講師のアルバイトに行く準備をしていました。
家で友達と電話している最中に地震がきて、
二度とつながらなくなるとは思わず、電話を切りました。
棚の上のものが部屋の端まで吹っ飛び、家具は倒れ、足の踏み場もありません。
それでもアルバイトに行かねばと思い、外に出ましたが、
自転車で10分ほどの塾に、たどり着くことはできませんでした。
電柱は倒れ、余震でぐらぐらしています。
ガラスの壁のおしゃれな建物はことごとく割れて、道にはガラスの破片だらけ。
とても自転車で通れそうもありません。
教室長からの電話がつながり、「しばらく再開はできないから」と、その電話をもって、当時アルバイトしていた人たちはみな契約終了となりました。
晴れていたのに、地震の直後、大気にも変化があったのでしょうか。
また急に雪が降り始めました。
電気がないので、エレベーターは動きません。
階段も崩壊し、危険な状態でした。
避難所に指定されている近くの小学校は、定員を超え、とても入りきれません。
在宅避難できる人は、家で、ということになりました。
私の住んでいたマンションは、管理人が常駐していたので、しばらくは全住民が1階ロビーで避難生活を送ることになりました。
電気もガスもなく、もちろん水道も止まっています。
お風呂は入れなくても、周囲もみな同じ条件なので、だんだんと慣れていきます。
しかしトイレだけは、我慢し続けられるものではありません。
簡易トイレも数が限られているので、管理人室のトイレにゴミ袋を設置し、用を足します。
夜中でも、老人はトイレに行きたくなります。
それが毎晩の日課になりました。

日が経つごとに、食べるものもなく、コンビニは割れたところから人が入り、商品はすっからかんでした。
百貨店には行列ができ、2時間かけて「1人1個まで!」の食料や飲料を手に入れました。
寒くて、プライベートもない状態なので、車の中で過ごしたい人たちが、ガソリンを求めて長蛇の列ができます。
「割り込んだ」とか、「何日前から待っている」とか、言い争いが起きていました。

数日して、最初に電気が復旧しました。
市の中心地から順に復旧したので、私のところは早いほうでした。
余震が少し収まり、低層階の住人は、各自の部屋で在宅避難となりました。
プライバシーは守られる状態となり、少しホッとしましたが、相変わらずトイレも使えません。
当然、手を洗うこともできず、ウエットティッシュでしのぐ毎日でした。
当時は、トイレを1回流すのに10リットル以上必要で、しかも水に勢いがないと流れていかないことも初めて知りました。
入浴でバスタブに湯を張るには、1回100リットルほど使用します。
きれいな水を、1日に何百リットルも使っていることに唖然としました。
今もアフリカで生活のために水汲みしている人たちを想像すると、日本は恵まれすぎて、もったいない生活を送っていると思ったものです。
高速道路は、支援物資の輸送車のみ通行のため、どこにも行くことができません。
ただし、避難のために、他県に行く高速バスはいくつか残されていました。
インターネット回線も電話もつながらないため、窓口に人が殺到していました。
原発事故の被害も未知数だったため、多くの人は、できるだけ離れようとしていました。
被災から数週間が経ち、
わずかな貴重品だけを持って、他県に避難することとなりました。
避難先で、数週間ぶりに入ったお風呂。わんわん泣きました。
ずっと緊張して、気を張っていたことに、ようやく気がついたのです。
当たり前の日常が、どれだけ有り難くて、幸せなことなのか、身に染みて感じました。
余震が続いて、まさに “ 足元が揺らぐ ” 毎日だったので、地震のない地域にいるのにしばらくはずっと揺れている感覚がありました。
揺れているほうに脳が順応してしまっていたようです。
大地が揺れない。そんな当たり前のことにも、安心感と幸せを覚えました。

スマホの充電が切れると、安否確認ができなくなります。
インターネット回線もつながらなくなってしまいますが、まれにつながることもあります。
いつでも充電を保てるように、1~2回は満充電にできるモバイルバッテリーがあると安心です。
私のときは、手回し充電器を持っている人がいて、みんなで一生懸命、順番に手で回しました。
ですが、途方もなく時間がかかります。1時間回しても数パーセントの充電でした。
日頃からモバイルバッテリーを満充電にしておくことをオススメします。
少し手を洗ったり、体を拭いたりするにはさらに必要。
給水車、そんなにすぐは来ません。
自分の飲み水くらいは用意しておきましょう。
カセットコンロは1台所持していれば、湯を沸かすこともできます。
寒い時期は、温かいものが貴重です。
ただし、ガス漏れの点検が終わるまでは、火は使えません。
できればIHコンロもあればなお良いです。
非常時は、ただでさえ緊張感が抜けません。
少しでも心がホッとするものを増やしたいものです。
昔は、非常食といえば乾パンでしたが、私が被災したときは不人気でした。
水がないのに、口の中の水分が取られて、よけいにのどが渇きます。
数日食べると飽きてしまいます。
非常食レトルトもおいしいものが増えてきました。
普段から食べたいと思えるものをローリングストックするといいでしょう。

電気もガスも水もない状態で、暑さ・寒さに耐えられる備えが必要です。
保冷剤をできるだけ多く冷凍庫に入れておきましょう。停電してもしばらく保冷されます。
普段から、冷凍庫の開閉で温度が上がって、食材が傷むことを予防できます。
首元にあてて体を冷やしたり、ケガをしたときにアイシングしたりすることもできます。
ホッカイロや、アルミの毛布は用意しておくといいと思います。
暖房の使えない夜は、本当に寒くてこごえます。

思っている以上に量が必要です。
掛ける人数分ですよ!
手を洗えないのでウエットティッシュもストックしておきましょう。

「当たり前」があることに、心の底から「幸せ」を感じたのは事実です。
そう決意したのに、良くも悪くも、また「当たり前」に慣れていきました。
どんな幸せにも、人は慣れてしまうものなのだと、痛感しています。
「限界効用逓減の法則」をご存じでしょうか。
経済学の言葉で、
1個追加するたびに、喜びは減っていく。
1時間経つたびに、当たり前になっていく。
ビールのひと口目「くうぅ~、うまい!」の満足感が10とすると、
1杯飲み干すころには満足感5
2杯目は満足感2
5杯目は満足感1
苦しくてお腹がはち切れそうなのに、まだまだ飲め!と言われたら、苦痛になります。
ひと口目の満足感は、ホンモノでした。
でも、その満足感のまま続くことはありません。
もっともっと……、となれば、苦しみに変質してしまいます。
だから「震災を思い出して、感謝しましょう」と言われたって、一時的で続かないものなのです。

幸せは続かない。
仏教では「諸行無常」と言われます。
すべてのことは、常が無い(続かない)。
無常を見つめることを、「無常観」といいます。
ごまかすのでも、否定するのでもなく、ありのままを見つめること。
菩提心(本当の幸せ)の第一歩は、無常観だと教えられています。
私は震災をきっかけに、本当の幸せとは何かを考えるきっかけになりました。
どちらも、人間の心の姿です。
そして「無常」にはもう一つの意味があります。
震災で亡くなった方もたくさんいます。
若くても、健康でも、一瞬にして無常がやってきました。
その無常を見つめることが、きっとあなたにとっても、本当の幸せの第一歩になると思います。
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