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「天災は忘れた頃にやって来る」と言われます。
災害はその恐ろしさを忘れたときに再び起きるという警句です。
戦前の随筆家で関東大震災(1923年)を機に災害研究を本格化させた物理学者・寺田寅彦の言葉とされています。
先日の九州を襲った線状降水帯による大雨では「経験したことのないような大雨。最大級の警戒が必要」(気象庁)と呼びかけられました。各地で記録的豪雨が続いています。
被災地では懸命な救助活動が続いています。今回は、過去の災害現場と違い、コロナによる”支援控え”も起きています。
これまでの被災地には、高齢者の体操や子どものケア、物資輸送や炊き出しといった復興に向けての環境整備をサポートする医療チーム以外の様々な団体が現地入りしていました。
しかし、今回の豪雨災害では、「知らないうちに感染させてしまうのでは」という不安から、そういった団体が非常に少なく、関係者はこの先への影響を非常に懸念しているといいます。
実際、被災地入りした他県の職員が新型コロナウイルスに感染していたことが分かり、コロナ禍中の被災地支援の難しさを物語っています。
私たちの幸せを脅かす、悲惨な事件や災害が後を絶ちません。この世の中、「ありえない」ことなどない、と誰もが感じ始めています。
昨日までの幸せが、根本から覆される災害の恐ろしさを、私たちは何度、目の当たりにしてきたことでしょう。
自分や家族も、いつ当事者になるか、分かりません。どうすれば安心して生きられるのでしょうか。
世間では、さまざまな防災対策が検討されています。災害に対して何の備えもしていなければ、不安だからでしょう。「備え有れば患(うれい)無し」と、ことわざにもいいます。
この言葉は、中国の唐の時代、太宗皇帝の言葉と言われます。
中国の長い歴史の中でも後に貞観の治として讃えられる太宗の言行を記した『貞観政要』に、
と記されているのです。
これは、「安きにありて危うきを思う。思えば則ち備えあり、備えあればうれいなし」と読みます。
優れたリーダーは、皆が「まだ大丈夫」と油断している時に、未来の危機を見据えよ。
未来の危機に思いを馳せれば、必ず心配し、問題にし、対策を立てるものだ。
未来を明るく憂いのない状態にしなさいよ、と戒めているのです。
予測できない未来の憂いをなくすために、大切なのは、「危機管理」といわれます。
被害を少しでも減らそうと、各自治体で防災体制の整備が進められています。
しかし最後は一人一人が基本的な備えを積み重ねるしかない、と専門家は言います。
津波や洪水、がけ崩れの場合は、すぐに避難することが大切です。
徳島県のある港町では、防災団体が、「お年寄りの逃げ足を、筋トレで鍛えよう」というトレーニングを始めました。
確かに、足がもつれて逃げ後れては、せっかくの避難勧告も元も子もありません。
この取り組みを全国に広めたい、とのコメントが新聞に掲載されていました。
危機管理とはつまり、最悪の事態に備えることです。
では、人生の「最悪」とは、本当の備えとは何でしょう。
もしかりに、万全の対策が立てられ、被災する危険性がゼロになったとして、それで私たちは安心できるでしょうか。
懸命に対策をしているのは、その根底に「死」があるからでしょう。
「死」という核心に触れることはあまりにも恐ろしすぎるので、それに衣を着せ、和らげたものに対面しようとしているにすぎません。
しかし、宇宙のどんな果てに行っても、死からは逃れられない。
どれだけ科学や医学が進歩しても、死ななくなることはできないのです。
それは今日の次には明日が来るし、春の次には夏が来るように、万人がやがて必ず直面しなければならない問題です。
フランスの作家、ヴィクトール・ユゴーは『死刑囚最後の日』の中で、
と言っていますが、たとえ「災害」から逃れられても、私たちはこの「死」の不安からは逃れられないのではないでしょうか。
逃れられないこの「死」の不安を、根本から解決しない限り、本当の安心を得ることはできないのです。
では、どうすればこの人生最大の問題を解決して、本当の安心が得られるでしょうか。
その問いの答えがハッキリ分かるのが、仏教です。
もちろん、本当の安心が得られると言っても、不幸や災難に遭わなくなるわけではありませんが、どんな不幸や災難に遭っても壊れない幸せになれると、教えられているのです。
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